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第156話

下着を、おろして…捲る? ぽやんとふやけた頭では、それらの意味を理解するのに時間がかかる。 いっぺんに沢山の事を言わないでくれ。ただでさえ今にも破裂しそうな脳を、これ以上こき使うのはやめて欲しい。 何度も目蓋を閉じでは開けて、勃ち上がるソコを押さえて佐々木に助けを求めるも、当の本人は先走りを抉り取った指を舐めては退屈そうに見下ろすだけ。 時の流れを明確に伝える針の音が5回、6回と繰り返されたくらいか。ようやく佐々木の意図にも察しがついてきた。 …そんな破廉恥な行為がはたして需要があるのかというのが一番初めの感想だったが、それは一旦置いて 目を閉じ、深く息を吐く。 俺にも曲げられない意地がある。 不幸にも、俺は“責任”の重さを知ってしまっている社会人だ。自ら始めた事に関して、やっぱりナシでなどと平謝りで済ませられるわけも無い。 一度進んでしまった道なのだ。間違っていようが、許されないものだろうが、途中で引き返していては、社会人どころか男も名乗れない。 意を決し、服の中に手を忍ばせた。 ゴムの緩い下着は、両方の親指の先を簡単に咥えた。だがスムーズなのはそこまでで、次のステップに進むには先ず、強い羞恥を倒さなくてはいけなくて。 少し下にズラすだけで声が漏れそうになったのは、舌で喉を締め、息を止めることで何とか耐えた。布地の摩擦が快感を運び、物理的な引っ掛かりである昂りをじっくりと刺激する。 「ぁ、んうぅ…っ。」 捉え方によっては、日々の仕事で凝り固まった身体を動かす事による唸り声であっても違和感はない。ほんの少し音の付いた吐息だけが僅かに溢れ、腰を浮かせて下着を膝まで下げる。 この場で思い出す事といえば、俺がパンツを履き損ねてバレたあの忌々しい記憶だが、今日はああはならない。しっかりと下着は身につけている。 ただ、運悪く薄いグレーを基調としたデザインのそれには、前の中心…それも動きに合わせて縦線を走らせたような模様がしっかりと付けられており、視界に入った途端恥ずかしくて燃やしたくなった。 「濡れてる。」 「…ぃいうな……って、」 膝下まで到達したそれを引き継いだのは佐々木で、順に足を抜いていく作業は悔しいほどに美しかった。 髪を下ろした彼が俯けば、後ろから流れるそれが頬を擽り、浮き出た鎖骨を隠して。 どちらも大きく差はないものの、片足を必要以上に丁寧に持ち上げる仕草に…また、泣きそうになる。 獣の瞳が人の色へと、ほんの一瞬だけ戻る。 痛まないだろうかと心配する、いつも癒しをくれた男子高校生の眼。 勘違い…する。大切にされているって、愛されているのかもしれないって。 不出来な俺の脳みそは、全部分かっていても、それでもと彼に縋り付いてしまうだろう。 俺ばっかり見ないでくれ。 ──いや…嘘だ。 今は俺だけを、焼き付けて。 スウェットの裾を握る拳は、佐々木の視線を繋ぎ止めたいその一心で 臍の上までを空気に晒した。

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