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第155話

戻るどころか止まってもくれない時間は、俺が過ちを重ねる間もゆっくりと前へ進み続ける。 微かな湿り気を残す陰毛を絡め取り、皮膚を撫で、梳かす指の感触がリアルで。 夢の続きを見たいと願う身体は、情けなくも反応を見せる部位を佐々木の腹部へ押しつけた。 力が入っているのか、単に鍛えているのか定かではないが、引き締まったそこに先端を捏ねられ、透明な蜜が滲む。 「ねえ、っそんな近いと…やりにくいってば…!」 「、やく…早くさわ、て…。」 佐々木の顔を見るだけの勇気はない。唇を寄せ、先ほどより温度を上げた赤い耳に乞うだけ。 触れてもおかしくない距離。もはや上唇など口を開けば耳たぶに接触していた。 でも、だからこそ。 早く佐々木の体温を感じたい。直接、肌で。 どんな風に触れてくれる?どうやって触る? 爪を立てる?潰してしまうか?それとも……愛を、錯覚させてくれるか? 俺が嫌なら突き飛ばせば良い。自らの恋心を否定する他人に迫られて、そんなのお前にとって害でしかない筈で。 だが、全身に細かな振動を伝えながらも、耐えているのは他でもないお前なんだ。 ならば躊躇はしない。遠慮もしない。 「あーくそっ。」 「ン、ひぅ……ッ!」 身体中の熱を集めて佐々木を待ち侘びていた部位にやっと触れてくれた指の先は、怒りを孕んだ彼の声とは裏腹に、この間より、昨日より、ずっとずっと…優しくて。 幹に走る脈を辿るような探り探りの動きに堪らず声を上げても、その手が離れていく事はなかった。 それどころか自身に触れる面積を徐々に広げる掌は、遂に全体を包み込んで──。 「この体勢、やっぱ難しいよ。 …もっとちゃんと触って欲しいなら、俺から降りて。」 「でも…っ。」 離れてしまったら、佐々木が逃げてしまうんじゃないかって。 温かな声色に優しい手つき。そんな状況ですら、俺をいち早く退かせる為の策なのかと疑う自分がいる。 「竹内さんの感じてる顔、俺に見せて。」 「…ぁ、あッ。」 「いい?言う事聞いて。そしたら気持ちよくしてあげる。 …先ず俺から降りて、ここに横になって。」 下着の中から手を抜く間際、佐々木は上を向く先端の割れ目を親指の腹で抉った。 本当はもっと…痛いくらいに捏ねて欲しいのに、望んだようには動いてくれない。次を求めてとぷりと溢れた先走りには目も暮れず、目の前の男は右手で空いた隣を叩く。 これが現実。 布地を押し上げ、シミを作るそこは既に勃ち過ぎて痛むのに、佐々木の命令に抗う事が出来ない。 膝の上から脚を退ければ、予想通り佐々木はそこから立ち上がる。ほらな、思った通りだ。反射的に伸ばしてしまったこの手も、空を切るに決まっている。 どうせ欲情したおっさんに痺れを切らして逃げ帰るのがオチ──。 「どしたの…あ、立つ時足痛かった?」 「え、ぁいや…違う……。」 手首ごと掴まれ、引き寄せられて。 思ったより近い佐々木の顔に思わず目を逸らした。想定外の彼の動きは、想定内の優しさから来るものだ。わかってる。…わかってる、けど。 逃げるんじゃ、無いのか。 よかった…よかった。 指示された通り、仰向けで倒れる身体。 見上げれば交わる、錯覚に陥らせる視線。 「じゃあ次。 …自分で下着脱いで、服捲って見せて。」 あぁ、その目だ。恐ろしく燃え盛る、真っ赤な。 俺じゃとても敵わない。 鎖を噛み切った狂犬が、餌を見つけたギラつく瞳。

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