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第158話

別人の身体に魂だけが入り込んでしまった。 そうでもなけりゃ、とても説明なんかつけられない。 特別遅い訳でも我慢強い訳でもないが、これは…いくらなんでも自分を疑う。 汚れた掌と佐々木の顔とを行ったり来たりする眼球は、例えブルーライトにやられて霞んでボヤけていたとしても状況を把握してしまった。 自ら外にぶちまけた液体は徐々に乾き始め、固まる皮膚は突っ張って不快だ。そしてこの脱力感。 嘘だ…嘘。これは、悪い夢だ。 そう思いたくても、未だ彼の手の中にある右足首は鈍く痛んで。 「…まさか虐められたくて、わざとだったとか?」 耳から脳、髄…隅々まで響く掠れた声に、力一杯頭を振った。何の説得力もない事は承知の上で。 涙で滲んだ視界の端で、佐々木のサルエルパンツの中心が盛り上がっている様を捉えた。 こいつ…マジか。 興奮しているのか?俺で…? その時の悦びは計り知れない。忘れたくても一生記憶に残り続けるだろう。 はしたなく脚を広げ、隠せもしない部位は反り返り、恥ずかしい所を見せつけて。 直接触れられてもいないまま達しただらしのない男の姿に、勃起するなんて。 「俺のいう事聞けたら痛い事する。…って、こっちの方が有効だったりするかな?」 佐々木の顔に影がかかる。俺を照らしていた白い光は彼の身体によって阻まれ、脇の下のウレタンが沈む。 真上に差し掛かった2つの瞳のどちらを見ても、その両方が俺だけを映す。 中途半端に精液を吐き出した性器は再び芯を通し、それまでもたれ掛かっていた腿から自立し始めた。 佐々木は俺と視線を合わせたまま。視界にも入っていないだろうに、俺の反応を知り尽くしているかのように、うすら笑みを浮かべる。 俺の求めている事を、俺より知ってくれているのはいつだってお前で。 だから、俺は──。 「い、おり…伊織ッ!これでいいだろ?!名前を呼べばいいんだろ?!」 「もうおせぇよばーか。」 「ひぁあッ…!」 突如襲い来る痛みに全身が痺れ、床に落ちていた脚は膝をグンと高く上げる。 無駄なく締まった腰にぐるりと回った両脚は、互いに絡まり佐々木の逃げ場を封じた。 予想以上に硬さを増した佐々木の昂りが、遠慮無く自身を押し潰す。半勃ち状態の俺よりも、彼のソレが勝るのは当然だった。 そして勿論、出したばかりの俺のは過剰な反応を示すのだ。 「ほら。やっぱり痛いの好き。」 「好きじゃ、な…。」 「嘘だよ。」 知られている。 全部、わかってる。気付いているんだ、こいつは。 佐々木に従えば痛みをくれる。そんな馬鹿げたルールの改定と共に名を呼べてしまった理由に。 伸びてきた手が探るのは、自慰の際にも触れるなんて選択肢の無い場所。 「向こうじゃあんまり感じてなかったみたいだけどさ…今日はどうだろうね。」 「な、何…して、ン!!」 服の上から腹を撫で上げ、辿り着いた胸元の一点。明らかな興奮を表す鼓動は、既に佐々木にも伝わっているだろう。 貧相なそこに爪の先を引っ掛けると、佐々木はそれを弾くでもなく、擽るでも無く。 「痛くしてあげる。優しくシてても感じないもんね。」 「ふ、くあッ…ぁあああっだ、ぁヒ…。」 ──力一杯抓り上げた。 取れるんじゃ無いかって心配になるくらい。 でも実際は、何も考えられずに叫んでしまうくらい。 「いおり…い、ぃた、い……いおり、いおぃ……。」 気付いた時にはもう 空っぽの頭で、何度も何度も彼の名を呼んでいた。

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