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第159話
今にも千切れそうな痛みを確かに感じているのに胸の先は尖っていくし、無理に押さえつけられた性器は佐々木のそれを押し返した。
知らなかった。こんな…痛みと快感が同時に襲ってくるような不思議な感覚。
そろそろ怪我をしそうだとか、身体が壊れてしまうんじゃないかとか、そういった不安がない訳じゃない。本当はすごく怖い。
だが、それらを大きく上回る感情がある。
佐々木が俺を見ている。
俺に触れ、勃たせているという紛れもない事実に対する優越感。
もっともっと、佐々木を感じたい。
布越しなんかじゃ無く、直で、肌と肌を重ねて。
痺れて痛む胸元に置かれていた佐々木の手を取り、口付けた。
汗ばむ掌はツンと鼻を刺す湿布味。
驚く佐々木を他所に、唯一身につけていた服すらをも脱ぎ捨てる。服装に少しの乱れもなくそこに居る客人と、既に一糸纏わぬ姿となった家主。はたから見れば何とも奇妙な光景だ。
だが、それでもよかった。
「もっと…さわ、て?いおり……。」
お前を、俺の全部で知りたい。教えて欲しい。
「ほんっと…アンタさあ。」
自らの掌にキスを落とす佐々木は、欲情した獣の瞳を目蓋で隠す。俺の唇の面影を辿るようなその動きは、酷く切なく儚げで。
そういう所が、俺を更なる底なし沼に引き摺り込んでいくんだよ。
他の奴にも、するのか。今までもしてきたのか。
誰に対しても…俺以外にも、好きな相手…にも。
再び開いた瞳にも、俺しか映っていないんだ。
他の事なんて考える隙も無いくらい俺だけを見て、俺もお前だけを見てる。
…なぁ佐々木。今だけは、勘違いさせてくれないか?お前に愛されているって。
行為が終われば切り替える。心から応援をしてみせる。努力するから…。
「満足するまで痛くしてやるよ。」
「ふっ、ぅああああ…!」
服越しですら声を抑えられなかったのに、とうとう爪だけでなく歯を立てられた。周りの平らなところまで全部纏めて噛まれれば、一際大きな叫び声が部屋中に響く。
こんな風に声を上げても誰にも聞こえないという点だけを見ると、田舎に大きな一軒家を建てた親に感謝をしても良いかもしれない、なんて。
おざなりにされていた下腹部に、今までとは違う感触を覚えたのはその直後だ。布越しに当てられていた筈のそれが……直接、押し付けられている。
角度も、熱も、大きさも、その全部を俺に伝えてくれるみたいに脈打って。
「い、お……なんっ、ぇ…?」
胸への刺激を続けたまま、片手だけでずり下ろしたらしいパンツがはらりと床に落ちた。
噛んで、舐めて、抓って、佐々木は何も喋らない。ただ喧嘩するようにすれ違いを繰り返す2つの男性器を一纏めに握ると、そこでようやく顔を上げる。
「ねえ、一緒にイこうよ。沢山噛んであげるからさ。…アンタなら余裕っしょ?暁人さん。」
「っ、あ…うう、ぅあっ、は……ッ?!」
自覚してしまった俺の性癖。教えてくれたのは、俺ではない誰かを想うこの男。
痛みと快感。求めていた掌の温度と摩擦。
限界なんて直ぐそこだ。お前も同じなんだって、切羽詰まった激しい動きで簡単に予想がつく。
「ぃ…く、!」
「んんっ…はあっ、ぁあぁ、ぁ……。」
報われない恋に溺れ鳴くなんて、少し前の俺は考えたことも無かった。
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