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藤崎海斗ことカイトは19歳。 ニューヨークにあるコロンビア大学附属の語学学校American Language Program(ALP)に編入が決まり今日は登校初日だ。 コロンビア大といえば、オバマ大統領をも輩出した一流名門大学。 アメリカンエリートの象徴とも言われる名門大学である。 ハーバード大学、イェール大学などアメリカ北東部に位置する名門私立大学8校の総称であるアイビーリーグにも名を連ねる。 ただ、カイトがコロンビア大学のALPに入学出来たのは学力でもTOEFLのスコアでもない。 コロンビア大学の中に極秘に作られた、ある特殊な学部があるからだ。 教養学部のセクター2と呼ばれ、南校舎の奥にある2号棟にはネオヒューマンズ専用クラスがあるのだ。 カイトは来年、コロンビア大へ入学するべくALPで語学学習が決まった。 「英検2級レベルの俺が付いていけるとは思えねぇ」 クラスメイトには海外から編入したネオヒューマンズが6人居ると聞いている。 少し緊張しながらドアをガラりと開けた。 教室の中に居た生徒が一斉にドアへ振り向いた。 「Hi、、、」 パッと見た感じアジア系が2人、メキシコ系1人、ヨーロッパ系2人だ。 「日本人?」 アジア系の若い男の1人がすぐに近づいて来た。 「うん」 「ほんまかー!日本人のネオヒューマンズに会うの初めてや! 俺は市ヶ谷遥! 女ぽい名前が嫌いやねん。イチって呼んでやー。名前は?」 「カイト」 「カイトか、よろしゅーな」 「よろしく。関西人?」 「ちゃうちゃう!小学生の時に3年ぐらい関西に住んだだけのエセ関西人や。その後は九州と東京が長いで。エセ関西弁抜けへんのや」 イチは黒髪短髪に少し細く垂れた目が芝犬を連想させる。 日本人の同世代は正直、心強い。明るそうな奴みたいだし。 それに、イチも何かしらの特殊な能力を持つネオヒューマンズだ。 カイトは自分の能力にまだ戸惑っていた。 同じ境遇の知り合いと言えば、つい先日お付き合いするようになったトム•コーヴィンぐらい。 大富豪でセレブ、その上相手の心が読めるテレパシー能力を持つネオヒューマンズだ。 「俺は去年からココにおるから、なんか分からん事あったら聞いてや。 クラスは全部で5人おるから紹介したるわ」 格段にカイトよりもレベルの高い英語力でクラスメイトを紹介してくれた。 アジア系のもう1人は韓国人のパク。    ヨーロッパ系はフランス人のルネ、ポーランド人のマルチン。 メキシコ系は紅一点のマリアと言う女性らしい。 マリアはサングラスのようなカラーメガネをかけていて、目さえ合わせずに面倒くさそうな態度を隠しもしなかった。 カイトはクラスメイトに短い挨拶だけ交わすと、イチの隣の席に着いた。 「イチはどんな能力があるの?」 「ソレ聞いちゃう?先にカイトの能力教えろよ」 「俺は身体ん中に電気が走ってる」 「うわーソレもう将来チームブラック入り確実じゃん!羨ましい」 「チームブラック?」 「そっか、カイトはまだ覚醒したばっかりで知らへんのか。チームブラックはWIAの花形やで! 主にネオヒューマンズで組織された戦闘チームで全世界に16チームある。  チームブラックは各チーム4-5人のネオヒューマンズや能力者で構成されてて俺たちの憧れや」 アメリカのチームブラックは東海岸にニューヨーク支部、西海岸にロサンゼルス支部を活動拠点とした2チームがある。 「大学を卒業したら入局する時に適性検査で強い能力者はチームブラック入りが出来るんや」 「弱い能力者は?」 「内勤か、外部施設で働くかやな」 「マジか、俺外部施設がいいな」 「俺は絶対にチームブラックに入りたい」 イチは鼻息も荒く力強く言った。 「危険な仕事なんだろ?俺は嫌だね。何でイチはチームブラックに入りたいの?」 「スーパーヒーローになりたいんだよ。エージェント•ワイルドみたいな」 イチはキラキラと目を輝かせている。 エージェント•ワイルド、、、確か船でチラッと会った金髪のエージェントだ。 「そんなに強いの?エージェント•ワイルドって人」 「俺たちの伝説のヒーローだよ!エージェント•ワイルドは!」 イチが立ち上がって熱弁を振おうとした時、教室のドアが開いた。 「はい、そこまで!授業を始めるよ」 20代前半ぐらいの若い男性が2人入って来た。 「ブレイン先生とエージェント•アンダーソン」 イチが耳打ちしてくれた。 ブレイン先生と呼ばれた男はフィリピン、スペインなどの血を引いたエキゾチックな顔立ちの男性だ。濃い眉に堀の深い顔立ち、爽やかな笑顔。 一緒に入ってきたエージェント•アンダーソンは陶器の様な白い艶のある肌に紅い唇、金髪をオールバックに流した細身の男だ。 タイトな黒いスーツの襟にはフリルと華麗な刺繍が施されている。 「2人にはすぐに慣れるよ」 イチは意味深に微笑んだ。

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