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2時限目
「ちょっとマジでやばい」
授業が終わったカイトの第一声だった。
「すぐに慣れるって」
「アレなんなの?」
「ブレイン先生もネオヒューマンズや。話した言葉で強制的に相手を縛る能力らしい。だからブレイン先生には誰も逆らえない。逆らえるのはエージェント•アンダーソンぐらい」
「前を向けって言われたら本当に動けないし、話を聞けって言われたら強制的に頭に入って来て、、、吐きそうだった」
「あははは、最初は皆んなそうやって!でも英語はどんどん頭に入って来るからすぐ話せるよーになるで」
「エージェント•アンダーソンもネオヒューマンズ?何かの能力者?彼はブレイン先生に逆らえるんだろ?」
「あー、、、あの人はブレイン先生の夫やから」
「夫?結婚してんの?」
「そーそー、まあこっちじゃ日本に居る時よりゲイカップルはよくおるで。
エージェント•アンダーソンはブレイン先生の夫でファミリーケア担当の護衛エージェント。だから四六時中2人は一緒だし、唯一ブレイン先生の言葉に逆らえるんやて」
「そうなんだ」
エージェント•アンダーソンの細身の身体で護衛とは意外だ。
「それより、今からクラスの仲間でカイトの歓迎パーティーという名の飲み会や!行こう!皆んな近くにあるshackってダイナーに集まってる」
「良いけど、俺、酒飲めねーよ」
「大丈夫、大丈夫。カイトもキングスタウンの寮に入ったんだろ?帰りはちゃんと連れ帰ったる」
カイトは父親と住むニューヨークのニューロシェルからは大学までザッと車で3時間の距離だ。その為ワシントン大学近くのキングスタウンにある寮に昨日から入寮した。
トムからは寂しいだの毎日送り迎えするからニューヨークで一緒に暮らそうだの親父よりも駄々をこねられて、付き合って早々に喧嘩中だ。
そしてカイトのスマホはサイレントにしているが鳴りっぱなしだ。
履歴をチラ見すると父親、トム、父親、トム、トム、トム、トム、エレナと着信履歴が続いている。
「後で掛け直すか」
スマホをポケットに押し込みイチと一緒にダイナーへと向かった。
韓国人のパクとフランス人のルネ、ポーランド人のマルチンは先に到着していた。
というか既に出来上がっていた。
奥の少しだけ死角になるボックス席でビール瓶を片手に肩を組み合ってPinkのRaise Your Glassを熱唱している。
「Just come on and come on and
Right your glass♪ (こっち来てよ、さぁ
乾杯しよう!)」
ただ普通の酔っ払い学生達とは違ってパクは爬虫類のような長い舌を手の様に起用に動かしてビールの栓を開けている。
ルネは2mほど長く伸びた腕を振り回している。
マルチンは自分の影を自由に動かしているのか、影が歌に合わせて踊っている。
「おおー!やってんな!」
イチも嬉しそうにビール瓶を手に持つとカイトに向かって振り返った。
「ネオヒューマンズナイトにようこそ」
イチの体が突然発光した。
指先から青白い光が出ている。
身体の中をまるでミラーボールのように10cm程の光の玉が自由自在に駆け抜ける。
「コレが俺の能力」
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