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4時限目
「君たちが盛大に羽目を外してるって連絡が入ったんだよ。彼から」
ブレイン先生はshackのカウンターにいるバーテンを指す。
「彼はWIAのエージェント•マクレガー。コロンビア大学に在籍するネオヒューマンズの学生達の監視や護衛でここに居るんだ」
「だから来んの早かったんか〜」
イチはハァ〜と大きなため息をついた。
shack店内に居た先程の大男や他の客はブレイン先生の一言で全員が帰宅した。
今は店内に居る客はカイト、イチ、パク、ルネ、マルチンのALP学生とブレイン先生、エージェント•アンダーソンだけだ。
「君たちはもっと危機感を持つべきだ。ネオヒューマンズをWIAが極秘扱いしているにはちゃんと理由がある。君達の軽率な行動でコロンビア大に在籍する全てのネオヒューマンズを危険に晒しているんだ。僕は誰よりもネオヒューマンズの危険について熟知している」
後で知った事だが、ブレイン先生はネオヒューマンズを狩るカサドールという組織に一度捕まり唯一、脱出した人らしい。
しかも、夫のエージェント•アンダーソンが命懸けで救出した話はWIAの伝説トップ5に入る。
「すみませんでした」
全員で謝っていると突然ドアが開いた。
「カイト!帰るよ」
「え?トム?なんで居るんだよ?」
突然、トムが現れカイトが驚く。
「え?トム•コーヴィンの知り合い?!」
その場に居た他の全員も驚く。
「カイトいいから来るんだ」
「カイトはウチの生徒ですが何かご用でも?」
ブレイン先生の質問に「君の能力かすごいな。言葉で縛るのか。うちの会社に欲しい人材だ」
とトムが答えた。
「僕の力は効かない様ですが、あなたもネオヒューマンズ?」
「そのネオ何とかって言い方は嫌いなんだよ。じゃあ、カイトは連れ帰るから。許可は取ってある」
「ごめん、俺先に出るから、また明日」
トムはカイトの肩を抱くと外へ連れ出した。
相変わらずド派手なメルセデスAMG ONEで現れた。色こそいつもより地味だが約3億超えの限定モデルだ。
「乗って」
どうやらご機嫌斜めらしい。
車のドアを開けてくれたが、目は合わせてくれない。
「ありがとう。どこ連れてくの?」
運転席へ回り込みエンジンをかけるとゆっくり発進した。
「行き先の前に、カイトに聞いてもいいかな?」
「何?」
「僕は君の何?」
「え?」
真っ直ぐ前を見て運転している大富豪は無表情だ。
「僕は君の心は読めない。だから言って欲しい。言葉で」
これは、よく女の子に言われた「私ってカイト君の何なの?」「私の事、好きじゃ無いでしょ?」ってヤツ?!
ヤバイな。
「カレシ」
「カレシ?」
「恋人って意味」
そう言うとトムは少しホッとしたように短く息を吐いた。
「良かった。僕だけがそう思っているのかと心配になった」
「ご、ごめん」
「君は僕から簡単に離れてしまうし、電話にも出ない」
「ごめんって」
「それに僕が居ない所で酔っ払ってトラブルを起こすなんて」
「そういえば、何であそこに居るって分かったの??何でこっちに居たの?」
「ああ、君の事はエージェント•ハワードから情報共有するように頼んである。
あと、こっちに新居を買ったんだよ」
「え?」
「今日から僕とカイトが住む家だ」
「え??」
「キングスタウンの寮より大学も近い」
「聞いてない」
「夕方、エレナから電話があっただろ?」
しまった。トムの秘書、超美人な有能秘書からの電話を無視してしまっていた。
「もうそろそろ着く」
車はバカデカイ、鉄格子の門を潜る。
勿論、自動開閉だ。
中庭を奥へと進むと突然、城が現れた。
「ここだよ」
玄関前に車を着けると秘書のエレナ、運転手のウィル、他にも数人のスタッフが待ち構えていた。
まさか城に住むつもりなのか?!
「おかえりなさい、社長。カイト。
カイト、あなたの荷物は寮から運んであるわ」
エレナ、抜かり無い。
「え、ここ何?お城?」
「ああ、19世紀に作られた小さなお城よ。中は総リノベーションしてあるから大丈夫よ」
エレナは普通の事のように話す。
「え???城に住むの?」
「カイト、中を案内するからおいで」
トムに連れられて中へ入る。
玄関ホールは真っ赤な絨毯が引かれていて螺旋階段が左右に伸びている。
「僕達の私室は2階だよ。左1番奥は僕の部屋で仕事部屋も兼用。隣はカイト、君の私室だよ。荷物も置いてある。向かいの南側が僕達のメインベッドルーム、隣はシャワールーム、バスルーム」
僕達のメインベッドルーム?!
「正面を挟んで反対はエレナとウィルの私室だ。しばらくはここで仕事をするから彼らも呼んでおいたけどいいかな?」
「え?あ?うん、大丈夫」
「三階はサンルームやテラスもある。ビリヤードルーム、シアタールーム、後はミニバー。
一階はメインダイニングがあるから食事は一階だよ。リビングも一階だ」
「うん」
ちょっと、思考停止中。
「食事はシェフを呼んでおいた。ミシュラン三つ星のイレブン・マディソン・パークから引き抜いたシェフだから食事は期待してくれ。リクエストがあれば直接伝えて。
後はメイドが2人。身の回りの世話をしてくれる」
「め、メイド??身の回りの世話は自分でやるよ」
そして俺とトムの同棲、、、城暮らしは突然に始まった。
コレ同棲なのか??
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