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動作不良は仕様ですか① ※先生視点
どれだけ人から君を遠ざけたくともそれは叶わない。
君の周りにはいつも誰かがいて、同級生だけではなくて下級生とまで通り過ぎ様に挨拶を交し、教師にもよく呼び止められている。みんなあの子のことが好きだ。自分だけではない。
それが許せなくてこの感情はなんだろうかと分析してみたが、まぁ単純にいえば独占欲だ。しかし独占欲が湧くのにも様々な理由があるだろう。一般的に考えられるものからいくつか候補を絞り出した。
一つ。今まであまりに一人で過ごしてきたから求められて、誰かと長い時間一緒に過ごすことが嬉しかったという単純なものか。
二つ。自分を選び続けてもらいたいからなのか、いつか離れるのではないかという不安からなのか。
三つ。それともただ自分の所有物だと認識し、ある程度自分の好きなようにコントロールしたいという支配欲からなるものか。
四つ。彼を母親のように認識し、僕のことは全て受けいれ、その愛情は全て自分に向けられるべきだと無意識下に思っているからなのか。
一つ目と二つ目はあまりないかなと思う。しかし三つ目と四つ目は自分の生い立ちも合わせて考えると、当てはまるどころか併発している可能性も高い。
しかし理由はどうあれこの欲を発露しないように努力するか、欲を満たすために行動を起こすかは僕次第なのだ。
僕は欲を満たしたい。
出雲は僕だけのものがいい。
それが間違った選択だとは理解して、それでも欲を満たしたい。そうしないと苦しくてたまらないのだ。
煙草を吸いに行こうと廊下を歩いていると、向かいからノートを大量に持った出雲とそれに付き添う女子生徒が歩いてきた。本来ノートを持っていくよう指示されたのは女子生徒の方なのではないかと思う。誰にでも親切にしてしまうあの子によく見られる光景だ。本当は気を遣いすぎて疲れ果てているくせに。
「シュークリームは確かに難しいんですよ。俺も失敗することがあります。温度管理が大事ですね」
「温度って焼く温度のこと?」
「いえ、それだけではなくて生地やバターなど材料の温度が大切なんです。あとでポイントをメモ書きして渡しますよ」
「あ、それだったら連絡先教えて! 作りながら相談したーい!」
今日は随分おいしそうな話を楽しそうにしている。
しかし連絡先と言われた途端、出雲の視線がちらりと下を向いて、そうですねぇ、とさっきまでのテキパキとした説明が嘘のように歯切れの悪い返事を返す。
冬休み家に来た時に出雲のスマートフォンが何回も何回もピロンピロンと鳴っていたのを思い出した。そしてそれをいちいち返しているのも。忙しいのですみません、と返してくれるので同じ相手からは来なくなるのだが別の相手からくるのだ。
例の友人たちのことだけではなく、出雲は女の子にもよく好かれている。しゃんとした姿勢で自分が運ぶはずの重たいノートを持ちながらお菓子作りのアドバイスまでしてくれる彼が、おしり気持ちいいって涎垂らしながらよがりまくってるところ見せたらどんな反応するだろう。見せてみたいな。僕はこんなに出雲のことを知っているんだよと見せつけたい。
「ねぇ」
「うわぁ!」
すれ違いざまに声をかけると二人して大きな声を出して大袈裟に驚くものだからちょっとムカついた。近くにいて気が付かないサイズ感ではないのだけれど、僕。
「それ……どこまで、運ぶの」
聞けばおどおどする女子生徒の代わりにすぐに出雲が答えた。
「理科準備室です」
「じゃあ、すぐそこ、だね?」
出雲からノートを一度預かり、はい、と女子生徒に渡した。
「用事、あるから。この子……もらうね?」
「え、あの、でも……」
女子生徒は渋々ながらも頷いているのに、出雲が口篭るのでさらに苛立ちが募る。
「なに? 来ないの?」
「いえ……」
出雲が動こうとしないので女子生徒まで立ち去っていいものかわからず困った顔をしていたので、もう面倒くさいと屈んで出雲の背と膝の裏を抱いてそのまま肩に担ぎあげた。
うわああっと可愛く叫んで暴れ出すので揺れて危ない。しかしなんとかいけそうなのでそのまま歩き出した。
「えっちょっと! なにするんですか! はぁ?!」
「暴れないの。落とすよ」
「うう……落とすんじゃなくて下ろしてくださいよ」
暴れるのはやめて、情けない声を出してトントンと背中を叩く。
廊下を歩く生徒が口々に会長が運ばれてると言い目を丸くするのが面白い。
「凄い……視線を、ひとりじめ?」
「恥ずかしいですよっ!」
「じゃあ、いつもみたいに……抱っこした方が、良かった?」
声を潜め、腰を支える手でおしりを軽くさする。簡単に穴まで指が届くな。出雲はびくりとして、しゅんとしぼんだ様に静かになった。
「もう……そのうち腰を痛めますよ」
拗ねた声を聞きながら、それは出雲を抱っこできなくなるので大変困ると思った。
「よいしょ……っと」
保健室に到着して下ろすが、あまりに注目を集めてしまったせいで廊下から中を覗いてくる生徒が後を絶たず、どうしたものかなぁと首を傾げた。出雲はそんな僕を見て深いため息をついた後、むっとした表情を向ける。
「もう、何をやっているんですか」
「あの子に……連絡先、聞かれて。困ってなかった?」
そういえば煙草を吸いたかったんだった、と仕方なく電子タバコを取り出すが、出雲にダメですよと咎められた。
「煙草……吸いに、行きたかったのに」
「吸いに行けばよかったんですよ」
「怒ってる?」
「怒ってます」
二人で保健室の中央に立ったまま睨み合う。そうしているうちに午後の授業のチャイムが鳴り、廊下にいた生徒たちはそれぞれ次の授業のために去っていく。
誰もいないのを確認して電子タバコのフィルターを装填し加熱した。
「僕は……怒ってると、思う?」
「え?」
僕の問いに顔を顰めたと思えば、下唇を噛んで俯いた。
「下唇、噛まないの」
注意しても聞かないので鼻をつまむ。ついでに顔を上に向かせた。
「ふぐっ……」
「聞いてる? ほら、口、開けて……できる?」
言い聞かせるように呼びかけると、やっと小さく口を開け下唇を解放した。くい込んだ歯の跡はすぐにふっくらと元の形状に戻っていく。可愛いくちびる。
摘んでいた鼻を離してあげると、出雲は鼻を押さえながらぐすっと鳴らす。先日の鼻血といい、この子は鼻炎体質なのかな。
「先生、怒ってるんですか。山下たちのことですか?」
「違うよ。君が……誰にでも、いい顔するから。イライラする」
その手を引いて、いつものベッドへ誘う。優しく押し倒し、上に乗って。そして膝で股間のあたりを探る。乱暴にぐにぐにと押しているとういのにやはりすぐに固くなってく。簡単すぎて心配になるほどだ。
「先生……やめてください。そんなの、どうしようもないじゃないですか……山下たちなら、あれから話してませんよ。それでいいでしょう」
「よくない。君は、僕の。みんなのじゃ、ない」
「んっ……そんなこと、いわれても……せんせ、やです、それ……っ 」
やだというので膝を下ろしてやめてやれば、少しの間の後に何もしない僕を熱い瞳で睨みつけてくる。そして太ももにすりすりと股間をすりつけ強請ってきた。
「嫌……なんでしょ」
「膝は……や、です……でも、こんなになっちゃったんです」
ズボンの前を開き、立ち上がった性器を取り出す。そして自分でゆっくりと扱き始めた。
「先生? そんなに、心配しなくても……こんなとこ見せるの、先生だけなんですよ?」
内股になって、右手で性器を上下に扱きながら、手の甲を口に当てて声を我慢する。気持ちよさそうに仰け反ったり、逆に肩を竦めて丸くなったりしながらするその姿は確かに僕だけのものだ。せんせい、と舌っ足らずに呼ぶ甘えた声も。
けれど僕の本音はその姿だけでなく、君の声も視線も全部自分にしか向けてほしくない。見る見ないではなく、自分が欲しいのだ。自分だけが。
「先生……だいすきです。せんせい、すき。あ、あ、ほら、見られてるから……こんなに、ん、濡れてきてます……」
だんだんと声が荒くなり、頬が赤く染る。とろりと垂れる我慢汁を指にとり、それも絡めて細い指先が裏筋からカリの下まで撫で、また握って。男性器を人差し指と中指の間に挟んで指をV字のようにし、両サイドから圧迫をかけて扱くのがこの子の好きなやり方だ。
だんだんと目がとろんとしてきて、口の締りが悪くなり、呼吸の仕方も犬のようになってくる。
「はぁー……はぁー……せんせい、おしり……おしりも、触りたいです」
「いいよ」
「ありがとう、ございます……ん……」
扱く手は止めずに、空いてる手の指を自ら銜えて舐め、準備を始める。準備のためのはずだが、喉を鳴らしじっくりと、顎の下が動くほどにじゅるじゅると指を鳴らす姿はそれだけとは思えないものだった。
「あ……っ……ん、ん、きもちい……」
人差し指と中指をぐっと奥まで入れてこしょこしょと揺らしながら官能的な声を漏らすものだから、喉で感じているのがバレバレだった。
「おしりじゃ、ないの……?」
「ごめんなさっ……あ……のどのおく、きもちい、です……のど、で、かんじちゃう……」
目先の欲に溺れがちな悪い子を説得する為、下ろしているだけだったズボンを脱がし、片膝をあげた。するとほんの少し真ん中のあいた穴がひくひくと窄まる。
「ここは、どうするの?」
そこを指の背で撫でると、あっ、と大きく反り返る。
「あ、あ、おしり……やっぱり、おしり、します……っ……おしり、ほじほじしたいぃ……」
「うん……ちゃんと、触ってあげて」
「あっ……あっ……いれます、はいります……」
唾液まみれになった指を、ゆっくりゆっくりとそこに埋めていく。目を閉じて、浅く呼吸をして、ゆっくりと。
そして一度根元までしっかりと指を飲み込ませると、そっと出し入れを始めた。指が抜かれるとおしりの穴の内癖がやや露出し指に吸い付いていく様子がいやらしい。僕の指にもよく吸い付くのを思い出し、たまらない気持ちになった。また触りたい。
「あーっ、あーっ、おしり、おしりぃ、きもちいいぃ……せんせぇ、おしり、すきぃ……あっ、あー、きもちい……ほじほじ、とまんにゃ……あぁっ……」
さっきまで怒っていたのにと思うと笑みが漏れる。本当に、本当にだらしない。焦点の合わない眼をして、下の前歯にベロを乗せて。性的欲求さえ満たしてあげればなんでも許してくれそうだ。ずっとずっと気持ちよくなってるところを眺めていたい。早くもっと上手にドライオーガズムできるようにしてあげないと。
しかしその時、僕たちを囲う湿度の高いこの空間とは全くかけ離れた、ガラリと乾いた音が響いた。慌てて出雲の口を押さえると、まだ状況がよくわかっていないのか目線だけゆったりと僕に向けて動かす。しかし目が合っているようで合ってない。
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