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甘い監禁生活になりません⑤

 笑ってくれるのはうれしいけれど、別になんにも面白いことないのに変なところで先生はツボる。背中から肩口に顔を埋めて笑ってるのでくすぐったいし、なんだかつられて俺も笑ってしまった。 「もう、何がそんなにおかしいんですか」 「うん? さっきまで、あんなにへろへろ、だったのに……凄い元気だなって……ふふ、可愛い」 「可愛くないですよっ」 「可愛いよ? こんなに僕を笑わせるのは、君だけだね」  こんなんで笑うなんて先生ってば結構ちょろいのでは。こんなに笑わすのは俺だけではないのでは。  そんな気持ちで肩越しに先生をじっと見つめ、目が合ったのでぷいっと前へ向き直って目線を外した。 「出雲?」 「先生……なんだ最近はよく笑ってくださりますし、前よりスラスラとお話されていると思います」 「そう?」 「そうですよ。あの……それって俺だけにですか? 今、先生が学校でどうされてるのか知らないので……」 「君も僕を、独占したいの?」  後頭部に口付けた後、髪を梳かしながら撫でられる。照れくさくて振り向かないまま頷くと、先生が下腹部をゆっくりと撫で回し始めた。さっき出されたところだとドキドキしてくる。 「君だから、だよ。君と話す時は……あまり考えないで、自然と話せる。君と一緒だと君が愛おしくて笑顔になる。そしてあんまり可愛くて、笑っちゃう」 「それって……すごい愛じゃないですか」 「そうだよ? 言ったよね、愛してるって。そんなにほいほい、言うつもりはないけどね」  そんなやり取りをしていたら入りっぱなしの中がちょっとむずむずとして、萎えた先生のちんちんがぬるんと滑り落ちるように抜けた。奥に出された精液がローションと混ざってどろっと流れ出てくる感覚にぶるりと肩が震える。 「抜けちゃった……出雲の中、どろどろ」 「あ、あ、だめ、せんせ……もうほんとに、だめ……」  開ききったお尻の穴に先生は指を入れて中で動かし、ちゅこちゅことわざとエッチな音を立てる。そうしながらも前立腺をくすぐられて背筋がぴんと伸びる。 「あ、やだっやだっ……いま、敏感、でっ……ああぁぁ、だめぇ……すぐきもちよくなっちゃう……」 「君の声聞いてたら……またしたくなってきた。そんなに誘って悪い子」 「誘って、ないっ……えっち、もうやですもんっ……あ、しょこ、ぐりぐりしないれ……きもちいいの、だめ、やだぁ……ぐりぐりきもちいいから、だめぇ……っ」 「こんなに腰揺らして、何言ってるの?」  逃げていたつもりが先生の固くなったおちんちんをお尻の割れ目に合わせてすりすりと擦り寄せており、一気に全身の熱が上がった。でも腰をカクカクと上下に揺らすのを止めることができなくて、すりすりとおちんちんに媚びるのを止められない。もうこれ以上は無理なのに。 「ゆび、じゃなくて……おちんちんでぐりぐり、してください……いっぱいずぽずぽして、また俺のお尻の中に種付けしてくださいっ……せんせぇ……」 「出雲はやらしくて困るな。でもせっかく大きくなってきたし、中にかけようか?」  何度も頷いて、先生にそのまま後ろから抱きしめられて、また先生と繋がる。  いくつも愛を囁かれて、たっぷりと甘やかされて、気づけば意識を手放していた。  隣で眠る先生を確認して起き上がろうとすると、膝が笑ってしまい力が入らなかった。しかしベッドに手をついて起き上がることもできない。  また両手首が縛られている。 「いずも……?」  気配に気がついた先生が目を覚ます。先生は起き上がり、また縛られている事に困惑していた俺に特に悪びれもない様子で、動かないこの身体を横抱きにして抱き上げた。 「お腹……すいた? 君にお弁当、買ってきたから……食べる?」  もう外してもらえると思ったのに。せめて先生がいる時くらい、解いてくれると思ったのに。  やっと先生と繋がることができて嬉しかった気持ちがスーッと冷めていき、胸の奥から悲しさが込み上げてくる。先生はまだ俺のこと信じてない。 「縛られてたら、ご飯食べられません……」  抗議の気持ちを込めて口に出すが、先生は微笑みかけてくるだけだった。 「僕が食べさせてあげる」  ソファに下ろされて頭を撫でられ、ちょっと待っててと去っていく。  今日はたくさん眠って自慰していただけでご飯を食べていなかった。お腹は空いたけれど……ご飯なら買ってこなくても俺が作るのに。  自由の利かないもどかしさに膝を擦ると、なんだかごわごわとした不愉快な感覚があった。いつもTシャツ一枚で下着も身につけていないが寝ている間に履かされたらしく、下着を履いている感覚がある。それはとてもいいのだが、中に何かが挟まっているのか得体の知れない異物感が下着の中を不愉快にさせているようだった。  座っていても落ち着かなくてそわそわとしていたら先生が戻ってきたので、隣に座ってお弁当の蓋を開ける先生に問いかける。 「下着の中に何か入ってるみたいなんですが……これはなんでしょう……」 「ああ……お尻がね、すぐには閉じなそうだから。漏らしたら、嫌……だよね?」  言われている事をすぐ理解し、あまりの恥ずかしさに顔から頭から熱が上がってたまらなくなった。先生はマイペースに割り箸を割って、おかずをお箸でとって俺の口元に持ってきた。そんな気になれなくて顔を後ろへ引くが、それでもずいと寄せられ仕方なく口を開く。 「一日おけば、戻るだろうから。大丈夫」 「そうですよね。すみません、気を使ってもらって……」 「ううん。でも……毎日したくなったら、ごめんね? Tシャツとオムツを着るようになっちゃうかな。僕はそれでも構わないけど」  先生の笑い声が耳に響いてゾッとした。 「冗談でも笑えないです、やめてください」 「冗談のつもりは……ないのだけど」 「嫌です、やめてください……!」  本当にいつもの調子で平然と言ってのけるから、冗談なのか何のつもりなのか分からなくなる。  せっかく嬉しかったのに。あんなに満たされた気持ちになっていたのに。すぐにぶち壊される。 「なんで、まだ縛るんですか。そんなに俺が信用できませんか」  涙が出そうになるのを堪えながら訴えかけるが、先生は肩を竦めてまたお弁当のおかずをとろうとしている。  その手元を見れば、二週間ほどでよくここまでになったと驚くほどまともに箸が持てるようになってきている。まだ少し覚束ないけれど、それは先生の手が大きくて普通のお箸だと持ちづらいからだ。だから先生の手の大きさに合わせたお箸が欲しいと思ったのにな。先生のことばっかり考えているのにな。  その結果の縛られた手首を見て、瞬きをしたら我慢していた涙の粒がいくつか落ちた。 「俺は先生が大好きなのに……先生のそばにいたいと思ってるのに……何がダメなんですか。先生は何を求めているんですかっ……? 教えてください。俺にできることならしますから……」  一度零れた涙は次から次へと溢れて止まらないが、涙を拭くのすらこの手では上手くできない。  先生はお弁当をローテーブルに置いて、涙の粒を掬って俺を抱き寄せる。すんなり抱きしめられて先生の肩に顔を埋め、しゃくりあげる俺の背をその大きな手がさする。 「君はこんな時でも、抵抗せずに身を預けてくれるんだね」 「こんなことされても、先生のこと好きなんです……なのに先生、信じてくれない……」 「違うよ。不安もあるよ? でもね……」  一拍おいて、先生が息を飲むのがわかった。緊張が伝わる。 「君を壊してしまいたい」  それは比喩として使うことは珍しくない表現だ。しかし先生から出たその言葉はあまりにストレートに入ってきて俺を困惑させた。 「壊すって……」 「君をね……家に帰そうと、ずっと思ってた。でもやっぱり、帰したくないんだよ。手放したくない。それなのに君があんまり素敵だから、ここに閉じ込めておいちゃいけないと思ってしまって、苦しい……」  優しくさすっていた手が爪を立てる。Tシャツ越しでもギリギリと爪がくい込んできて、痛みをこらえるために奥歯を噛んだ。 「でも君を誰にも見せたくないから外に出せない。僕以外の人を見るのは嫌だし、何かあったら山下にさせたような、もっと酷いことを君にするかもしれない」  顔を覗き込まれれば、眩しそうに目を細めて先生が俺を見つめる。太ももを撫でられたと思ったら、消えない噛み跡の場所だった。これは酷い事じゃない、俺が望んだもの。  先生の手は縄に触れ、俺の首にかかる。 「だから君をここに閉じ込めて……帰そうとなんて思えない君にしたい。ここに閉じ込めておかないと駄目な君にしたい。だから君を壊してしまいたい、精神も肉体もズタズタにしてやりたい」  首を絞める手に力が入ったり緩められたりしながら、口付けが交わされる。意識が飛びそうなほどグッと絞めながら与えられる口付けは甘く、舌先をこちょこちょと舐めて、ちゅっと吸って、頬や裏顎を擦って……そうしながら膀胱のあるあたりを指で優しく押された。膀胱が押されるのも、それによって前立腺が圧迫されるのもたまらない。  苦しくて、気持ちよくて、イキそうで、混乱する。  先生は唇を離したあともお腹を撫でるのはやめず、ため息と共に自嘲した。 「ああ……なぜ僕は君にこんなこと言ってしまったんだろうね? 気が緩んだかな……君がそれでも受け入れてくれるって、甘えているのかな。ごめんね。出雲……ごめんね」  腰が浮く。ここのところずっと身体を弄り回されて、男性器も立たなくて、性的には既にこの身体は壊されているのではないだろうか。  先生がこんなに真剣に話をして下さっていて、自分の身もそれなりに危険なのではと思うのに、気を抜くと気持ちいいことしてほしいとねだってしまいそう。腰を揺らして先生の指をもっとほしいところに押し付ける。 「俺……素敵じゃ、ないです……素敵じゃ……」 「君はいつだって人に好かれていて人に囲まれていて……君は一生懸命それに応えて。その健気さを全部僕が受け取りたい。でもそれだけじゃなくて、君はとっても素敵だよ」  先生の囁きと甘い疼きに痺れ、だらしない声と共に瞼を下ろした。  ちゃんと考えなきゃ。どうしたらいいのかちゃんと考えなくちゃ。 「先生は……本当に俺がおかしくなってしまっても、お辛くないですか? ご自分を責めませんか?」 「出雲、きみ……」 「俺が出ていくって言えば、躊躇なく酷いことができますか?」  手のひらが内側にあるため、先生に触れようと思ったのに上手くできないでいたら、先生が片方の手のひらを握り手の甲を頬に寄せた。 「先生、俺……出ていきます。それなら出ていきます。先生から離れます。だから……」  出ていくと言っているのに先生は俺の手の甲に唇を寄せて、拘束していた縄を解いた。  最後にもう一度抱き寄せたあと、ソファから離れていく。その背中は振り返ることもなく声を発した。 「先に寝る……君は、ご飯食べて。おやすみ」  先生が楽になるようにするにはどうしたらいいかと考えたのに、また先生を苦しめてしまったのだろうか。寝室へ消えていく姿を見つめながら、用意されたお弁当を自分の手で食べた。  次の日、昼過ぎに目が覚めると、ベッドの横に俺の荷物と制服とスマートフォンが置いてあった。  久しぶりに目にしたそれらに愕然とする。捨てられた気分になる。  今日は金曜日だ。楽しみにしていた週末なのに。  当然こんなものを用意されたところで出ていくつもりはない。ただ先生が帰ってきたらなんて言おうかと考える。  怒って文句を言えばいい? 泣きついて縋りつけばいい?  正解がわからない、きっと正解はない。先生は結局苦しむ。俺がどこにいたって何をしてたって苦しむ。  とりあえずご飯を作って先生の帰りを待つことにしたのに、待てども待てども先生は帰ってくることはなく、果てにはソファで寝落ちしてしまった。物音に気がついて目を覚ませばカーテンの隙間から光が漏れてもう朝になっていることに気がつく。  玄関の扉が開いた気配がしたのに先生の足音が聞こえず、廊下の扉を開けると先生は靴も脱がずにその場で座り込んでいた。アルコールと煙草の匂いが鼻につき、相当お酒を飲んできたことを察する。 「先生……? 大丈夫ですか?」 「君、なんで出て行かないの……君が出て行ったら、帰ろうと思ったのに」 「出て行って欲しいですか?」 「ううん……出て行かなくて、安心してる」 「なんなんですか、もう」  膝立ちで先生の背中に抱きつけば、先生が顔を上げてお顔がすぐ目の前にきてドキリとするが、それよりもアルコールの匂いがキツくて香りだけで酔ってしまいそうだった。 「出雲は思ったよりメンタル強いねぇ? 壊せそうな気がしないなぁーぐちゃぐちゃにしてしまいたいのになぁー」 「先生が弱すぎるんです」 「立てないから抱っこして?」 「はぁ? 無理に決まってるじゃないですか」 「ひどいなぁ……いつもあんなに抱っこしてあげてるのになぁ……」  こっちはかなり感傷的になっていたのに感傷ゼロの酔っ払いが帰ってきて、飽きれ半分、怒り半分、安心半分……いや、半分が三つあるのはおかしいので最後のは取り消します。  この人もう一生ぐだぐた言ってるんじゃないですかね。もう適当に毎回あしらえばいいですかね。本当に腹立つ。もう帰ってこなかったらどうしようかと思ったのに。どこかで死んでたらどうしようかと思った。  ぐすっと鼻を啜ったら、先生はこちらに身体を向けて俺に抱きつこうとしてよろめき、廊下でそのまま押し倒されてしまった。後頭部を打つかと思ったら、酔っ払ってるくせにそこは先生の手でガードされていて何だか余計にムカついた。 「手が痛い……」 「先生が押し倒すからですよ! 重いです。お酒臭いです」 「なんで今日はそんなに意地悪なの……? 出雲が泣いちゃうと思って抱っこしようと思っただけなのに……」 「泣きません。誰が泣くもんですか」  

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