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第2話

 双葉先生、二十三歳、大学院生、まひろの家庭教師で好きな人だ。身長百七十四センチ、やせ型、顔は好みのタイプで、性格は優しい。そしてちょっと押しに弱い。視力も弱いけれど、コンタクト派だそうで、ちなみに恋人はいない。  なので、一念発起、玉砕覚悟で告白してみた。 「双葉先生、好きですっ」  先生の帰り際、参考書を鞄にしまっている最中に、まひろは精一杯の告白をしてみた。心臓はどきどきとして煩く、自分の声すらろくに聞こえない。  先生はなんと答えるだろうか。気を遣って、明日から来てくれなくなるんじゃないだろうか。それは嫌だな、とまひろは思う。  先生が口を開く。 「まひろくん、」  そのあとの言葉を聴くのが怖い。きっぱり振られるのだろうか。優しく言い聞かせるように、諭されるのだろうか。どれも嫌だな。まひろの欲しい答えは「僕もだよ」ひとつだ。 「まひろくん、僕も好きだよ」  そう、それが聴きたかった。まひろが心の中で諸手を上げかけてから、「ちょっと待て」と思い留まる。 「あ、っと、先生として好きなんじゃなくて、いえ、双葉先生は好きですけど、僕は先生と結婚したい好きなんです」  ここははっきりさせなければ。まひろの好きと先生の好きが一緒でなければ、意味がない。先生は気弱そうな顔で笑って、「僕もまひろくんと結婚したい方の好き」と言われた。  これは両思いというやつではないだろうか。 「ほんとうにっ?」  勢い余って、まひろが先生の方へ身を乗り出す。顔と顔が今まででいちばん近付いた。 「本当に」  あ、このままキスしたい。と思っている間に、先生の顔はまひろから距離をとった。そう、キスをするだけならなんとでもなるけれど、まひろのゴールはそこではない。ちゃんと段階を踏むのは大事だ。 「双葉先生、僕と付き合って下さいっ」  まひろは頭を下げる。それに先生も頭を下げて、「こちらこそよろしくね、まひろくん」と返された。  こうして広瀬まひろ、十五歳の初恋は実った。  

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