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■君には話せない

思いのほか軽い手応えに はっとした。 机に向かう前に用意したココアはいつの間にか空で、ずいぶん軽くなったマグカップを揺らすと甘い香りだけがこぼれてくる。 どうしたものか。 昼間、教頭からある依頼をされた。 今度の講演会で俺に話をしてほしいのだと言う。 勤務している中学校では年に数回、様々なテーマを設けて講演会をしている。まあどこの学校でもあるような、特別講師を呼んだりビデオを見せたり、体育館に詰め込んだ生徒に眠い時間を過ごさせた終わりに感想文を書かせるあれだ。 今年赴任してきたばかりの自分に白羽の矢が立ったことに関して教頭は「秋山先生以上の適任が思い付かなかったから」と言った。 適任。 ああ、この人は俺の昔を知っているんだ。

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