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第24話 果てしない夜
晩酌を少しだけ付き合うつもりが飲みやすいワインのせいで程よく酔ってきた。相変わらず酒が強い黒は平気な顔でボトルを空にしていく。このままじゃ本格的に酔いそうだ。
「もう寝たい」
「寝るか」
「うん…酔っちゃったから」
「横になれ。私もすぐに向かう」
すぐそばにあるベッドに覚束ない足取りで進み潜った。だがそれだけで終わるはずもなく。黒が布団に入ってすぐ強く抱きしめてきた。苦しいくらいのハグに思わず逃げ出そうとするができなかった。
目の前にいる黒は獣と同じ、満足するまで食い尽くすだろう。こうなってしまっては止めることは出来ない。飢えた獣に求められ続けた体は簡単に狂う。もっともっとと恥ずかしげもなく求めてしまうのだ。
「んん…黒…」
「もう体が熱いな」
「…酒のせい」
にやりと意地悪そうな顔で見つめられる。何か企んでいるかのような得意げな表情だ。まさか盛られた?そう考える間も無く、黒の手が這い回りいとも容易く服を剥ぎ取られた。
黒だけに見せる所有の証を刻んだ屹立はすでに先走りを垂らし淫らに震えている。
「な、何したの?」
「…今夜の宴は誰のためだ」
「黒の…ん、あ…復帰を祝して」
「ならば復帰した褒美をくれても良いだろう」
黒の言ってる褒美と薬を盛ることの共通点がわからない。それでも体はどんどん熱くなり、微かな刺激でさえ拾って快楽に変えて行く。恐ろしい程に感じてしまう。
「狡い…俺には」
「お前だけじゃない。私も同じ酒を飲んだ。存分に褒美をくれてやるさ」
「…黒も?…本当だ。息が荒い」
同じワインを飲んだ黒にも薬の効果が出ているようだ。いつもより荒い息と熱を帯びた視線。交わされるキスも激しい。唇を食まれ、舌が巧みに動く。
「ん…っん…はぁ、黒…」
ずいぶん長い間交わしたキスが解かれ、舌が唇から下へと舐めるように動く。蠢く刺青に目が離せない。首筋や鎖骨を通り過ぎ、乳首に触れることなく胸の間に吸いつかれる。
「ん、あ…や…焦さないで」
「簡単に与えたら面白くないだろ」
「…っ意地悪」
「どうして欲しいか言えたらしてやる」
胸の間にチリっとした痛みを感じる。初めてのキスマークを施された。懇願しろと言わんばかりの視線を送られる。このまま焦らされ続けるのは我慢ならない。
どれだけ求めてるか知ってるくせに意地悪をしてくる。
「ちゃんと舐めて」
「何処を舐めて欲しいんだ」
「ここ…」
恥ずかしい気持ちがあったが胸を突き出すようにして、自ら乳首を摘まんでみせた。黒は満足げに口角を上げると要求通りに舌を乳首に這わせてきた。強弱つけながら吸われたり、舐められたりを繰り返される。
「んん、ぁ…はぅ…あぁ…」
「ここだけでいいのか?ほかにもして欲しいことがあるだろう」
「ん…言わせないで」
「だめだ。ちゃんと口で言え。喘ぐ声も要求も全て隠さずに曝け出せ」
お腹に付くくらい反り返っているそこを黒が触れてくることはない。こちらから望まなければ触れて来ないつもりだ。執拗な胸への愛撫を受けながら、黒の手を掴む。自らの屹立に手を誘導する。
「触って。ここ…黒の手で」
「手だけでいいのか?」
黒はペロリとわざと舌を覗かせた。何を言わんとしてるのかはわかった。刺青の掘られた舌で自分のそれを舐めるのを想像するだけで体が震える。
「も…やだぁ…ん…くぅ…」
「泣くことないだろ」
「だって欲しいのに…」
子供のように恥ずかしげもなく涙した姿に驚きをみせた黒は瞼にキスを落としてきた。指で涙を拭われる。
光り輝く天使と勘違いするほど眩しく感じる黒から破壊の王の片鱗が見えない。甘い夜だ。
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