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第27話 作戦決行前夜
「黒…っああ…ッん」
「へばるなよ。求めてきたのはお前だろう」
俺の思いが通じて形勢逆転した後、一つになった。明日のために少しは手加減してくれているとはいえ、今で二回目だ。
それでもまだ足りないと言わんばかりに内側が黒の灼熱を誘い込む。その度に黒は歯を食いしばり、息を荒くさせている。
この感覚も表情も紡ぐ声も全て記憶する。間違わないように探し当てられるように。
「黒…もっと…はぁあ…ぅん。ほしい…」
「貪欲なやつだな。手加減しているというのに…」
中を穿つ灼熱が出て行ったと思ったら一気に貫いた。黒にしがみつきただ強烈な快楽に溺れ打ち震える。そして自らも更なる高みの為に腰を振り乱す。
この男を虜にさせたくて我が身を晒した者、欲しいものの為に取り入った者。様々な思惑の中で交わされてきた情事。そこに愛は存在しない。だがこれは違う、互いを愛し求め合う行為。
彼の片目に深く刻み込まれれば良い。心から愛した男の顔、感じる顔、求めて懇願する様を。そして鼓膜からも離れなければいい。上擦った声、甘い吐息、喘ぎ声、名前を呼ぶ愛おしい声。全ての瞬間をフィルムみたいに保存できればどれだけ良いだろうか。
失う恐怖を感じながらも押し寄せる波に抗わず、共に密着し高鳴る鼓動を感じながら繰り返す。それでも加減されているのだから黒は絶倫だ。中にいる灼熱は萎えることなく主張し続けている。
ただ一つ残念なのは彼の灼熱には所有物の証がない。俺のには入れさせたくせに。でも構わない。身体中刺青だらけの彼が唯一刻まないそこは目立つ。見るたびに思い出す。
ほかの誰も二度と手に入らないのだと。そう思うと優越感で満たされる。
迸る汗と抽挿する音。重なる吐息を感じながら互いに昇りつめた。これまでにない満足感を得られた。何よりも変えがたい時間だ。
「黒…ありがとう」
「なんだか気味が悪いな…」
「…ワガママを聞いてくれたから」
目の前の男に手を伸ばす。以前なら無駄に絡まってきた髪はない。その代わりにあるのは黒の厚い胸。抱きとめられている。スリスリと胸を撫でるとくすぐったいと呟かれた。
少し上にある瞳を見つめる。冷酷さを隠した黄色い瞳が細められる。そしてキスが降ってきた。存分に味わう。
押し寄せる不安と幸福感。綯い交ぜになりながら二人眠りに着いた。外はまだ薄暗く島に住む誰もが眠りに着くそんな時間――
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