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お兄さんとレノー様を助けに行きます! ①

早く眠ったせいかいつもより早く目が醒めてしまう。いつものようにリアムさんの腕の中で目を覚ました僕は、腕の中から抜け出す。 昨日リアムさんが作ってくれた万能薬が入った小瓶へと目を向ければ、薄暗い部屋の中なのにキラキラと輝いていた。 今日、レノー様にお薬を飲ませてあげれば元気になるんだ……。 小瓶を手に取り僕の気持ちも一緒に詰め込むようにギュッと握りしていると、リアムさんが眠そうな顔を見せながら起きてくる。 「おはよう、ココ。今日はいつもより早いな……」 「リアムさん、おはようございます。今日の事を考えると早く目が覚めてしまいました」 「そうだよな。早くレノー様を元気にしてやらないといけないからな……。朝一でレノー様ところに向かうのか?」 「はい。でも、まずはゲスター様に薬が用意できたと報告してレノー様のところに行きたいと思っています。ゲスター様の朝食が終わった後にうかがえるかデュークさんに聞いてみます」 「そうか……。なぁココ、俺もレノー様に会うのは難しいか?」 「あ……えっと……」 リアムさんの問いかけにすぐには答える事ができず考えてしまう。 レノー様に会えるかはデュークさんやゲスター様次第だ……。僕もレノー様の体調が悪いからと言われずっと面会できなかったのに、デュークさん達はリアムさんの面会を許してくれるだろうか……。 「どうでしょう……。僕もレノー様の容態が悪くてなかなか会えなかったので……。デュークさんが許してくれるか……」 「デュークか……。それなら、俺から直接お願いしてみるよ。薬を用意したのは俺とココだから、薬の効果があるか見ておきたいんだ。それに、ココが俺のご主人様になった事も報告しなくちゃいけないからな」 僕の緊張をほぐすように少し冗談も言ってくるリアムさんの優しさに頬が緩む。 「すみません……。僕としてはリアムさんが近くにいてくれると……凄く安心します。それに、元気になったレノー様にリアムさんの事を紹介もしたいです」 「あぁ。ココに俺みたいな従者ができたなんて聞いたらレノー様は大層驚くだろうな」 「そうですね」 そんな話をしながら僕達は仕事へと向かう準備をしてお屋敷へと向かう。誰よりも早く到着し、落ち着かない気持ちを紛らわすように朝食の準備などを始めるとマーサさんやダンさん達がやって来る。 「おやおや。誰かいると思ったらココとリアムくんじゃない! こんな早くに帰ってきたって事は……薬が準備できたのかい?」 「はい! 今日レノー様に届けようと思っています」 「へぇ~これが一角獣からできる『万能薬』ってやつかい……」 マーサさんは小瓶に入った薬をニコニコと笑みを浮かべ興味ありげに見つめる。 そんなマーサさんとは対照的に、ダンさんは眉間に皺を寄せて心配そうに僕達を見つめてくる。 「おい……。二人とも、どこにも怪我はないか?」 「はい。大丈夫です。ダンさん! リアムさん凄かったんですよ。目にも止まらぬ速さで一角獣に近づいて、あっという間にツノを切り落としたんですよ!」 「そうか。まぁ、リアムは森の主に負けるようなヘマはしないだろうからな。大事なココも後ろにいるんだから尚更な」 「はい。大事なココを傷つけるなんて事は絶対にさせませんよ」 少し意地悪な笑みを浮かべダンさんはリアムさんを揶揄い、ダンさんの冗談にリアムさんも真面目な顔をして答えていて……。そんな事を言われた僕はなんだか恥ずかしくなる。 「もぅ……冗談言わずに早く仕事に取り掛かりましょうよぉ」 「ハハッ。すまんすまん。さぁ、今日でレノー様が復活となれば色々と忙しくなるからな……。さっさと仕事を終わらせるか」 「はい!」 それから皆でいつものように朝食などの準備に取り掛かり、朝食ができた頃になるとデュークさんが顔を出す。 僕達の姿を見て少し驚いた表情を浮かべながら、僕達の方へとやってくる。 「お前達がいるという事は……薬が準備できたのか?」 「はい……」 「そうか。ゲスター様には私から報告しておく。朝食が終わり次第レノー様の元へ向かう準備をしておきなさい」 「なぁ執事長。この薬は俺とココが用意した物だ。レノー様に飲ませる時には俺も付き添ってもいいか?」 リアムさんの言葉にデュークさんは一瞬顔をしかめる。 断られるかと思ったが……意外にもデュークさんは違う答えを出す。 「そうだな……。薬の効果があるか……証人となる人間は多い方がいいか……。分かった。リアムが付き添う事は許可する。だが、大人しくしておくんだぞ」 デュークさんはそう言うとゲスター様の朝食を手にし厨房を後にする。 「よかったですね、リアムさん」 「あぁ……。いつものように嫌味を言われるかと思ったんだが……まぁいいか。これで一緒にレノー様に挨拶しに行けるな」 「はい!」 いつもと違うデュークさんに拍子抜けしてしまったが、この時の僕はレノー様との面会を許可された事を呑気に喜んでしまう。 デュークさんやゲスター様が何を考えているかも知らずに……。

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