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第7話(ジョン)
「お兄さん、ちょっとカッコイイ」
チープな香水と酒の匂いをプンプンさせた若い女が隣に座る。20代後半ぐらいか?
「一緒に遊ばな〜い?」
真っ赤なルージュ、安っぽい誘い。
俺は最近やっと慣れて来た作り笑いを返す。
「いいね」
酔った女の腰に手を回し、引き寄せた。
「もっとゆっくり出来る所へ行こう」
女を連れて裏口から外へ出て、そのまま車へ乗せた。
「名前は?」
「ジャニスよ。お兄さんは?」
「サムだ」
この仕事では必ず偽名を使う。
「サムね!宜しく!今日はラッキー!こんなイケメンに会えるなんて。この辺の人じゃないわよね?こんな田舎にあなたみたいなイケメン、なかなか居ないわ」
武器商人をやっていると、この顔は悪目立ちするが、今は便利だ。女が自らやってくる。
「ああ、出身はブルックリン。こっちには仕事で立ち寄っただけだ」
「こんな田舎に何のお仕事?」
ここはサウスダコタのラピッドシティ。ニューヨークから飛行機で22時間もかけて来た。
ラピッドシティ (Rapid City) は、サウスダコタ州西部に位置する都市。
人口は60,000人程の小さな都市だ。
「仕事は鉄鉱業だ」
「ああ、成る程。モデルとかの方が向いてそうよ」
「ジャニス、仕事は?出身はこっち?」
「仕事はライターよ。主に環境保全に関する記事を執筆してて今は自宅がオフィスみたいなものね。
出身はノースダコタ。こっちには元彼と引っ越して来たんだけど、一年ぐらいで別れちゃって、、、何となく居ついちゃってる」
「家族はノースダコタに?」
「あ〜、両親はもう死んでて、兄は多分まだノースダコタよ」
初日で良いターゲットを見つけたようだ。
条件は若い女。
そして、孤独な女。
失踪しても、誰も探さないような。
「そんな事より、どこ行くの?あなた地元じゃないんでしょ?こっちだと町外れに出ちゃう」
「ああ、良いんだ。2人きりで落ち着ける場所へ行こう」
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