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第8話(トビー)
ジョンが家を出てから24時間が経過していた。
俺は、着替えの他にゴミ袋や洗剤を入手すると掃除から始めた。
散乱する酒瓶、ビールの缶、大量のゴミを集める。
衣類はまとめてランドリーボックスに詰め込むと、近所のコインランドリーでまとめて洗濯した。
ついでにシーツも洗っておいた。
それから、シンクにいつからあるのか分からない食器を洗う。
床は掃除機をかけて、気がつくと夜が明けていたのだ。
「あれ?ジョン、いつ帰って来るの??」
現金と家の鍵だけを渡された。
持っていたスマホは売春宿で没収されていて連絡手段もない。
ジョンも居ない。
客も取らなくていい。
「俺は何すれば良いんだ?」
何年も誰かに支配されて生きていると、段々と自分の意思を持てなくなる。
長いこと食べるモノも寝る場所も、全部自分に選択肢は無かったのだ。
ジョンは、いつ帰って来るんだ?
もし、外へ出ている時にジョンが帰宅したら怒られるだろうか?
好きにしろとは言われたが、俺は相変わらずジョンの所有物だ。
なるべく捨てられないように、慎重に行動したい。
結局、怖くなって外に出れなくなった。
その日はただ、ぼんやりと窓から外を眺めてみた。
行き交う人々は、何て自由なんだろう。
自分の意思で、目的地へと一直線に向かう人々が羨ましかった。
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