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第9話(ジョン)
「サ、、、サム、、な、、なにす、、、るの」
人目に付かない場所で車を一旦停車すると、ジャニスへ筋弛緩剤の塩化スキサメトニウムの注射を素早く打った。
ジャニスは身体が自由に動かなくなり、顔は青ざめ恐怖に引き攣る。
俺はいつもの番号へ任務完了の電話を入れた。
「女を一体、手に入れました」
「お疲れ様。やっぱり、あなた適任ね」
俺の雇い主、ナディール議員だ。
「回収しに人を向かわせるから、ピックアップポイントの座標まで運んでおいてちょうだい」
「はい、分かりました」
俺は助手席にジャニスを乗せたまま、座標を確認し西へと車を走らせた。
2時間後にはピックアップポイントに到着。
ぐったりしているジャニスを担ごうと車を降りて助手席側に回り込む。
ドアを開けた瞬間、ジャニスが渾身の力を振り絞り体当たりして来た。
「だれか!た、助けて!」
絶望的に何も無い森の中でジャニスは必死に走ろうとするが、すぐに力が入らず倒れ込んだ。
「助けて、、、」
ジャニスがこの後、どうなるのか。
結末は知っている。
「すまない」
弱いモノは搾取され続ける。
ジャニスも、そして俺も。
すぐにナディール議員が寄越した傭兵達の車が到着した。カサドールという狩人をモチーフにした矢を射る男が描かれたシンボルマークを付けた男達だ。
ジャニスは涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で俺を見た。
縋るように、助けを求めた。
傭兵達はジャニスの頭に麻袋を被せると車に押し込んだ。
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