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第17話(ジョン)

「大丈夫か?」 慰め方も、優しい言葉も知らない。 「こっち向け」 顎に手を添えて、なるべく優しく顔を振り向かせた。 トビーは泣き方を知らないのかもしれない。 目を見開いて、無表情のまま、ただ涙を流していた。 そっとキスをすると、トビーはやっと俺の目と焦点があった。 「遅くなって悪かった」 トビーは無言のまま手を伸ばした。 「もう、お前を置いて行かねぇから」 力強く、トビーは抱き返してきた。 「ジョン。死にたい」  この世界は残酷だ。  弱いモノは搾取され続ける。 トビーには今まで、死を選ぶ権利すら無かったんだろう。 「安心しろ。死にたいなら殺してやる」 そういうとトビーはホットしたような顔をした。 「俺がいつでも殺してやる。約束だ」 恐らくトビーにとって死は酷過ぎる世界から逃れる手段なのだろう。 「ただ、、、お前も俺も、死んだって誰も気付かないさ。誰も悲しまない。そんなの無駄死にだと思わねーか?」 「じゃあ、どうするの?」 「この腐った世界をブッ壊す」 世界から全てを奪ってみるのも良いかもしれない。 「死ぬのはその後だ」

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