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第2話-6

「朝陽? どうかした?」 「えっ? う、ううん! なんでもない!」  あ、危ない。危ない。  思考が変態・光里に毒されている。 「そうだ、ちょっと見てもらいたいものがあるんだ」  そう言って、葵は立ち上がって棚から一枚のよれよれの便箋を取り出した。    朝陽は差し出されたそれを受け取る。手紙のようだ。    なんだ?と首を傾げつつ、文面に目を走らせたところで、目を見開いた。 「こ、こここここの手紙って!」    それは拙い筆致で葵への応援が綴られたファンレターだった。    見覚えがある。  そうだ、これは朝陽が高校生の時に書いた手紙ではないか?    怪我をして失意のドン底にいるであろう葵に、いてもたってもいられなくなって宛てたのだ。    いま読み返すと内容があまりにも稚拙だし必死さが伝わってきて赤面ものだ。 「やっぱりこの差出人、朝陽だったんだね」    宛名には住所などは書かず、アサヒとだけ書き添えている。 「な、なんでこんな昔の手紙、まだ持ってるんだよぉ」    まるで恥部を晒されたようで恥ずかしくなって縮こまっていると、葵はふんわりと優しく微笑んだ。 「この手紙のおかげで俺、立ち直れたんだよ」    葵は言う。甲子園決勝進出を逃した上、さらに野球をプロを目指すレベルでは続けることはできないと知らされ、絶望していたときだった。  一通の手紙が届いた。  一生懸命励ましてくるその拙い言葉に心を救われたのだ。 「朝陽のおかげだ。……ありがとう」  噛みしめるように呟いて、葵はぎゅうと抱きしめてきた。    力強く、筋肉の引き締まった逞しい腕に包まれる。    熱い胸板に押し潰される形で、何度も「朝陽」「ありがとう」と囁かれた。     まさか、大好きな葵に自分の言葉が届いていたなんて……嬉しさで目尻が熱くなる。 「俺こそ、ありがとう。いつもお前のプレイに励まされて、俺もお前みたいに頑張りたいって上京も決めて」 「ほんとう? 朝陽にそう言ってもらえるとすごく誇らしい」 「うん、いっぱい誇って。葵はすげー男だよ」  その言葉は紛れもない本心だったが、しかし同時に、罪悪感も溢れ出してきた。  葵は、純粋に真っ白な気持ちだけで送り主の「アサヒ」に感謝を伝えてくれている。  しかし朝陽の葵を見る目は、純粋なアコガレだけではなかった。葵の試合の録画をオカズに何度も抜いた。むしろいつもアナニーするときバットを握る葵を思い浮かべていた。  今も葵の身体の熱に、葵のむせ返るほどの雄の匂いに体が反応している。 「葵、やっぱごめん。俺はおまえに感謝されるような……」    申し訳なさで目を伏せた。その時だ。  ゴリィッ    

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