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 175センチの聖利からすると來の体躯も運動能力も羨ましい限りだ。スポーツの分野においては、どれほど鍛練しても來に遅れを取ってしまう。  しかも、來は張り合いたいわけじゃなく、聖利の対抗心を煽って遊びたいだけ。そこがまた腹立たしい。 「この後の1500Mでまた勝負してやろうか?」 「いちいち言わなくてもいい。中距離なら僕の勝ちだ」 「どうかな? 必死になって俺に勝とうとしてる聖利くんはかわいいねー」  しきりに煽ってくる。苛立つ聖利を宥めようと知樹が口を挟む。 「まあまあ、一昨日の学力テストは聖利が一位で海瀬が二位だろ? いいじゃん、おまえらうちの学年のツートップってことで」  聖利は知樹に向き直り、強い口調で言った。 「こいつと並べられるのは不快だ」  言ってから、知樹に八つ当たりしてしまったと気づき、小さく「ごめん」とつぶやいた。 「聖利はすぐにムキになるからお子様なんだよ。原沢、気にすんなよ」  來は笑ってその場を立ち去った。本当にいちいちムカつく男だ。 「海瀬もすぐに聖利をからかうから、お子様だと思うけどなぁ」  知樹が苦笑いをし、続けて言った。 「でも、海瀬が学年で一番心を開いてるのって聖利だよな」 「馬鹿なことを言うなよ。始終険悪なんだぞ」 「海瀬って、問題児っぽいし、勉強も運動もできるから近寄りがたいじゃん。中等部一年の頃はもうちょっと子どもっぽかったから、あいつを利用したいヤツが群がってたって印象。最近は、みんな遠巻きに見てるって感じ」  確かに來は迫力がある。アルファの持つ圧倒的なオーラが誰より似合い、事実その能力は抜きんでている。授業成績でこそ聖利が勝っているが、総合的な能力は來の方が上に思えてならない。そこがまた気に入らないのだが。 「でも、そんな海瀬が聖利だけは名前で呼んで近づいてくる。まあ、聖利ほど能力の高いアルファでなきゃ相手したくないんだろうってみんな考えてるけど」 「知樹にも話しかけてくるじゃないか、あいつ」 「聖利の友達だからだよ。海瀬にとってこの学校で一緒にいたいのは聖利くらいなんだよ」 「妙なこと言うなって。僕たちは真逆。まったく気が合わないよ」  聖利は知樹の言葉を一笑に付した。そんなはずない。來が聖利に心を開いているなら、もう少しまともな態度を示すはずだ。子どものようにからかってくることはせず、聖利を困らせたりしないはずだ。

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