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第28話 作戦決行
一箇所に集まらず散り散りになり、敵を蹴散らし弾を避ける。俺は黒と背中合わせになり敵を撃つ。100発100中を決める黒には劣るが確実に敵を沈めていく。
「なかなか腕を上げたな。だが弾切れだろう、リロードしろ」
「了解。暫く任せるよ」
カートリッジを新しくして装填する。黒にはタクティカルリロードをしろと何度も言われるが、そんな正確に弾丸を残せる余裕なんてない。素早く弾込めをしている間も黒は敵を仕留め楽しげに殺戮を行なっている。
愛した男の獣姿に今更驚きはしない。酷いことは今まで幾度も見てきた。レオのように嫌悪することもない。おかしくなってしまったと言われたらそうなのだろう。いつしか彼の野望を叶えることが喜びになっていた。
未だ不安と恐怖は拭えないがそれを敵に悟られてはならない。態度と表情に出ないように注意しながら再び銃で敵を撃っていく。
黒の目的はレオの首を狩ること。だが近くにその姿はない。部下に任せて逃げ出したのかと思ったその時――
「ボスを…屋上で…確認しました…」
ベストなタイミングで燈から無線が入った。レオは必ずこの場から姿を消すと知っていて予め居所を探るように命じていたようだ。何もかも予定通りということなのかもしれない。
建物の中に入り敵を撃ったが、反撃を避けきれずに頬を銃弾が掠めた。
「っう…」
「周、平気か?」
「掠っただけ。大したことない」
黒が心配そうにこちらに視線を向けてきた。もちろん隙は見せていない。羨ましいくらい堂々としている。
血は少量で致命的な怪我もなく、当たりどころが良かった。首だったら大惨事が起きるところだった。
敵の住処である以上向こうは熟知しているが、こちらは協力者からの情報を元に作成した地図が頼りなのだ。多少正確性に欠けるが信じるしかない。隠し部屋や罠があって当然。慎重に進まねば命取りになる。
「行けるか?」
「行くよ。今更引き返せないでしょう」
「大丈夫そうだな。行くぞ…」
先制攻撃でたくさんの犠牲を出した。だからこそこんな所でギブアップは許されない。逃げ出したいとは思わないが、黒の足手まといになっていないか不安だ。
先へ進む黒の後を追い上へと向かう。最上階に着くまでの道のりにトラップがたくさん仕掛けられていた。からくり屋敷かとツッコミを入れてやりたくなるくらいだ。
「いよいよ、その先に居るんだね」
「あぁ、覚悟は決まったか?後にも先にもこれで終わりだ」
「うん…黒」
黒に手を伸ばし抱き寄せて自らキスをした。場にそぐわない行動だと自覚しているがやめられない。もう触れられなくなるかもしれないんだ。そう思えば思うほど胸が締め付けられて苦しい。
黒は拒絶せず受け入れてくれている。安心しろと言われているような優しい口づけに涙が溢れた。
「周」
「黒…やだよ。離れたくない…このまま抱いて欲しい」
上擦った泣き声で最大のワガママを言った。無理なことは百も承知。背後から撃たれる可能性のある状況で急所を晒すのは無謀だとわかっていても止められない。
「周…全て終わらせる。嫌ならここで待っているか?」
「行くよ。一人で行かせられない」
どんな結末もこの目で見届ける。レオ相手に太刀打ちできないが、側にいる事くらいできる。足手まといにならない程度に援護射撃をするつもりだが、仕留められるかはわからない。未知数の相手だ。
黒が唇にキスを一つ落とし屋上へと続く扉を開いた。一歩踏み出した瞬間いくつもの銃弾が飛んできた。不意打ちの攻撃にも黒は余裕で躱した。片目で不利なはずなのにそれすら感じさせない次元の違う強さが際立っている。
黒に続くように弾を躱す。危うく当たる所だったが何とかなった。
目の前に現れたレオは取り巻きを2人連れているが、こちらは俺と黒の2人だけ。数では劣るが実力で負けるつもりはない。負けられない戦いが幕を開けた――
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