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第32話 試される結びつき

 夕食を済ませて日がすっかり沈み21時を回った頃、我妻が黒の居る寝室へと入っていった。俺はしばらくドアの前で待ってから頃合いをみて入ることにする。 何か会話している声が聞こえるが内容まではわからない。静かに音を立てないよう慎重にドアを開いた。 裸の我妻とそれを見つめる黒。嫌な汗が背中を伝う。見たくないのにどう反応するのか見届けなくてはならない。 「ねぇ…私を‥抱いて?」 「我妻‥酔っているのか?」 「素面です…ね、抱いてよ」 ベッドに寝そべり本を読んでいた黒に擦り寄るように我妻が猫なで声で誘惑している。褐色の肌に刺青の痕跡はなく、隅々まで手入れしてあるのか毛が薄く肌ツヤもいい。我妻がすでに立ち上がっているものを黒の体に擦り付けている。こんなの最後まで見ていられない。 「私の体‥こんなになってるんです…あなたが欲しくてたまらない‥」 「…‥我妻…‥」 本をベッドサイドに置いた黒が我妻の両肩を掴んだ。このまま形勢逆転して抱こうとしたら、俺は発狂して撃ってしまうかもしれない。止めたいのに約束を守り見届けないと絆の深さを疑われそうだ。 「私はお前を抱かない」 「どうして‥周がいいんですか?‥彼は上手じゃないでしょう。私の方があなたを満足させられる」 「たしかにお前に教え込んだのは私だ。だがあの時となにもかも変わった。私は周以外抱かないと約束した」 「私の体を好き勝手したのに‥あなたはあんな何の取り柄もない男…の方がいいって言うんですか‥」 我妻が発した言葉に黒が眉間に深いシワを寄せた。とても冷たい視線を向け、そして睨んだ。たしかに俺には取り柄がない。それでも黒を好きな気持ちは負けない。命惜しくない程愛している。 もう証明できたはずだ。黒は俺以外を抱くつもりはない。我妻に対してなんの感情も持ち合わせていないんだ。その証拠に彼の裸を見ても黒のは全く反応を示していない。 「わからないなら言ってやる。私は周が良い。あいつでなければ駄目なんだ。狂おしいくらいに欲しいのは我妻、お前ではない…」 「‥だったらそれを俺の前で見せてください。そしたら諦めてあなたの護衛として命をかけます」 黒の視線がこちらに向けられた。目があった気がする。‥もしかして俺がのぞいてるのバレてた?このまま中に入るべきなのか、軽く混乱する。 「周、居るのはわかっている。入ってこい」 「げ…」 名指しで呼ばれたら逃げるわけにもいかない。覗いていたと知られるのは恥ずかしいが観念しよう。 扉を開けて中に入ると二人の視線が一気に注がれる。一方は妬ましい目、一方は呆れていた目。 「黒…」 「お前…偵察とか向きそうにないな」 「ごめん‥」 「別にいい。見られて困ることはしていない。それより早く来い」 手を広げて呼ばれれば否が応でも体が勝手に動く。跨っていた我妻が退き、いつもの定位置に座る。見つめ合い唇を寄せた。深く交わる舌を貪り互いの衣服を剥ぎ取る。

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