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最終話 未来
話し合いで済ませる筈だったが、思惑と反しA国のマフィア組織は好戦的で、排除する為に来たとしか思えない。不遜なボスの態度に無表情だった黒の顔が一気に嫌悪を示したのを俺は見逃さなかった。
かくして銃撃戦が始まり、攻防を繰り返し徐々に勝敗が明らかになっていった。沢山の犠牲の末に手に入れるものは明るい未来か悲しい結末か。誰にもわからないまま刻々と時が流れる。
俺は敵を攻撃し沈めていく。黒の射撃の腕は鈍っておらず、確実に敵を堕としている。敵の攻撃もさることながらこちらも負ける気がしない。なぜなら燈がスナイパーライフルで援護射撃をしてくれているからだ。彼の命中率は黒に引けを取らない。絶妙なタイミングで繰り出し、また一人と敵が落ちていった。
優しい笑みを浮かべていた日々の裏側で黒は用意周到に抗争への準備を進めていたようだ。武器の量を見たときは驚いた。ロケットランチャーやライフル、手榴弾にグレネードランチャーなど多種多様な物がはるばる海を越えて持ち込まれた。俺の視界の外で着々と行われていたのだ。
燈がA国に来たのはてっきり観光だと勝手に思っていたが違った。ラストアイランドの情勢が落ち着き、代理に総括を任せて加勢するためにやって来たのだ。自分の家族と組織を守るために命がけで海を越えた。彼の覚悟は相当なもので、誰にも覆すことはできないだろう。
各々の野望の為に積みあがる遺体の山。その先に何が生まれどんな未来が訪れるのか誰にもまだわからない。それでも後ろを振り返る時間すらなく、前に進むしかない。
たとえどんな未来が待ち受けていたとしても足を止めない。理想の為に黒は全土にまで攻撃の手を進め、影響を与えていく。地図を真っ赤にすりつぶし一つの国を作り上げるように…。
黒の生きた証を刻むように歴史に悪名を残し、2度と人が争わないように反面教師として語り継がれるだろう。俺はおそらくその歴史の中でただ一人、彼に連れ添い銃を敵に向ける守護者として映し出されるだろう。破壊の王の臣下として、愛した唯一の人として…
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