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第8話
僕は自分のお腹の中に今まで感じたことがない違和感があった。それもそのはずだ。あんなに長い時間をかけて将斗さんに洗浄されたのだ。何とも言えない妙な感覚になるのは当然だ。だけどそれは痛みとか、不快感とか、そういうのじゃないんだ。僕が知らなかった自分というか、何か新しい感覚が備わったような、なんとも言えない感覚が。
まるでそこに意志でもあるみたいに、将斗さんを切望しているような。
「将斗さんの好きにしていいよ」
思わずそう言葉が零れた。でも半分は僕の頭が考えて話した言葉じゃないような気がしてならない。
「いいのか?」
将斗さんの言葉にまるで腹筋が内側から引っ張られるように引き攣れた。やっぱりもう一人の僕が応えたがっている。暑いわけでもないのに額からいく筋も汗が流れ落ちる。もう自分の答えは分かっている。
でも怖い。本当はまだ怖い。なのに将斗さんの逞しい強張りを全部受け入れたい。将斗さんの腕に抱きしめられて一つになりたい。
「そっと……ね。痛くしないで」
そう言葉にすると、僕の両目から涙が零れた。熱い。熱い涙だった。
「多分、無理だ。航を壊してしまうかも知れない」
将斗さんの顔が僅かに曇った。
でもそれはきっと将斗さんの中の葛藤なんだ。僕の意思は確認できた。でも痛くない訳がない。なのに自分は今それをしようとしている。そんな将斗さんの葛藤が僕には嬉しかった。
「僕、将斗さんのためにガマンする。ううん、ガマンできるよ。お願いそうして!」
また涙が零れた。
将斗さんは僕の下瞼にそっとキスをした。そしてその唇は僕の鼻先に触れ、唇へと辿り着いた。さっきよりも熱い口づけだった。ようやく鼻で息をすることが出来るようになった僕は、もういくら長く熱いキスも平気だ。それに嬉しい。
将斗さんは唇が離れないようにしながら、僕の両脚を自分の腕でゆっくりと持ち上げていく。僕の蕾は上を向かされ、将斗さんを正面から迎え入れる格好になった。そこに将斗さんの熱い怒張した肉棒がゆっくりと擦り付けられる。
「ああっ」
僕は思わずだらしない声を漏らした。
将斗さんは唇を離すと、僕の両方の足首を掴み、高く持ち上げた。
こっそりと姿を隠していた僕の蕾は、ついに将斗さんの眼前に曝け出された。僕は恥ずかしくて目を閉じた。
「い……いや……」
次の瞬間、将斗さんは僕の蕾に自分の唇を重ねた。
「あっ、だめ……汚いよ!」
将斗さんは瞬間、唇を離した。
「汚くなんかない、俺の大事な大事な航の……」
再び将斗さんの唇が僕の蕾を捕らえた。今度はもっと強く、ビチャビチャと音を立てて舐め回した。僕は気を失いそうになりながら、将斗さんの愛撫を受け止めた。僕の口元からはだらしなく声が漏れる。将斗さんの舌の動きに全身を引き攣らせながら。
将斗さんの口が離れた瞬間、カッと熱い痛みが走る。将斗さんが熱い屹立する肉棒を一気に押し込んでくる。
僕はぐっと口を閉じ、奥歯を噛み締めた。
「航、力むな。余計に痛くなる。ゆっくり大きく深呼吸をするんだ」
僕は目を開けた。そこには愛おしい将斗さんの顔があった。真剣な眼差しで僕を見つめる将斗さんの頑丈な肩があった。僕は今こそ将斗さんと一つになるんだ。今こそ本当に繋がるんだ。その思いだけだった。
僕の深呼吸に合わせて将斗さんの硬く太さを増した肉棒が突き入れられていく。痛い、その度に腹筋が緊張し引き攣れた。でもその怒張した将斗さんの分身を受け入れているという現実は、僕を柔らかく包み込んでくれた。満たされた幸福感のようなものが僕を落ち着かせてくれた。
メリメリと音がしそうな感覚が僕の背中を反らせていく。もう声を殺してくれる理性もなりを潜め、将斗さんの動きに合わせて卑猥な声を上げていく。
次の瞬間、奥の方で今までとは全く違う痛みが突き上げる。
「痛い、将斗さん痛いよ!」
へその脇の辺りが痛い。涙が止まらない。痛い、痛い……違う。何かが違う。将斗さんは慎重な様子で腰を捻っている。あっ、そこ、そこ! 痛いのに、痛いのに気持ちがいい。
これ、どうなっているの? 何かが行き止まりを知らせているのに、痛いのに、でも変な気持ちだ。全身が粟立つ。思わず身体を仰け反らせ、低く長い呻きを上げていた。
将斗さんの息が荒い。額からも汗が止めどなく流れ落ちている。苦しいの?
「将斗さんも痛いの?」
「航の締め付けが強くて、根元が痛い」
僕は焦った。自分のことばかり考えていて、将斗さんのことをちゃんと見ていなかったからだ。ごめんなさい。
僕は一生懸命に後門の辺りの力を抜こうと息を吐いた。必死に息を吐いた。するとぐっと将斗さんの肉棒が深くのめり込んできた。
「将斗さん、お願いゆっくり……! もう奥に当たってこれ以上入らないかも……」
するとグチュっと音がした。いやそんな気がしただけかも知れない。将斗さんの怒張したモノがもう一段階奥へ入った。頭まで走り抜けるような痛みを感じ、大きな声を上げた。だが次の瞬間に全身がガクガクと震え、経験したことのない痛みと同時に快感が僕の身体を走り抜けた。何かに感電したのかと思った。
口元がだらしなく開いていたのか、涎が垂れているのが自分でもわかる。
将斗さんは僕の背中に手を回し、僕の身体を引き起こした。まるで膝の上に抱っこされている子供のようだ。
でも違う。僕の身体の中には将斗さんの硬い肉棒が突き立てられたままだ。深い、物凄く深いところでビクビクと脈打つのがわかる。僕の全身は小刻みに震えが続いている。でも辛くはない。むしろ……。
「航、俺のが全部入ってるのが分かるか?」
僕は閉じかけた瞼を必死で持ち上げ。将斗さんに答えようとした。でも言葉にならない。声が出ない。
「一番深いところにいるよ、俺は。航の一番深いところに」
将斗さんの声は僕を震わせた。僕の大好きな将斗さんの声は僕の中のもう一人の僕を操る。
将斗さんの唇はピンと張りつめた僕の乳首を捕らえた。僕はビクンと強く痙攣し、首を仰け反らせた。その身体の僅かな動きで僕に挿し込まれている将斗さんの怒張の先端が僕を深く抉った。
「ああーっ、だめ……僕、死んじゃう……」
自分でも訳のわからないことを口走っている。
「航、動かすぞ」
グチョグチョと妙な音を立てて将斗さんが律動し始めた。目の奥で稲妻が走った。今のは痛みじゃない。もっと別のものだ。
将斗さんはそっと僕をベッドに倒し、また腰を動かし始めた。
「あああああーっ、将斗さんダメ! そんなに動かしたら僕は、変になっちゃう!」
そうだ、変になっちゃう。だって想像していたものとは全然違う。もっと苦しくて、ずっと我慢していなきゃいけないことだと思っていた。
でも違うんだ。もっともっとして欲しい。もっともっと突き上げて欲しい!
「将斗さん、もっと……」
「航? 気持ちいいのか? もっと突いていいのか?」
僕は返事をする代わりに、頬を何度も将斗さんの大きな胸に擦り付けた。何度も何度も。
ドスッドスッと尻に腰を打ち付けられながら、僕は何度も意識が飛びそうになった。でもまた強い律動に反応する度に意識が戻り、快楽に身を委ねた。そしてまた意識が遠くなっていく。
気がつくと、どうやら僕は将斗さんの広い胸に頬を当てたまま眠っていたようだ。将斗さんは僕の横で安らかな寝息を立てている。
僕はまだ痺れている身体をそっと起こした。蕾の辺りがジンジン疼くけれど痛みはない。良かった。きっと将斗さんが気遣ってくれたんだ。でも何かがまだ挟まったままみたいな、妙な違和感がある。
僕はおそらく失神したのだ。多分。だって記憶がないのだ。
せっかく将斗さんに抱かれたというのに、肝心な最後のあたりの記憶がない。
(何てことだ。初体験だったというのに記憶がないなんて……こんなの悲しすぎるだろ?)
将斗さんの寝息が変化した。目を覚ましたのかな?
「将斗さん?」
「今何時だ?」
「今は……夜中の三時」
「こっちへおいで」
そう言うと、将斗さんは腕を広げて僕の身体を引っ張った。動くとまた蕾にジンジンと響く。
「将斗さん、僕はもしかして気を失ってたの?」
「ああ。俺がイキそうになって、かなり乱暴に腰を動かしたら、最後に気を失ったよ」
僕はカッと顔が熱くなった。
「痛みはあるか?」
「よくわからない。だって最後に何がどうなったのか覚えていないんだ」
将斗さんはガバッと身体を起こした。まるで鳩が豆鉄砲を食らったように目をまん丸にした。
「お前さ、もしかしてあんなにイヤらしく悶えながら抱かれていたことを覚えていないのか? まいったな」
「やめて下さい、そんな言い方! 覚えてないのは多分最後の方だけです」
僕は将斗さんにちょっとだけ頭にきた。
「お前さ、多分、脳内モルヒネがかなり分泌されるタイプなんだろうな。覚えていないってことは、自分が十回以上も射精したのも覚えてないの?」
僕はすっと全身の体温が一気に下がった。
「じゅっ、十回以上?」
「いわゆるトコロテンってやつだな。オチンチンに触らないであんなに何回もイクなんて、びっくりしたぞ。俺が深く突く度にビシャって。おかげでどこをどう擦り上げれば航がイクか、ようく学習させてもらったけどな」
僕はシーツを撥ね退けてベッドから飛び出ようとした。でも無理だった。腰から下はまるでベッドに根を下ろしたように自分の意思では動かせなかった。僕は諦めて横になった。将斗さんに背中を向けて。
「怒ったのか? 無理するな。まだゆっくり横になっていろ。俺もまだ起きあげれそうもない。四回もイッたのは俺も初めてだ。まだ腰が立たない」
何てことだ!
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