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第8話

side悠 動画を投稿し、千世家のリビングでのんびりと寛ぐ。 座っているのはふかふかの座り心地の良いソファだ。 「お疲れ様」 千世が二人分の紅茶を持ってきて、俺の隣に腰を下ろす。 「ありがと…」 「うん…はぁ…」 千世が少し陰った顔をしてため息をつく。 「ため息なんか珍しいですね…」 「え、あー、うん…」 どこか遠くを見つめる千世の表情には、不安と悲しみ、それに誰かを想う愛しさを感じた。 「なんか辛そうですね…」 「え、そう見える?」 千世は俺の言葉に少し困った様な顔で笑う。 「うん」 「どんな風に?」 言うかどうか戸惑っていると、はっきり言って欲しいと見つめられた。 「んーと…はやく逢いたい、でも苦しい…みたいな…」 続きを言えと目で訴えられる。 「自分の大切な気持ちを諦めてる感じがする…」 「……」 無言で千世と見つめ合う。 「はぁ…相変わらずのエンパスだな…」 「いや、エンパスじゃないし…」 「てか、俺の話ばっかじゃなくてお前のこともきかせろ!」 「えー」 俺の言葉をきいた千世がとても苦しそうな顔をしたのがすごく気になったが、話題を変え話は流れてしまった。 「えーじゃなくて、悠の恋バナききたい」 「え…」 「いい人いないの?」 「うーん…」 いい人かぁと考えていると昨日逢った『sound Tree』の彼のことを思い出した。 (なんで、あの人のこと…)

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