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第1話

「んっ、はぁ…はぁ…くっ…」 ベッドの上である人物を思い浮かべながら、自身の中心を上下に動かしていく。 誰にも言えないこの気持ちを、こうすることで吐き出すしか方法が見つからない自分が嫌になる。 それでも自分を高める手の動きは止まってくれない。 「あっ…、航太…くっ…イクッ」 先端からドクドクと熱いものが飛び出すのを、反対の手で受け止めた。 全身の力が抜け、脱力感と罪悪感の両方がどっと押し寄せてくるのは毎回のこと。 いつまでもこのままでいいわけないとわかっていても、どうすることも出来ないのが現実だ。 「なにやってんだろ…」 手の中に吐き出した白い液体を洗面所で洗い流しながら、鏡に映る自身と目が合う。 その目は真っ赤で、今にも涙がこぼれ落ちそうなほど潤んでいた。 高校の寮の同室で生活をしている梶原朋也と柳本航太は、いわゆるクラスでも一番仲の良い友人で、何をするにもだいたい一緒に行動することが多い。 気がつけば隣にいて、気がつけば目で追いかけていて、気がつけば好きになっていたというのが自然な流れ。 自分の気持ちに気づいてしまえば抑えることが出来わけもなく、どんどん好きが大きくなっていくだけだった。 航太は野球部に所属していて、朋也よりも帰宅時間が遅いこともあり、3時間ほど部屋に一人になる。 普段は勉強をして過ごしたり、お気に入りの漫画を読んだり、ゲームをしたりして過ごしているけれど、時々ふと自分の行き場のない気持ちに耐えられなくなって部屋に残る航太の匂いを捉えながら自身に触れるようになっていた。 そしてその行為が終われば、こうして虚しさだけが残る。 それでも朋也はまた、何度も航太を思い浮かべながら自分の中心へと手を伸ばし、言えない想いと一緒に込み上げてくる熱いものを吐き出してしまうんだ。 ある日、航太はいつもより早く野球部の練習が終わり、前日のゲームの続きを朋也とやりたいと急いで寮の部屋へと戻る。 ドアの前までやって来ると、そーっと近づいて驚ろかしてやろうと思い立ち、持っていた荷物を静かに床の上へと置いた。 そして音を立てないように部屋のドアノブに手を掛けてゆっくりとドアを引く。 中の様子が見えるくらいのちょっとした隙間から、朋也がどこにいるのかを視線だけで探すけれど、机には座っていないし、テレビの前にもいない。 少しだけ視線を動かし、朋也のベッドへ視線を移すと、航太の全神経がストップした。 ーウソだろ…ー 目の中に飛び込んできたのは、ベッドの上で壁に凭れながらマスターベーションをしている朋也の姿だった。 頬を赤く染め、顔を歪めながら自身を擦っている様は、部活終わりの航太には刺激が強すぎる反面、一瞬で体に反応が現れる。 ダメだとわかっているのに朋也から目が離せなくて、脳裏に焼きつくくらいその行為を見つめていた。 「航太…」 聞こえてきた声に一瞬息が止まる。 朋也が口にしたのは、間違いなく自分の名前だった。 「あっ…、はぁ…航太…はぁ…」 限界が近いのか朋也の息遣いが荒くなり、アソコを擦る手の動きも速まっていく。 体が凍ったように動かなくて、その様子をただジッと見つめることしか出来ない航太だけど、自分を想いながらしているであろう朋也に興奮しているということは自覚できていた。 体の中心が熱を持ち、硬く立ち上がっているからだ。 「んっ、はぁ…もう…イクッ、あっ…」 朋也がビクンと体を震わせたと同時に、行為をしていた方とは反対の手で先端を覆いかぶせると、全ての欲を手の中で受け止めていた。 航太は最後まで見届けると、そっとドアを閉めてその場から駆け出し、誰もいなくなった野球部の部室の奥にあるトイレへと駆け込んだ。

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