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第5話
ユニットバスに男二人で入るのは少し狭苦しく感じるけれど、真っ暗な部屋ではなく、明かりの点いた場所で改めてお互いを見合うと、何だか妙に照れくさい。
流れるシャワーが温まると、まずは朋也の手に受けていた航太の液をキレイに洗い流していき、次に航太のお腹にベッタべたについているものを流していく。
「やっぱ恥ずかしいね…」
恥ずかしさからか、浴槽の端に三角座りをして俯き加減で朋也がポツリと漏らす。
そんな朋也の前に視線を合わせるように航太も屈むと、髪をクシャクシャと撫でた。
驚いたように朋也が顔を上げて視線がぶつかる…。
「あっ…の…」
「もしもまたしたくなったら、一人でするんじゃなく俺も一緒にしよ」
「けど…」
「俺は、一緒にしたい」
「だって…そんなことしたら…俺…」
きっと朋也はその先の言葉を言うことを躊躇うとわかっている。
言葉にしてしまうことで軽蔑されないように、嫌われないようにとでも不安に思っているんだろう。
そんなことあるわけないのに…。
「俺はもっと朋也のこと知りたいって思ってるんだけどな」
「俺だって…もっと航太のこと知りたい」
「だったら、俺とその先に進んでみるのもありじゃない?」
「それってどういう意味…?」
朋也の切れ長の目が丸くなって航太を見ている。
きちんと伝えよう。
曖昧な言葉じゃ気持ちは伝わらない。
「俺はさ、朋也が隣にいるのが当たり前で、話して笑ってそういう時間が楽しくて、でも話さなくなったことでわかったことがあるんだ」
「なにがわかったの?」
「俺にとって朋也がどういう存在かってこと。正直、意識したことなんてなかったから、好きとか嫌いとか考えたこともなかったけど、今日初めて気づいた」
一気には伝えず、一度息をつく。
それでも朋也から視線を逸らすことはせず、真っ直ぐに見つめたままだ。
「朋也が可愛いって初めて気づいたんだ」
「もう…、嘘ばっか」
「嘘じゃないし…。朋也はさ、俺のことどう思ってる?」
「どうって…それは…」
航太の問いかけに言葉を詰まらせる朋也は、耳まで真っ赤になっている。
そんな姿がやっぱり可愛くて…
朋也が自分の膝の上に乗せている手をそっと握った。
「ねえ、航太…? 俺もうドキドキしっぱなしでどうしていいかわかんないんだけど…」
「それは俺も一緒。ほらっ」
航太は握っている手を胸へと運び、自分が今どれくらいドキドキしているのかを伝えようとした。
「すごい…。俺と同じくらいドキドキしてる…」
「だって、普段から自分のことこんなにオープンにさせることないし」
「確かに。いつも真面目で人のことよく見てて自分よりも他の人優先って感じだもんね」
「そんなことないし…。ただ、今日はちゃんと朋也と向き合いたいって思ったから」
「うん…」
「まあ、こんな感じじゃちゃんと向き合ってるのかわかんないけど…」
「ううん…。恥ずかしいけど、嬉しかったよ。それに、俺は…俺はね」
ギュッと握っている手に力が入ったのを感じて、航太も同じように握り返す。
「ずっと心の中で願っていたんだ。この想いが届きますように…って。航太を好きだって気持ちが伝わりますように…って」
真っ直ぐに伝えられた朋也の想いに、胸がドキッとした。
照れ笑いをしながら俯こうとする顔を、咄嗟に握っていた手を解いて両手で包み込む。
「だったらその願い、ちゃんと届いたよ。俺も朋也のこと好きになっちゃったから」
「航太…?」
「大好きだよ」
「うん、俺も…」
二人の距離が近づいて、そっと唇が重なった。
初めてのキスは、朋也の流す涙で甘酸っぱい味がした。
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