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「千尋っ!」
「わっ、佐伯さん?」
勢いよく開けた扉の先、自室で目を丸くする千尋に、息を整えるのも忘れて駆け寄る。
「どうしたの?」
「は⁉︎ どうしたのって……」
あの結城翼の相手、しかもレイプ物の撮影をさせられたって、俺の耳に届いたのはわずか30分前。撮影終了から既に2時間も経過した頃だった。
性格最悪、鬼畜外道で有名な結城にレイプ。どう考えたって泣き叫ぶ千尋の姿しか浮かばず。取り掛かっていた仕事もそのままに、急いで車を飛ばして来たのだが、当の本人は至って普通。コーヒー片手にのんびりゲームでくつろいでいる始末。
「え……お前、撮影は……?」
「ああっ、それか! 佐伯さんに連絡も入れないで勝手にごめんなさい!」
「い、いや……そうじゃなくて……」
慌てて頭を下げる千尋を宥めようとした所で、やっとある物が目に入った。机の上の、見覚えのない携帯電話と、飲みかけのもう一つのコーヒーカップ。
「コレ……誰の……」
「あれ? 千尋のマネージャーさんですか?」
おじゃましてまーす、と間延びした声でシャワールームから顔を出した男。
「あっ翼!」
ツバサ。翼。結城翼…?
こいつが、
そう反応する前に、パタパタと嬉しそうに駆け寄る千尋の姿に、一瞬思考が停止する。
え、何? 千尋? 何なの、その恋する乙女みたいな反応……え?
「あのね、この人がさっき話した……」
「あー、サエキさん?」
「うんっ、そう、佐伯さんっ!」
おいおい、マジかよお前ら、
嘘だろ、やめてくれ、
「どうも。結城翼です。千尋の彼氏やってます」
「それはオメデトウ。佐伯です。千尋のマネージャーやってます」
あはは、やべぇ、どうしよう、
顔面ブン殴りたくてたまんない、
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