23 / 118
2
音もバイブも無いまま、ただ暗闇に光る画面上のみで着信を知らせる携帯に手を伸ばす。
『あ、やっと出たっ』
「……ミキか、何だよ……」
『つばさ冷たぁいっ! 今どこにいんの~?』
遊び相手の1人である馬鹿女の、舌っ足らずな甘い声に舌打ちしながら起き上がる。
横で小さく身じろいだ千尋に目を向けるが、またすぐに聞こえてくる規則正しい寝息。
『また女の所? 早く戻ってきてよーっ』
「んー……お前もういらねぇわ」
『は?』
綺麗な寝顔……。
千尋の目にかかる前髪を掬ってやると、その手に小さくすり寄ってくる。
『マジ意味わかんないんだけど。何? 本命でも出来たわけ?』
あくまでも優位に立ちたいらしい。小馬鹿にするように笑う女に苦笑しながら、千尋の髪を撫でて、
そして、そのまま掴んで乱暴に引いてやる、
「本命? 馬鹿じゃねぇの?」
「んっ……」
わずかに眉根を寄せ、それでも目を覚まさない千尋にクスクスと笑いがこぼれる。
「新しいオモチャ見つけたから、」
まだ何かを喚く声を無視して、ばいばい、と電話を切る。ミキか。身体は良かったんだけどまぁいいや。それに、性欲ならこいつで全部補えるから問題もない。
「千尋、」
お前最高だよ。顔も声も身体も感度も。撮影の時の泣き顔と叫び声なんか、マジで最高だった。
言うこと聞く奴なら誰でもいい。お前の中身もどうだっていいし、興味も無いけど。
「お前は、俺の為に、ただ泣き叫んでりゃいいよ」
壊れたら、捨てるだけ、
ともだちにシェアしよう!