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番外編③・神話から半年後、クロードがよちよち歩きできるようになりました。6

「ゼロス、もうそろそろツンツンは終わりにしてあげてください」 「ええ~、おもしろいのに~」 「クロードがプルプルしてます。もうすぐ泣いてしまいそうです」 「ん? あ、ほんとだ。え~んってしそう」  ゼロスがクロードの顔を覗き込みます。  クロードがプルプルしながらゼロスを見たかと思うと。 「にーたま! にーたま!」  バンバンバン!  怒りのバンバンです。ゼロスが逃げるとクロードもよちよち歩きで追いかけてバンバンバン! 「わああ~っ、クロードがおっかけてくる~!」 「にーたま! あうあ~! あーあー!」 「ブレイラ、クロードがバンバンしてくる~!」 「ああ、二人とも落ち着いてください。ハウスト、クロードを捕まえてください」  ゼロスが私の足に抱きついてきました。  よちよち歩きのクロードはハウストが捕獲してくれます。 「あうーっ。あーあー!」  今度はハウストにバンバンバン! はなしてーと訴えているよう。 「クロード、暴れるな」 「あぶぶぅ~っ」  クロードは全身をよじって大暴れ。  じたばたさせた手足がハウストの顔に当たっています。ハウストはとても煩わしそうな顔になってしまいました。  大変なのに、……ふふふ、ああいけませんね、大変なのに笑ってしまう。  とても騒がしくなってしまった麗らかな午後。  私はイスラ、ゼロス、クロード、そして最後にハウストを見つめます。  騒がしいけれど幸せなひと時、私の大好きなひと時でした。 ◆◆◆◆◆◆  翌朝。  ハウストとゼロスが本殿の廊下を歩いていた。  朝食の時間になってもイスラが姿を見せないのでハウストが呼んでくるように頼まれたのだ。それを聞いていたゼロスも「ぼくもいく!」とついて来たのである。  魔王が朝食に来ない息子を呼びに行くなどあり得ないことなのだが、そこはブレイラ。そういうあり得ないお願いをし、またハウストも聞いてしまう。賢帝と称される魔王だが王妃には弱かった……。 「あにうえ、なにしてるんだろうね~」 「さあな」 「おねぼうさんだね」 「イスラが寝坊……。それは考えられないだろ、お前じゃあるまいし」 「そうだよね~。…………ん? ちちうえ、どうしてそういうこというの! ぼくはおねぼうさんじゃないでしょ!」 「一人じゃ起きられないだろ」 「おきようとおもってるのに、さきにおこしにくるの」 「お前な……」  ハウストは呆れた顔でゼロスを見下ろした。  そうこうしているうちにイスラの部屋に到着する。  だが部屋の扉が僅かに開いていて、隙間からイスラが見えた。  ハウストとゼロスが目にしたもの、それは…… 「ブレイラとお揃いか、悪くない」  そう言って得意気に鼻を鳴らすイスラ。  鏡の前でキリッとした顔を作り、フッと笑う。それは自信に溢れたパーフェクトな笑みだった。  そう、ハウストとゼロスが目撃したのは鏡に映った自分を満足気に見ているイスラだった。  イスラの髪型は片方の前髪と横髪が編み込まれたスタイルになっている。昨日ブレイラがセットした髪型だ。  どうやら朝の身支度の時に自分でしたようだ。慣れない編み込み作業に時間はかかったようだが、元々なんでも器用にこなせるので完璧な出来栄えである。  実際イスラにとても似合っている。整った容貌が前面に見えて魅力倍増だ。 「ブレイラも嬉しそうだったな。俺とお揃いが嬉しいのか」  昨日のことを思い出しながらイスラが上機嫌に呟いた。  だがその姿は誰が見ても……浮かれていた。  扉の隙間から見えてしまったイスラの姿に、ハウストとゼロスは無言で顔を見合わせる。 「…………」 「…………」  無言で頷き合うハウストとゼロス。  これはイスラの見てはいけない姿な気がした。  イスラに見つかる前に二人は立ち去ろうとしたが、――――カタンッ。ゼロスが扉に触ってしまう。 「ああっ!」 「こんな時にっ」  ハウストとゼロスは焦った。  もちろんイスラが気付かないはずがない。  ハッとして二人が振り向くと。 「なにをしている」  イスラの低い声。  ゼロスは青褪めた。扉の隙間からイスラがギロリッと見ていたのだから。 「あ、あ、あにうえ……」  ゼロスは恐怖に腰を抜かしそうになったがハウストの足を掴んで持ちこたえる。  逃げなければ。ゼロスの本能が警鐘を鳴らしていた。 「ぼ、ぼく、もどるね。じゃあねっ……」  焦りながらもゼロスは素早く立ち去ろうとしたが、その前に。 「ゼロス」 「は、はいッ!」  ビクッ! ゼロスは背筋をピンッと伸ばした。  呼び止められてしまっておそるおそる振り返る。  イスラはゼロスを見据えたまま編み込みした頭を指差した。 「問題でもあるか?」 「ありませんッ!」 「さすがブレイラだ。俺に似合い過ぎている。そうだな」 「そのとおりですッ!」  即座の返事。  ゼロスを鍛えたのはイスラなだけあって本能的に逆らえない。  そんな兄弟の力関係にハウストは苦笑してイスラを見た。  イスラもハウストを見て目を細める。 「俺に最高に似合ってるだろ」  当然のことのように言い放ったイスラ。  イスラはブレイラとお揃いの髪型がとても気に入ったようだ。 「……お前、そういうとこあるよな」  これさえなければ完璧なんだろうな、というのは口にしなかった。さすが魔王、賢明な判断である。  こうして魔王一家は今日も相変わらずの一日を過ごすのだった。 終わり ――――――――― 小説を読んでくれてありがとうございました! 神話本編と番外編にお付き合いくださって本当に嬉しいです。ブクマとかハートとかリアクションとかメッセージとかとても励みになっています! リアルタイムで一緒に読んでてくれてる感じがして寂しくないんですよ(笑) 応援してくれて本当にありがとうございます! 神話本編がきつい展開になったので、番外編は明るく笑える話しを中心に書きました。家族や兄弟の楽しい日常とかそんな感じのほのぼのも。 これにてweb公開の神話番外編も終わりです。 他の番外編書き下ろしはあと四作あります。そちらは電子書籍と同人誌にてよろしくお願いします。 ※そのうち一作はTwitterのプライベッターで掲載予定です。 さて次作は新作『三兄弟のママは結婚五年後も魔王様と』です! 番外編でイスラが髪型を変えたり、クロードが「にーたま」と呼んだりしましたが、それは次作からイスラ(23歳)、ゼロス(15歳)、クロード(5歳)になるので変化の前兆みたいな感じです。 そして新作連載前にはエブの人物紹介一覧も更新する予定です。 成長するのでキャラクター紹介に画像を増やしたりして整理しておきたくて。 新作はすぐに連載を開始できると思います。 連載開始前はTwitterでお知らせしますね。 それと執筆状況もTwitterで呟いているのでぜひフォローお願いします! なお、『三兄弟のママは神話を魔王様と』は推敲作業に入りしだいweb非公開になるのでご注意ください。非公開にする前にまたお知らせします。 神話本編と番外編を読んでくれてありがとうございました。 今回のでイスラ(15歳)、ゼロス(3歳)、クロード(0歳)は最後ですので私もたくさん書けて楽しかったです。 また次回からもよろしくお願いいたします!

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