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第16話「寝たふり」*蓮
すう、と静かな、寝息が聞こえる。
オレが寝たふりをしてから、どれくらい経ったか。
樹は、本当に眠ってるようだった。
……無防備すぎ。
一緒に寝よう、なんて、言ってはみたけれど……。
本当に来てくれるとは思ってなくて。
実際布団に入ったら動揺が半端なくて、寝たふりで凌いでしまった。
「――――……」
何を思ったのか、オレの頬に触れた樹。
ほんと……何を思ったんだか。
寝たふりばれなかったのが、奇跡……。
可愛い。寝顔。
――――……オレ。
お前、好きすぎて、ヤバいな。
樹。
…どこかで、拒否してくれないと、
なんかオレ、止まれなくなりそうな気がする。
寝るのオッケイなんか、するなよな……。
そっと頰に触れて。
指で、その唇に、触れた。
やわらか……。
まさか男にキスしたいと思う日が来るなんて。
謎すぎて、戸惑いは、まだかなりある。
戸惑いはあるけれど、衝動は、確か。
ゲームでした、ディープキス。
10秒なんかじゃなくて。
思うままに、樹にキスしたいなんて。
触れるだけのキスでいいと思ってたのに。
ただ優しく触れたくてしてた軽いキスだったのに。
一度して、真っ赤な樹の顔を見てしまって。触れた舌の感触がやばくて。
あーなんか……。
ほんと、やばい。
そっと指を離して。
こっちを向いて寝てる樹の顔を眺めて、眠れないまま、
時だけが、過ぎていった。
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