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第46話「可愛すぎて」*蓮
樹に告白して、恋人に、昇格した。
朝早く目が覚めて。
そこからもう、ずっと、浮ついてる。
目が覚めた樹に、唇にキスしたら止まらなくなりそうで、頬にだけキスして。
山田に、「横澤を襲ってる」とか言われたり、
森田に、「開き直った」と言われたり。
「樹を最優先」という言葉にも、もう、本当のことだから別に良いかと認めたら。
朝から色々突っ込まれ。
……このままじゃ早々にばれそうだなとも思うのだけれど。
バレたらバレたで、それでいいかなと、思ってしまう自分。
――――……相当浮かれてる。
こんなに、人を好きになるなんて、思わなかった。
独占欲とか、庇護欲とか。
半端なくて、自分でも、ちょっと、引く。
迷路に入って、しばらくして、樹の声がした時。
その時、うまく会えた時も。
なんでこんなに嬉しいかなと、不思議に思う位。
嬉しくて。
樹が、ふわふわ笑うのが、際限なく可愛く思えて。
……ヤバい。
なんとなく、森田は、察してるのかなーとも思いつつ。
でもたぶん、言いふらすとか、騒ぎ立てるとかはしなそうなので、なんならバレてもいいかもと思いながらも、面と向かって認めると樹が照れまくりそうだし。……森田が余計に樹で遊びそうで、少しイラっとするので、はぐらかすことにした。
「蓮」
寿司屋について、駐車場で車から降りた時、樹に呼ばれた。
皆が少し先に歩いていったのを見て、樹が話し始める。
「……あのさ……森田さ……今朝からさー……」
「うん?」
「……なんか バレそうで」
「んー。……察してるけど、確信じゃないからちょっかいかけてるって感じかなー。良いよ、どっちでも」
「どっちでも?」
「バレても別にいいよ」
「……いいの?」
「森田、ばらしそうにはないし。……樹が、もう隠せないって判断したら、別に少し位話してもいいよ」
「――――……うう。 頑張る」
「だから頑張らなくていいって」
クスクス笑ってしまうと、樹は、ふと見上げてきた。
「――――……バレない方が……良いかなとは、思うんだけど……」
「ん?」
「……バレても良いって、蓮が言ってくれるのは……なんか嬉しい。オレとの事、絶対隠すとかじゃないんだな、と思って……」
「――――……」
なんで、そんな可愛いこと、少し離れた所に皆がいる所で、言うかな。
……触れないじゃん。
と思いつつも。
ついつい手を伸ばして、樹の頭を撫でてしまった。
樹が撫でられた所をとっさに手で触れてるのもなんか可愛くて。
抱き締めたくて、困るんだけど、と思いながら、寿司屋の入り口に居る皆のもとに急いだ。
寿司屋では2つのテーブルにわかれてすわった。
樹は、目の前。隣に佐藤がいる。オレの隣には、山田。森田が女子三人と座ってる。
「……やっぱ隣、樹じゃないと、緊張するー」
佐藤がそんなことを言ってる。
「でも、全然ちゃんと運転できてたでしょ?」
「こいつ超安全運転すぎて、左折とかめっちゃゆっくりすぎて」
山田がくすくす笑うけど。
「いいじゃん。都会だと後ろから何か言われるかもだけど、ここならそんな急いでる人もいないし。練習にはいいよね?」
樹の言葉に、佐藤がうんうん頷いてる。
「山田、運転中は、佐藤に何か言うのやめろよな?」
樹が山田をちょっと睨む。もっと言ってと佐藤が言ってくるのを、樹はクスクス笑ってる。そんな、樹を見てると、こちらまでふ、と笑ってしまう。
……和む。
佐藤が樹を大好きすぎる気がするのは、ちょっと引っかかるけれど、まあでも、好きなのも理解できる。
「……なあ、加瀬」
「ん?」
急に山田がオレに視線を向けて、まっすぐ名を呼ぶ。見つめ返して、答えると。
「お前さ、付き合ってる奴居ないって昨日言ってたよな」
「……まあ」
確かに昨日はそんな事言ったけど……。
「あのさ、ぶっちゃけさ、あの中の女子で、可能性があるとしたら、誰?」
「可能性?つきあうとかそういう可能性?」
「そう」
そんな質問に眉をひそめていると。
樹と佐藤が、じ、とオレを見つめてくる。
つか。
樹の前でそんなの考えるとか、無いな。
速攻終わらせるに限る。
「……誰とも無いけど?」
「……ええ、マジで?なんで?」
「何でって言われても……オレ、好きな奴は居るからさ」
「……え、そうなの? それ聞いたっけ?」
「いや言ってねーな。でも、まあ…… そうだから」
「えー。そうなんだ……」
「えーて何だよ。そもそも何であの中からな訳?」
「いや。別に……」
山田が、はー、と息をついてる。
それに首を傾げつつ、目の前の樹と佐藤が、ちょっと微妙に顔を見合わせてるのを見て。そこでようやく、ああ、と、気づく。
やたら話しかけてられたり、隣になったりするかなとは思っていたけど。
……坂井かな。
で、樹も含め、他の男らはそれを何となくは知ってる、て事かな。
つか、もしかして、女子も知ってるのか?
「好きな奴以外、全然興味ないから……あの中だけじゃなく、無いかな」
「……分かった」
山田の答えに少し肩を竦めてると。
「次なに食べる? 取るから言って。それか頼む?」
佐藤が言ってくる。
樹がメニューを見ながら、あれとこれと話してる。
「蓮、メニュー見る?」
「ん。サンキュ」
「うん」
樹からメニューを受け取りながら、一瞬見つめあって。ふ、と笑む。
……なんかもう。樹と知り合ってから、この数か月。
樹の事だけが、今までにない位、誰よりも可愛すぎて。
他の奴とどうにかなるとか。
全く考えられないんだよなー……なんて思う。
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