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第52話◇

「もう肉とか野菜、食べないなら、お好み焼きにするけど」  蓮が言うと、皆がお願いしまーすと、口々に言う。  ふ、と笑って。蓮が余った野菜を手に取った。 「樹、これ、切り刻みに行こ」 「うん」  一緒に、ログハウスに戻って、キッチンに立つ。  手を洗って、包丁とまな板を出した蓮が、ふ、とオレを見た。 「みじん切り、やる?」  言われて、うん、と頷いた。  手を洗ってから、まな板に置かれる野菜のみじん切りを始めてみる。  みじん切りって言っても。  切り方これでいいのかな?  蓮を見上げると。 「ん?」  くす、と笑む蓮。 「これでいいの?」 「いいよ、それで。大丈夫」 「切り方も?」 「んー 包丁貸して」 「ん」 「……こう、の方が切りやすいかな」  蓮がやって見せてくれる。 「分かった」  包丁を返してもらって、今蓮がやったように、切ってみると。  確かに切りやすい。 「なんか料理が出来そうに見えない?」 「ん、見える」  クスクス笑う蓮に、嬉しくなって、とんとん切っていると。 「樹」  蓮の手が、オレの頬に触れた。  蓮の方にそっと引き寄せられて、そっとキスされる。 「――――……れん?」 「……ごめん、可愛いから」 「…………」  一度キスして離れた蓮に、包丁をまな板におしつけたまま。  背伸びして、ちゅ、とキスすると。  蓮が、ふ、と笑った。 「包丁一回置いて?」  言われて、包丁から手を離すと、蓮の方をまっすぐ向かされた。  真正面で、蓮を見上げる。 「樹、なんでこんな、可愛いんだろ」 「――――……蓮も。可愛いよ?」 「え。オレ可愛い?」 「うん。いつもカッコいいけど。……たまに、死ぬほど、可愛い」  言いながら、クス、と笑うと。 「オレ、可愛いとか言われるのは樹が初めてだな……」 「カッコいいは死ぬほど言われてきた?」  きっとそうだろうなーなんて思って、クスクス笑いながら聞いたら。 「カッコいいは良く言われた。女子に」 「だろうね。 カッコイイもんね」  分かる分かる、とうんうん頷いていると、蓮はふ、と微笑んだ。 「可愛いは、樹だけだな……」  言った蓮の腕がオレの肩にかかって。  引き寄せられて、じっと見つめあう。 「樹にとって、オレ、可愛いの?」 「――――……うん。たまに、すごく可愛い」  可愛い、というか。  いや、いつもカッコいいんだけど……。 「カッコいいけど…… 可愛いし――――…… あ、愛しい?て感じ?」 「――――……」  蓮は、きょとん、として。  それから。  瞬間、ちょっと赤くなって。  ふい、とそっぽを向いた。  わー……。  ……思わず、出てきた言葉を言っちゃったけど。  オレより先に、蓮が照れるとか。  ……可愛すぎる。  ていうか。  蓮が照れるとこっちまで、もっと照れちゃうし。 「……調子、狂う」 「――――……ん?」 「樹と居ると、なんか――――……オレの調子が狂う」 「……ん?……それって――――……嫌、なの?」  すり、と頬に触れられて。 「――――……な訳ないじゃん」  ゆっくり、キスされる。  そのまま頬にキスされ、また唇にキスされる。  ……蓮は。  …………分かってたけど。  …………ほんとに、キス魔だな…………。 「蓮……切って、戻らないと」 「ん、分かってる」  一度、きゅ、と腕の中に抱き締められてから。  また最後にキスされて、離された。   もう。なんか。  ……自分が全部、ぽかぽかあったかい。

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