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第60話「居ようね」

 皆が後から出てきて、服を着て、髪を乾かしてるのを、蓮と二人でマッサージチェアに座って、なんとなく眺める。  百円で二十分。安いねって言って、蓮と始めた。 「二人して何してんの」  皆、着替え終わると面白そうに近づいてきて、気持ちいい?と笑う。 「うん。あと五分位かなぁ。やる?」  聞くと皆が頷くので、オレが椅子から動くと、一緒に蓮も、椅子からどいた。 「強弱とか、場所選べるよ」  隣のリモコンで教えてあげると、めっちゃ楽しそうに弄り始める。 「んー。でもあれだね。元々そんなに凝ってないから」 「あぁ。よく分かんねえかも」  オレが言うと、連も頷いて、二人で顔を見合わせて笑ってしまう。 「いつかあれが気持ちいいとか、なるのかなぁ?」  オレがそう言うと、なるのかもな、と蓮が笑う。 「オレら、先に外行って、飲み物飲んでる」  蓮が皆にそう言うので、オレも荷物を持って、蓮と大浴場を出た。  まだ女子も出てきてないし、知らない家族連れが居るだけ。  飲み物を買って、窓際の椅子に腰かける。  庭がライトアップされてるのを見て、綺麗だね、と言うと。 「さっきのさぁ」 「ん?」 「マッサージチェアとかが気持ちいいなあとかさ」 「うん」 「そう思うような時も、樹と居たいなーと……言ってて思った」 「……」  パチパチと、瞬きが増えて。  それから、どう我慢しても、微笑んでしまう。 「うん。居れたら、いいね――――……ていうか……居ようね」  一旦言った言葉を、言い換えると。  蓮はクスクス笑って、頷く。 「居れたらじゃなくて、居るからって言おうと思ってた」  そんな風に言う連。  ……大好きなんだけど。  ほんとに。なんて思っていたら。  マッサージが終わった皆が出てきた。  一気に騒がしくなる。 「どうだった?」 「もともと凝ってねーからよくわかんないけど、なんとなく気持ちよかった」 「あ、おんなじこと、樹と言ってた。凝ってからやりたいよな」  蓮が山田の言葉に笑いながらそう返してる。  皆が飲み物を買ってから、蓮とオレの椅子のそばに適当にばらける。 「女子まだ?」  森田が聞いてくるので、うん、たぶん、と答えた時。  タイミングよく、女子三人が、大浴場の暖簾の下から戻ってきた。 「あー、ごめんね、遅かった?」 「オレらも今さっき座ったとこ」  そんなやり取りをして、しばらく皆で休憩所でまったり。  そのうち、そろそろ戻るか、と蓮が言って、その声に、皆が立ち上がり始めた。  ゆっくりばらばらと歩き始めた時だった。 「加瀬くん」    坂井が、オレの隣に居た蓮を、呼んだ。  少し緊張してる、みたいな声に。なんとなく悟る。  オレは、蓮と視線を合わせてから少しだけ頷いて見せてから。  先に歩き始めて、前にいる皆のところに追いつく。  蓮はきっとオレに対して、少し気まずそうな顔をしていたけれど。  ……なんか不思議と――――……そこまで嫌じゃなくて。  坂井は蓮に告白するって決めたのかな……と、ぼんやり思う。  多分、これから先も蓮のことを好きな人は、いっぱい居ると思うから、こんなことで、揺らいでもしょうがないと思うんだよね……。  素敵だもんなー、蓮。    蓮が、告白してくる人より、オレと一緒にいたいなーって、思ってくれるような人で居られたらいいけど。  ……努力がいりそう? 「樹、少し離れたところでさ、花火やっていいって聞いた?」  森田がオレを振り返ってそう聞いてくる。 「え、そうなの? 花火あるの?」 「すぐ近くのコンビニに売ってるって。買いに行こうぜ」 「うん、行こう~」 「佐藤、運転頼む」 「えっ。加瀬は?」  佐藤が焦って蓮を探すと、森田がちょっとだけ振り返って。 「なんか今はあれかなって感じ。とりあえず買い出しだけ。樹、佐藤の隣乗ってやって」 「あ、うん。佐藤、いこ?」  振り返って、蓮と坂井の様子を見た佐藤も、ん、と頷いてる。  森田は、さっき、坂井が蓮のとこに来た時居なかったのに。  鋭いなあ……。  感心してしまう。  ……これは。もう。  既にほぼ、バレてるのかなあ、と思ったりする。    

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