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第62話◆番外編◆ クリスマス
◇ ◇ ◇ ◇
本編とは別。
2021/12/31……キャンプから帰ってきてすぐクリスマスだったら
という感じでお読みくださいヾ(*´∀`*)ノ
◇ ◇ ◇ ◇
今年のクリスマスは土曜日。
イルミネーションが綺麗な街に、二人で買い物に出てきた。
イルミネーションスポットは、もうクリスマス前に空いてる内に見に行ったので、今日は買い物だけ。
家で、蓮とクリスマスパーティーをすることになってる。
料理とケーキは、蓮が作るって張り切ってて、それの買い物は蓮。
オレは部屋を飾る担当になったので、そういう雑貨とかが売ってるお店に。
お互いお任せってことで、別々に買い物をした。
一緒に暮らし始めて、初めてのクリスマス。
……蓮と、そういう意味で、付き合い始めて、初めての。
特に蓮、すっごく張り切ってる感じがしたから、楽しみ。
一時間後。
蓮と待ち合わせした場所に近づくと、蓮が見えた。
あ、と思ったら。
なんか女の子たちに話しかけられてる。
……知ってる子? 思ったけど、蓮の態度見てると、違う感じ。
行った方がいいのか、終わるまで待ってた方がいいのか……オレが話に入っても、何もならないし……どうしよ。と思ってたら。
ふと、視線をあたりに向けた蓮が、オレを見つけた瞬間、ふわ、と微笑んだ。
多分、何かしら断って、女の子たちを置いて、オレの所に軽く、駆け寄ってきてくれる。
「何で止まってんの」
クスクス笑われる。
「なんか、話しかけられてたから、どうしたらいいんだろと思って」
「何で? 来てよすぐ」
クスクス笑って、優しくそう言われる。
「最初道聞かれて、教えてあげたんだけど全然離れないから、あー、そういうのだったのかって思ってたとこだった」
「そっか」
「彼女と待ち合わせですかって聞かれて、とっさに彼女ではないけどって言っちゃったから、良くなかったのかも」
「彼女ではないもんね……」
クスクス笑ってしまうと、蓮はちら、とオレを見下ろす。
「彼女、ではないけど。恋人、て言えばよかった」
「――――……うん」
頷いて、ふ、と笑んでしまう。
優しい言葉。
……嬉しいなあ。
そうなんだよねぇ。
……恋人、なんだよね、オレ達。
嬉しい気分に浸りながらマンションに帰って、オレは飾り付け、蓮は食事作りを手分けして開始。
卓上用の小さなクリスマスツリーを買ってきたので、それを最初に飾った。ちゃんと光るし、飾りもちゃんとしてて、すごく綺麗だなーと思ってたら、蓮が「いいな、それ」と笑う。
「だよね」
椅子に腰かけて、真正面から見ていると、蓮がキッチンから離れて、隣に立った。
「綺麗だな」
「うん」
しばらく見つめて、ふ、と笑う。
背中に手が触れて、蓮を見上げると、ゆっくり重なってくる唇。
「――――……あ。ケーキ焼かないと」
蓮が名残惜しそうにオレを離して、苦笑しながらキッチンに戻っていった。
オレもクスクス笑ってしまいながら、飾り付けの続きに入った。
◇ ◇ ◇ ◇
蓮の作ってくれた料理はほんとにおいしくて。
「お店開いてね」
とまた言ってしまった。
「考えとく。店開かなくても、樹にはずっと作るから」
クスクス笑うのも、いつも通り。
「料理って、センスなんだろうね……」
「オレの作る味が、樹はもともと好きなんじゃない? 好みもあるじゃん?」
「……うん。そうかもしれないけど。でもどんどん美味しくなるから」
「樹がおいしそうに食べるとこ、思いながら作ってるから。当たり前かも」
……なんかすっごい嬉しいかも。
「……ありがと」
それだけ言うと、蓮はクスクス笑って、ん、と頷く。
「照れてる?」
少しだけ頷くと、蓮は、ふ、と笑んでオレを撫でる。
「じゃあ、樹がめちゃくちゃ喜ぶとこを想像して作ったケーキを食べさせてあげようかな」
そんなことを言いながら、蓮が立ち上がる。
「樹、これ、開けといて」
「うん?」
受け取ったビニールの中の、可愛い飾りを見て、ふ、と笑ってしまう。
サンタクロースとトナカイの可愛い砂糖菓子。
「さすがにそれは買ってきた」
「すっごい可愛い」
「あったほうが、クリスマスケーキっぽいだろ」
「うん」
蓮が運んできてくれた、チョコケーキの真ん中に、サンタとトナカイを並べる。
「すっごい可愛い」
「だろ。これが一番もこもこしてて可愛かったんだよな」
……なんか、蓮みたいな人が、可愛いモコモコしたサンタとトナカイを見て、可愛いって思って買ってる姿の方が、可愛い。
なんて思ってしまって、クスクス笑ってしまう。
「何そんな、笑ってんの」
蓮が苦笑してる。
「似合わない?」
「んー。似合わないっていうか……蓮が、可愛い」
クスクス笑うと、ちょっと嫌そうに眉を顰めるから、なんか、余計可愛い。
「写真撮ろう、蓮」
「ケーキの?」
「ケーキのっていうか、蓮とオレと、ケーキの」
「……いいけど」
ぷ、と笑う蓮。
カウンターにカメラを置いて、うまく入るように並んでから、一度離れてタイマーでシャッターを押した。
撮れた写真を確認して、蓮に見せると。
「いいんじゃない? サンタとトナカイも可愛いし。……樹も可愛いし」
クス、と笑う蓮。
「オレのことはいいけど……ケーキ可愛い」
あと、蓮もカッコイイ。オレも――――……なんか、すごく幸せそうに見えるな。
自分の写真を見て、そんな風に思ってしまうとか。そんなことって、あんまり、無い。
「切っていい?」
「う、ん……」
「ん?」
「……なんか切るのもったいない……」
言うと、蓮は笑いながら、オレを見つめる。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど……食べれないから、切るよ?」
「うん……」
「写真撮ったし」
「うん。いいよ、切って?」
「ん」
クスクス笑いながら、蓮がケーキを切り分けていく。
「あ、オレコーヒー淹れるから、樹、料理の方、流しに片付けちゃってくれる?」
「うん」
「で、お皿にケーキのせて?」
「うん」
二人で立ち上がって、片付け開始。
「コーヒー、カフェオレがいい?」
「うん。ちょっと洗えるもの洗っちゃうね」
「後で一緒でもいいけど」
「でも今やることないし」
ケーキのお皿をテーブルに出して、流しで洗い始める。
ちょうど片付いた頃に、コーヒーが淹れ終わって、二人でテーブルに座りなおした。
料理がなくなったので、卓上のクリスマスツリーを、近くにひっぱってきた。
「電気消してくる」
蓮がそう言って、部屋の電気を消してくると、なんだかすごく幻想的。
「……食べてみて、樹」
「うん」
「ん」
フォークで口の前にケーキを運ばれて、一瞬ためらいつつも。
ぱく、とくいついた。
「どう?」
「……美味しい」
「ほんと?」
「うん。食べてみて、すっごく美味しいから」
「ん」
食べた蓮が、ふ、と笑う。
「良かった。いっぱい食べて」
「うん」
自分のスプーンでパクパク食べていると、蓮がクスクス笑いながら、「樹」と差し出してくる。
「ん」
ぱく、と食べて、もぐもぐした瞬間。
ちゅ、と頬にキスされた。
「かーわい……」
クリスマスツリーのキラキラの中。
蓮が、優しく瞳を緩める。
「――――……」
なんだかな、もう。
……何も、答えられないんだけど。
口の中のケーキ、飲み込むのも、なんか、緊張する。
「樹、おいし?」
「うん。おいしい」
「……また食べたい?」
「うん」
そっか、と笑う蓮。
「……蓮?」
「ん?」
すぐ近くの蓮を見上げる。
「……蓮のごはんも、ケーキも、ずーっと、食べたいよ?」
「――――……」
蓮にじっと見つめられて、見つめ返す。
「食べさせてね?」
「ん。了解」
「手伝うけどさ」
「……ん」
クスクス笑った蓮に、引き寄せられて、ぎゅーと抱き締められる。
「樹」
「ん?」
「……大好きだよ」
「――――……ふふ」
むぎゅ、と抱きついて。
「オレも」
と言うと、優しい、唇が触れてくる。
クリスマスの夜。まだ始まったばかりなのだけど。
なんだかとっても、幸せで。
蓮と居れて。
ほんとによかったなあ、と、思ってしまった。
-- Fin --
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