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第13話

ドキン、ドキンと、身体中が心臓になったみたいに、激しく脈打つ。 震える身体と、ゴクリと鳴った喉は、緊張の証か。 「ッ!」 しゅるっと火宮がネクタイを解いた音が、やけに大きく耳に響いた。 緊張感が限界を超えて高まる。俺は、このまま緊張し過ぎて爆発するんじゃないかと思った。 「翼」 「っは、は、はいっ!」 どうしよう。俺も自分で服を脱いだ方がいいんだろうか。 「クスッ、そう固くなるな」 「はいぃっ!」 うわ、声が思い切り裏返った。 楽しげに笑っている火宮の余裕が恨めしい。 「おまえは俺に、ただ身を委ねていればいい」 ぐいっと引き寄せられた腰と、近づいてくる美貌。 「今度は目、閉じろよ?」 ガキ、と笑った火宮の顔が、焦点が合わないほど間近に寄せられ、俺は反射的にギュッと目を瞑っていた。 「んっ…ぁ…」 2度目の、火宮とのキス。 初対面のときにいきなり奪われたそれと違って、長くて深い。 「ッ?!」 な、なにっ?舌!舌が入ってきたーっ。 息苦しさに喘いだ瞬間、ぬるっと入ってきた火宮の舌が、口の中をぐるりと舐めた。 「んっ、ふっ…」 勝手に鼻にかかった声が漏れてしまう。 歯の裏をなぞられ、びっくりして逃げようとした舌が捕まる。 やばい、なんだこれ、気持ちいい…。 チュク、ジュルっと音を立てながら舌が吸われ、ゾクゾクと背を駆け上がるのは、紛れもない快感。 「ふぁっ、んぁ…」 がくっと腰から力が抜け、俺は慌てて火宮の腕にしがみついた。 「ふっ」 目を眇めて、火宮が意地悪く微笑んだ。 その瞳に映る俺の顔は、蕩けて欲情が揺れている。 「感度がいいな」 「っ…火宮さんが、上手すぎるんだ」 「褒めてるのか」 恥ずかしさからぶっきらぼうになってしまう俺にも、火宮は余裕で楽しそうに笑っただけだった。 「うわっ?!」 いきなり、両足が掬い上げられ、俺は咄嗟に火宮の首に腕を回した。 これっていわゆる、お姫様抱っこってやつー? 男の俺は、いつか彼女ができたとき、これをしてあげるのは自分だと思っていたけど。 まさかされる側になるなんて。 体格差を痛感すると共に、今から女のように抱かれるんだってことを思い知らされる。 「っ…火宮、さんっ…」 今さら、引き返せないことなんか分かってる。 借金はチャラになったし、俺はこうして生かされているし。 「っ、ふ…」 大丈夫、分かってる。覚悟はちゃんとできている。 「さて、所有の証を、たっぷりとこの体に刻み付けてやる」 物扱いをする冷たい台詞と裏腹に、ベッドにそっと下ろされた体は丁寧な優しさを感じる。 「おまえの全てが俺のものだ」 妖しく光った火宮の瞳が、真っ直ぐ俺を見下ろしている。 「んっ…」 ゆっくりと頭を頷かせた瞬間、伸びてきた火宮の手が、首元のネクタイの結び目にかかった。

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