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第17話※
選ぶ?何を?
わけがわからなくなりかけていた頭に、わずかな思考が戻る。
「このままの方が、身体に負担はないだろう」
「ふぇ…」
「だが、正面なら、身体は辛いだろうが、おまえの願いは叶う」
何の話?願いって…。
「今日だけだ。この先は、俺の嗜好に合わせてもらう。だが今日だけ、おまえの好きなように抱いてやる」
「ッ!」
なるほど、わかった。
俺は、本当は火宮が好き勝手にできる物なのだ。
だけど初めてだから。こんな風に高級ホテルに連れてきてくれて、俺が望むように、人として抱いてくれると言っているんだ。
こうして肌を晒してくれたのも、もしかしてきっと…。
「前がいい…。顔…向き合って、抱いて欲しい」
迷わず答えが口に出ていた。
火宮が言うように、きっと初めての身体に、正常位はキツいんだろう。
それでもそれ以上に、心が辛い思いをしない方がいい。
初めての思い出を、紛い物でも綺麗なものとして残したい。
「ありがとうございます…」
火宮には、何のメリットもないだろう気遣い。
それでも与えてくれることに感謝をしながら、俺はそっと枕を手放した。
「わかった」
表に返された身体の中心で、弾ける寸前で放置されていた性器が揺れている。
硬さも角度も保ったままのそれは、解放されたくてウズウズしている。
「翼」
わー、反則。
目を眇めて、欲情をあらわに微笑む火宮の顔は、壮絶な色気を放っていた。
嘘でいい。腰にくる優しい声でそんな風に名を呼ばれたら、何もかもがどうでもよくなるから。
そこに愛がなくとも。この行為に想いが乗ってなんかなくても、そう、勘違いできたらそれでいい。
ありがとう。
「火宮さんっ…」
キスを強請って手を伸ばした俺に応え、火宮の唇が俺のそれを覆ってくれた。
「ッ、ひ」
力が、抜けた瞬間。
一呼吸も間違わずに、火宮の熱が突き立てられた。
指が3本入ったとしても。十分なほど解されたとしても。
そのサイズが比べ物にならないほど大きな火宮の性器に、感じるのは苦しいほどの圧迫感と引き裂かれるようなピリッとした痛み。
「っ、くっ…」
「息をちゃんとしろ。俺を見ろ」
固く閉じてしまった唇と目を指摘され、俺はその声に素直に従った。
「ふっ、はっ…」
「そうだ。そのまま、俺だけを見ていろ」
「んっ…あぁッ!」
ズッと腰を打ち付けられ、痛みと苦しさの中、俺は必死に火宮の綺麗な顔だけを見つめた。
「ハッ…クッ…」
「あぁッ、ンァ」
やばい。なんて色っぽい顔をするんだろう。
中の狭さにか、少し苦しそうにギュッと寄った眉も。
火宮は火宮で痛みを感じているんだろう、額に浮かんだ光る汗も。
全てが火宮の魅力となって、むせ返るような色香を漂わせている。
「ンァ、あぁッ」
やっぱりイケメン、と火宮に見惚れてしまった瞬間、強張っていた身体から力が抜け、痛みの中にある快感に気付いてしまった。
「あっ、あぁッ、あンッ…火宮、さっ…」
「ハッ、いい顔をする」
火宮の熱い吐息と、楽しげな声。
「アッ、あっ、やっ…あンッ、んァッ」
グチュ、グチュッと突き上げられ、慣れてきた後ろから、大きな快感が湧き始める。
「ふっ、ハッ、筋がいい。素質があるどころじゃない」
「ンァ…なにっ?やぁっ、ソコッ…」
ガンガン揺さぶりながらも、先ほど指で見つけられたポイントを間違いなく擦り上げていく火宮の熱い楔。
「あぁッ、ァッ、やっ、ダメ…もっ、だめぇ…」
湧き立つ快感に頭も身体もグチャグチャになって、はち切れそうに膨らんだ性器が限界を訴える。
「ひ、みや、さっ…もっ、でっ…」
ハラリと額に落ちた前髪が、目を眇めて俺を見る顔が、上がる呼吸が、快楽に顰められる眉が。
全てが色っぽくて、全てが性感を刺激する。
「だ、めっ…イッ、クッ…」
「イけ」
とどめを刺すように、火宮の動きが激しくなる。
強く、速く、奥の方まで激しく突かれ、打ち付けられる腰に身体が震えた。
「あっ、あ、あぁッ、アァーッ!」
「クッ…」
派手に、中心が白濁を吹き上げた。
互いの腹の間を汚したそれが、タラリとシーツに垂れていく。
ググッと中で一層膨らんだ火宮を感じたと思ったら、緩く綻んでいく火宮の顔が見えた。
なっ…イキ顔、ヤバすぎ…。
色っぽいなんて言葉じゃ言い表せなかった。
なんとも言えなく壮絶で妖艶な表情に、後ろがキュゥッと締まってしまった。
「煽るな、馬鹿」
「ど、っちが…」
小さな笑い声とともに、ズルッと後ろから出ていく火宮を感じたのを最後に、俺の意識はスゥッと闇に溶けて消えた。
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