82 / 719

第82話※

さん、に、いち…。 全裸になって、四つん這いになって、お尻を高く突き出して。 震えてしまう内腿を叱咤しながら体勢を保って。 ぜろ…。 「……?」 待てども暮らせども、後ろに突き立てられる熱が来ない。 「翼」 ソロリと尻を撫でられ、ピクンと身体が震える。 「っ…」 一体何を躊躇っている? 小さく左右に振った首は、俺の固い決心だ。 「早く…」 わずかに腰を揺らして、火宮の熱を強請る。 決めた覚悟が鈍ってしまわないうちに。 ここへきて焦らされるのはもう辛いだけでしかないから。 「翼…」 苦しそうに響いた声は気のせいか。 「覚悟はいいな?」 もちろん。 緩く顎を引いた瞬間、蕾にピタリと火宮の熱を感じた。 「っ…」 「後悔するなよ」 ゆらりと震えた背後の気配と、耳に届いた火宮の囁き。 火宮は今、どんな顔をしているだろうか。 いつものように意地悪く唇の端を吊り上げて、眇めた目でサディスティックに俺の背中を見下ろしている? 「しませんよ」 「そうか」 ギリッと鳴った歯の軋む音は火宮のもの? 何故そんなに歯を食いしばった。 一瞬湧いた疑問は、次の瞬間に与えられた想像を絶する痛みで霧散した。 「い゛っ…」 「くっ、キツ…」 メリメリと、音が聞こえるかと思った。 なんの愛撫も受けないままのソコに、火宮の滾った熱が押し込まれる。 固く窄んだ蕾の中へ、襞を割り開いて進んでくる。 「いっ、いっ…た、ぁあ、あぁ…」 この世のものとは思えない痛みに、口が空気を求めてパクパク喘いだ。 ぶわっと目から溢れた涙は、苦痛からの生理的な雫。 「力を抜け。俺が痛い」 背後から与えられる自己中心的な命令。 その残酷さにホッとする。 「っ、ごめ、なさ…っ、あ、ぁぁ、っぁ」 「っ…」 「ひぃぁっ…っ、う、く…」 グッと無理に腰を進められ。ピリッとした鋭い痛みが入り口に湧いた。 「いぃあぁっ…痛ぁぁ…」 切れた、と本能的に察した。 ズルリとわずかに滑りのよくなった動きは、流れる血のおかげか。 「っ、く…」 「いぁっ、ひぁっ…た、ぁぁぁ…」 痛みと苦しさの中、なおも進められる火宮の性器が内臓を押し上げる。 前を触りもしてくれない、後ろのいいところを探りもしてくれない、強引で残酷な火宮の熱。 「うぁっ、あっ、あっ」 それでいい。 「ひぃ…い、たい…うぁぁッ」 下手に感じさせられたら、せっかくの思惑が無駄になるから。 「っ、ん。全部入ったぞ」 軽く息を上げた火宮が、ふと腰を引き寄せた。 「飛ぶなよ?」 意地悪な響きを宿した声が届いた瞬間、ズッ、ズッと抽挿が開始された。 「うぁぁっ!ひぃ…あぁぁッ」 目の前がチカチカするような激痛。 身体が真ん中から頭の先まで裂けてしまいそうな痛みが走り、背が仰け反る。 爪を立てたシーツに、グシャリと皺が寄る。 「クッ…締め過ぎだ」 食いちぎる気か、と揶揄う声が、遠くに聞こえる。 「あぁぁっ、痛いーっ、ひぃっ…」 「クッ…いい声だな」 前についていた両手の手首を掴まれ、グイッと後ろに引っ張られる。 肩がギシギシと痛んで、反射的に上半身を起こす。 「痛っ、たい…あぁ…んッ」 「っ、また締まったぞ」 肩甲骨と肩甲骨がぶつかるほど強く両腕を後ろに引かれたまま、繋がった中心部を抜き差しされる。 パンパンと肌がぶつかり合う音が響き、強引な腰使いに身体がガクガクと震える。 「あぁっ!いぁぁっ!んァッ…」 仰け反った喉から、悲鳴に近い嬌声が漏れる。 仰向いた顎が天井を指し、ぼんやりと開いた目は見慣れない照明器具を捉える。 「っ…」 「あぁっ、あンッ…いぁっ…」 痛みしかない中で、ナカを苦しいほどに擦られる。 荒く思いやりの欠片もない身勝手な律動に、それを望んだはずの心から涙が溢れる。 「翼」 「っ、はっ…火宮っ、さっ…」 「こっちを向け」 中心を繋げたまま、火宮が強引に俺の身体を回転させた。 「ひっ、いやぁぁっ!」 ズリッとか、ズチュッとか、ナカを掻き混ぜる淫らな音が響き、内壁が抉り取られるかと思うような感触がした。 痛みに朦朧としてくる視界の中に、向かい合う形になった火宮の顔が見えた。 「ふっ、これで勃たせるのか?淫乱」 「っー!そんなはずっ…」 痛いだけなのに。 言われてそっと視線を落とした俺の性器は、わずかに頭をもたげていた。 「嘘だ…」 「まぁいい。好きにしろ」 ふん、と嘲笑を浮かべ、今度は両足の太腿にかかった火宮の手。 グイッと乱暴に足を左右に開かれ、股関節が悲鳴を上げる。 「いっ…、ひぁぁっ…」 痛みを逃すために、自然と腰が浮いてしまう。 まるで自ら尻を差し出しにいっているような格好が、辛くて嫌でたまらない。 なのに火宮の熱に穿たれているというだけで、熱くなってくる中心はなんなのか。 「好き者。どM」 嘲笑うかのように響いた火宮の声が、心に刃を突き立てる。 「あぁ、もっと…」 もっともっと傷つけて。 酷い言葉と酷い行為で、俺をズタズタに傷つけて。 「クッ。ほら。足りないか?こうしてくれる」 ズッ、ズッと乱暴にナカを突かれ、仰け反った喉に噛み付かれる。 「いッ…」 「ふっ、まだ締まるか」 「いぁっ、あっ、あっ、あンッ…」 「翼」 「いぁぁっ…ひぁ、ンッ、あっ、ん」 むせるような血のにおいの中、痛みしかない律動が繰り返される。 ガクガクと揺さぶられる身体と、身勝手に好き放題犯される後孔が痛い。 それでもこれが、俺の望んだこと。 きっと一生忘れない、残酷に犯された記憶になる。 「ひぃぁっ、痛い、痛いーっ…」 パンパンと肌がぶつかり、ズチュ、ズチュとナカを酷く穿たれる。 「いぁぁ…ひ、みや、さ…っ…」 「っ…」 「火宮さ、っ、ん…」 痛みはとうに限界を超え、意識がぼんやりと霞んできた。 「火宮、さ…ん…」 ふらりと持ち上げた手で何を求めたんだろう。 火宮に向かって伸ばした両手が、足から離れた火宮の片手で、グイと頭上に縫い止められてしまった。 そっか。俺から触れることを許してくれないんだ…。 「翼…」 ズンッ、と一際強くナカを穿たれ、ぐっと下唇を噛み締めた火宮の顔が見えた。 あぁ、どうして…? どうしてそんなに辛い顔をするの? ギュッと寄せられた形の良い眉は、いつもの火宮のイキ顔じゃない。 「くっ…」 ドクッ、とナカの火宮が震えた感触がした。 結局俺は、触れもイかせもさせてもらえないまま、限界を超えた苦しみと痛みの中、スゥッと意識を手放した。 「翼…」 そっと髪を撫でてきた優しい感触は夢? 優しく唇に触れた温かく柔らかい感触は…きっと幻。

ともだちにシェアしよう!