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第245話※

っ…。 この状況を見て、眉ひとつ動かさずに室内に入ってくる真鍋がすごい。 俺は両腕を頭の上にあげて縛られているし、お腹の上には今まさに吐き出したばかりの白濁が飛んでいる。 指を抜いて身体を起こした火宮は白衣を羽織って聴診器なんかをかけているし、半裸どころかほぼ全裸な俺の姿は丸見えだ。 俺たちが何をしてたかなんて一目瞭然で。 なのにまったく意に介さず、シラッと火宮を振り返っているその態度が天晴れだ。 だけど。 「っ…火宮さっ…」 真鍋がいくら気にしなくても、こんな姿を晒している俺の方はたまらない。 せめて布団をかけて隠すとか、とにかくこの姿をどうにかしてと、ジタバタと足をもがかせた。 「ククッ、早かったな」 「えぇまぁ。パソコンと書類はこちらでよろしいですか?」 奥の机にさっさと荷物を置いている真鍋は、もうなんなんだ。 火宮も火宮でパチンと手袋を外して、スルリとベッドを降りていってるし。 「っ…火宮さん…」 そりゃ、真鍋には手当てとか言って、あそこを見られたことも触られたことだってあるけどさ。 だからってこんな露骨にナニしてましたという状況が恥ずかしくないわけがなくて。 あまりに何事もないかのように平然と会話を始める2人に、俺は1人、ジワリと涙が滲んできたのを感じた。 「も、やだぁ…」 いくら俺が悪いことをしたからだったって…。 火宮だけならともかく、真鍋にまでこんな姿を晒すのは耐えられない。 「火宮さぁん…」 助けてよ。隠してよ。 せめて手だけでも解放して。 「ククッ、さすがに苛め過ぎたか」 ようやく意地悪の手を緩めてくれる気になったのか、火宮がサッとティッシュで白濁を拭き取り、布団をバサリと掛けてくれた。 「だがまだ仕置きはこれからだぞ?」 「っ…」 「それからこちら、ご依頼のお道具類です。それと、途中で先生からこちらもお預かりしています」 淡々と無表情で、ベッドのサイドテーブルに置かれた紙袋と…。 「え…」 待って、それ、何。 銀色のトレイに乗った、包帯?ピンセット?細長い棒みたいなのは何。 注射器…は分かるけど、その隣の銀色の変な形の器具は一体…。 「ふぅん、先生もよく分かっているな」 な、何を…。 なんとなく、あの医者も火宮の同類なのかな、って気はしていたけれど。 並べられた器具の用途はきっとろくでもない。 「それでは私は、これで失礼いたします」 「あぁ。仕事は…適当に取りに来い」 「かしこまりました」 「夏原は?」 「本日は裁判が目一杯入られているようでして、明日以降、ということです」 「分かった」 では、と優雅なお辞儀をして、ドアに向かう真鍋が、1度だけ室内を振り返った。 「あぁ、会長」 「なんだ」 「白衣姿もお似合いです」 ふわりと口元を緩めた真鍋が、それだけ言って部屋を出て行った。 「………」 火宮がものすごく変な顔をしている。 「ったく、小舅が…」 「えっ?」 俺にはさっぱり真鍋が分からない。 『調子に乗って苛め過ぎて、愛想を尽かされるな、か』 「火宮さん?」 何をブツブツ呟いて、苦笑しているんだろう。 「ふっ、おまえは俺色でいいんだったよな?」 「へっ?」 な、なんだ急に…。 「さて、始めるか」 仕置き、と意地悪く笑う火宮に、ゾクッと寒気がした。 「刃物を持ち出して人質事件とはな」 「っ…」 「恋人として、そんな危険な悪さを2度としないように、きっちり躾け直してやらないとな」 「っぁ…」 バサッと布団を捲られ、また裸が露わになる。 「俺のイロが部下どもにちょろちょろ悪さをするのを甘やかしたら示しもつかないし」 「それは…」 「まぁ覚悟しろ」 ニヤリ、と笑った火宮が、真鍋が置いていった紙袋をひっくり返し、ドサドサと中身をサイドテーブルの上に散らかした。 「ククッ、本当に鞭だ、クリップだを持ってきて」 笑いながら、火宮がそれらをポイッとソファに放る。 とりあえず苦痛系は使われない、とホッとしたのも束の間、ローションのボトルを手にした火宮が、次には何故か、トレイの上から注射器らしきものを取り上げた。 「な、なに…」 痛いのは本当に嫌なんだけど…。 注射をされることを想像したら、すでに涙が滲んできた。 「ククッ、怖いか?」 「っ、だって…注射、嫌い…」 ここは見栄を張るところじゃない、と思った俺は、素直にコクコクと頷いた。 「ふっ、痛いことはしない」 「でも…」 針が刺さることを考えたら、痛いに決まってるし。 「針は使わない」 「は?」 え?じゃぁそれ…。 「ククッ、このプラスチックシリンジはな、こう使う」 「っ!」 ちょっと待って。 なんでローションを吸い上げてるの…。 「真鍋もちゃんと専用のものを持ってくるとは。注意していきながら、あいつも乗り気じゃないか」 「はぁっ?」 だから待って。 それ、一体どこに注射する気…。 嫌でも分かる、ものすごく嫌な予感に、身体がカタカタと震えてきた。 「ククッ、ほら翼、うつ伏せになって尻を高く上げろ」 ピュッ、と注射器の先から空気を抜いた火宮が、スルリと手の拘束を解いてくれた。 ようやく自由な身動きが許される、けれど…。 「や、いや…」 できないよ、そんなこと。 痺れた手を振りながら、頭もついでにブンブンと左右に振ったら、火宮がそれはそれは意地悪な光を目に宿して微笑んだ。 「これを素直にできたら、他は許してやろうと思ったが」 「えっ…?」 「それとも翼は、これとか…これを、ためしてみたいのか、そうか」 細長い棒…変な形の金属の器具…。 「っ…」 「何だか分からないという顔だな。ククッ、これはカテーテル。ここに入れる」 「ひっ…」 性器を示され、思わず恐怖で悲鳴が漏れた。 「痛みを伴う」 「やだっ…」 「こっちは肛門鏡。ククッ、分かったか」 その露骨な名前で、見ればその形状の用途は簡単に想像がついた。 「嫌っ!」 そんなのどっちも嫌に決まっている。 ジリジリとベッドの上を後ずさって首を振り続けたら、火宮の悪い笑みがますます深くなった。 「これは仕置きだぞ?」 「でもっ…」 嫌なものは嫌。 「嫌だから罰になる」 「そ、だけど…」 「だが俺も鬼じゃない。だからこれだけで許してやろうと言っているだろう?」 ニヤリ、と注射器を掲げて見せる火宮は、本当にどSでどうしようもない。 どうしようもないのに…。 「っ、絶対…ですね?」 あぁ、洗脳されてる。 絶対染め上げられている…って分かるのに。 1つの我慢で他の怖いことをされなくて済むなら、と絆されてしまう時点で終わってる…。 「ククッ、あぁ、俺は嘘はつかない。ただし」 「えっ…」 そっと近づいてきた火宮が、耳に吹き込んできた言葉は、それは…。 「っ、バカ火宮ぁぁっ」 思わず暴言も漏れる。 だって。 『先生、俺のここにお注射して下さい、と言って、後ろを広げてねだれ』 火宮のあまりにマニアック過ぎる発言に、さすがにクラクラと目眩がした。

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