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第247話※

「うぷっ…ひ、みや、さん…?」 ベッドに顔まで突っ伏してしまい、声がくぐもる。 「んっ、どうし…」 とにかく腕を突っ張ってもがいたら、「はぁっ」て苦笑混じりの溜息が聞こえた。 「本当、おまえはな…」 え?なに? 「だからいい。だから、たまらない」 「刃?」 一体どうしたって言うんだろう。 不意に背中を押さえる手の力が緩んだから、俺はゆっくりと身体を起こした。 「あの…」 「ククッ、本当にそのしなやかさはどこからくる」 「え?」 「だから俺は、おまえに惹かれてやまない」 な、なに? 急に一体どうしちゃったの、この人…。 ついさっきまで散々意地悪していたくせに、今はまるで別人みたいに穏やかで、その目が俺を見て愛おしいと語っている。 「刃…?」 きゅぅん、と胸が震えて、身体がゾクリと熱くなった。 「ふっ、翼、俺はな…」 「え?」 「多分眠っている間、ずっと夢を見ていたんだ」 「夢、ですか…」 意識不明の3日間。 火宮は火宮で何かあったのだろうか。 「あぁ。真っ暗い、ただ真っ暗いだけの空間で、ポツリと2つだけ、光っている場所が見えた」 「そう、ですか…」 「1つの光の中で、聖が笑って両手を広げていた」 「っ!」 「こっちへおいで。僕が待ってるよ、と言っているみたいに」 それは…その夢は…。 「もう1つの光の中では、翼、おまえが涙を堪えて歯を食いしばって微笑みながら両手を広げていた」 「っ、それって…」 「帰ってきて。俺はここだよ。そう、ずっと聞こえていた。俺を呼ぶ、おまえの声」 「っ…」 そうだ。ずっと呼んでた。 火宮がどうか逝ってしまわないように。 「ククッ、なぁ翼。俺はそこでどうしたと思う?」 2人に呼ばれて、火宮が取った行動? それは、今こうしてここに戻ってきてくれたわけだから…。 俺の考えを読んだのか、火宮は淡く微笑んで首を左右に振った。 「クッ、翼、俺はな…」 「はい…」 「俺は、暗闇の中、1歩も動けなかった」 「え…」 え? それってどういう…。 「ふっ、1歩も動けず、ただ馬鹿みたいに2つの光を見比べて立ち尽くしていた。そうしたら、どうなったと思う?」 少しだけ悪戯っぽく目を細めた火宮が、俺を真っ直ぐ見つめてくる。 「わ、かり、ません…」 震える声でそう返すのが精一杯だった。 火宮が艶やかに微笑む。 「翼」 「え…?」 「翼、おまえだ」 「え?」 真っ直ぐ見つめてくるその瞳に、何故か胸が震えた。 「おまえのいる光の方が、強く強く輝きを増して、広く広くその光を広げていった」 「っ…」 「闇を裂くように、暗闇を照らすかのように、四方八方に光を放ち、ぐんぐん、ぐんぐんその光を広げていった」 っ、それは…。 「広がって、広がって、俺の佇んでいた場所までそれが届いた。俺の立っていた場所を飲み込んだ」 「っぁ…」 「それでも止まらず、光は広がり続けて、聖がいた光も飲み込んだ」 「っ!」 「気づけばそこは闇ではなく、眩い白さを放つ明るい世界で…眩しさに瞬きしたら、目の前に、翼。ベッド脇で俺を覗き込んで泣いているおまえがいた」 っーー! それが、火宮の言うように夢だったのか何なのかは分からないけれど、それはきっと…。 「翼、おまえは強い。どんな闇にも呑まれずに、強く強く俺に光を見せる」 「っ…」 「俺に近づいてくるのではなく、おまえはおまえの立つ場所から、俺に力強く手を伸ばす」 「そ、んな、のは…」 買い被りすぎだ。 だけど…。 「だから俺は、おまえに惹かれてやまない。その強さが愛おしくてたまらない」 「っ…」 「翼、愛している。俺の身体は、大丈夫だぞ」 に、ぃっ、と唇の端を吊り上げて、それはそれは艶やかに笑った火宮に、ドクンッと鼓動が跳ね上がった。

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