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第260話
ドタンバタンと、リビング中を逃げ回り、全力で抵抗の意志を露わにしたものの、火宮の追跡には敵わず、とうとう壁際に追い詰められてとっ捕まった。
「いやぁっ。ごめんなさいっ!許して下さいっ。全部話しますっ!何があったか隠さず全部言いますからっ!」
なんとか痛いお仕置きだけは勘弁してもらいたい。
「やだっ。火宮さんっ。ごめんなさいっ。言うからっ。お願い許してっ…」
ズルズルとソファに引き摺り戻される身体を、何とか踏ん張って留めようとするけれど、フローリングの床に靴下履きの足では、何の抵抗にもならなかった。
せめてスリッパなら、と思うのだけど、逃げ回る際に邪魔で、自ら脱ぎ捨てたことが悔やまれる。
「ふっ、まさかこの俺に嘘を吐く気になろうとはな…」
「っ、だ、って…」
「恋人によからぬ隠し事をし、たばかろうとした罪は重いぞ」
「やっ…。ごめっ…」
トンッ、とソファに向かって背中が押され、肘掛けに腹を乗せる形で転んだ身体がブルリと震える。
無防備に突き出されたお尻が嫌で、慌てて身体を起こそうと手を突っ張ったら…。
「さて。鞭か、極太バイブを入れて平手打ちか」
どちらも苦痛に変わりないが、と笑いながら、背中をぐいと押さえつけられた。
同時に腹の下に潜り込んできたもう一方の手が、ズボンのベルトとチャックを外し、スルリと下着ごとズボンを剥ぎ取っていってしまう。
「やっ、火宮さんっ!」
まさか本当にこのままお尻に痛いことをされてしまうのだろうか。
「お願いですっ。何でも言いますっ。全部白状しますからぁっ。お願い、痛いお仕置きだけは許して下さいーっ」
ふぇぇん、とすでに泣きを入れて頼み込んだら、スルリと剥き出しのお尻を撫でた火宮の手が、パァンッと1発そこを叩いた。
「ひゃんっ!」
「まったく、初めからそうしろ」
馬鹿者、と苦笑が聞こえたと思ったら、背中を押さえる手がふっと離れていった。
「しかも内部にスパイを潜り込ませているかもしれないなど、恋人に対してどんな疑いをかけている」
「う…」
「俺は、おまえの安全を保障する以外で、おまえを監視したり素行を見張ったりするような役目を持たせた人間はつけていない」
「ごめんなさい…」
ゆっくりと身体を起こしながら、俺はシュンと項垂れた。
「クッ、まぁいい。とりあえず、隠し事の方を綺麗さっぱり白状して貰おうか?」
「っ、はい…」
「尻はしまうな。そのままでな」
「えっ」
この、下半身をみっともなく出したままの姿で?
「もし少しでも嘘をついたり、事実を隠したりしてみろ?今度は脅しじゃなく、本当に鞭を振るうぞ」
ゾクンッ。
とても艶やかに、サディスティックに笑った火宮が、スゥッと目を細めた。
「正直に全部言いますっ!」
敵わない。
もう十分承知したその現実に、俺はもう計算も何も投げ捨てて、昼休みにあった出来事を、包み隠さず火宮に話した。
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