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第15話

 律が落ち着くころを見計らって、和己はずるりと引き抜いた。  湯気が立ちそうだ。  すばやくそれを収めると、律の服を整えようと傍に寄った。 「はぅ……、ふぅ、ふぅ、はぁ……」  瞼はとろんと半開き、口元も緩み、いまだ熱い息を吐いている。  シャツのボタンを掛けながら、和己は律に言った。 「今のお前、すげぇ可愛いぞ」 「はぁ……今頃……はぁ……気づいたの……?」  さっきの俺の言葉だ。  これは一本取られた。  だが、もう一度律の言葉を噛みしめてみる。  俺は今まで、必要以上に『律はこういうやつだから』とフィルターをかけて見てはいなかったか?  ホントは素直な部分を垣間見せていたかもしれない、律。  だのに、それを俺がうがった目線でしかとらえていなかったとしたら? 「ツンデレだなんて決めつけてて、ごめんな」 「和己くん、超カッコいい……」  身支度の整った律は、ぺたんと芝生に座り込んだままだ。  和己は、そっと手を差し伸べた。  律の手が、和己の手に重な……らなかった。

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