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第48話 ネガティブ勇者、王子様と訓練

「魔物との戦いも問題なさそうだったし、他の鉱石も取りに行ってみる?」  訓練を終え、休憩しているとテオがそう言った。  何のことを言ってるのか分からず、ナイは黙ったまま首を傾げる。 「宝剣はともかく、ナイの装備品をきちんと整えた方がいいかなって」 「装備?」 「うん。防具とか、アクセサリーとか。やっぱり勇者が身に着けるものなんだから特別なものじゃないと駄目でしょ。まぁ防御に関してナイはそのままでも問題はないんだけどさ、特殊ダメージ……例えば毒や呪いを無効化する効果のあるものとか? そういう付加価値の付いた装備を付けるべきだと思うの」  なるほど、とナイは小さく頷いた。  ナイが無効化出来るのは物理ダメージと魔法ダメージ。毒などの特殊攻撃は食らってしまう。それを防げるアテムがあるなら持っているに越したことはない。ナイはどうすればいいのかとテオに訊いた。 「水晶のときみたいに鉱山とか特別な場所《ダンジョン》に行けばいいのよ。そうねぇ、やっぱりミスリルとかオリハルコンとか……あとは精霊の雫とか」 「精霊?」 「南にある砂漠地帯のどこかにオアシスがあるらしく、そこに眠る精霊の加護を与えられた宝石と言われてますね」  ナイの呟きにレインズが答える。  昨晩で色んな本を読んだが、まだまだ知らないことの方が多いなとナイは思った。 「ですが砂漠のオアシスは精霊の魔法で普段は隠されていると聞きます。見つけるのは難しいのでは?」 「そうね。普通なら難しいかもしれないわね。でも、ナイの察知能力ならいけると思うのよ」 「僕の……?」 「ええ。もっと感度を高めれば出来るはずよ。ナイの魔力はそれだけの可能性を秘めてる」  テオの言葉に、ナイは泣きそうになった。  期待は重圧にしかならないと思っていた。だがテオのこの期待は勇者へ与えられる無責任はものではなく、純粋にナイの能力を理解してのもの。  だからこそ、嬉しい。 「ど、どうすればいい?」 「まずは魔力操作に慣れることね。ナイは周囲の気配を察知することは覚えたんでしょ。その精度を上げないと精霊の泉……オアシスを見つけるのは難しいわ」 「せ、精度……」 「その辺はレインズが得意だから色々教わるといいわ」  ナイがレインズをの方を向くと、いつもの笑顔を見せてくれた。魔王の話をした時の怖い顔が嘘のように優しい表情。  昨晩ずっと話をしていたおかげか、レインズから何かを教わることに抵抗を感じない。  出逢ったばかりの頃だったら劣等感で苛まれていたかもしれないが、今は特に胸を痛めるような感情は湧かない。 「頼んで、いい?」 「勿論ですよ、ナイ」  今はとにかく魔法を覚えたい。戦う力を付けたい。  その気持ち一心で、ナイはレインズが差し出した手を取った。 「ナイが使った周辺探知。その精度を上げるには気配や魔力を読み解く力を付ける必要があります」 「うん」 「ナイは今のところ、そこに何かあるが程度にしか探知できていません。なので、その何かが分かるようにしましょう」 「どうすれば、いい?」 「そうですね……魔力を通して視野を広げる、って感じですかね。まずは実際にやってみましょう」  そう言って、ナイの手を掴んだままレインズは魔法陣を展開した。  目を閉じてレインズの魔力と同調させる。テオとやったときと同じように、流れ込んでくるレインズの魔法を受け入れる。 「……分かりますか。魔力を自身の目だと思ってください」 「うん……」  頭の中に周辺の景色が入り込む。  まるで360度カメラのように、遠くの景色までがパノラマで見えるようだ。 「凄い。ここまで精密に探知できたのは初めてです。ナイの魔力が影響しているのでしょう」 「そう、なんだ……」 「この感覚を覚えてください。魔法は習うより慣れろです。意識を集中して」 「は、はい」  それから暫く、レインズと共に魔法の訓練をした。  レインズの魔法はテオと同じようにとても精密で、かつ丁寧だ。魔法の組み上げ方はその人の性格が出るんだとナイは思った。  

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