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第78話 ネガティブ勇者、宝剣を見つける

 皆が言葉を失った。  精霊の言葉に当てはまる存在は確かに一人しかいない。だが、彼は人だ。剣じゃない。 「どう、いう、ことでしょうか」 「むしろ私の方が聞きたいわ。本来ダナンエディアの王子はそうなるために生まれ、そうなるように育てられる。それを知らないはずがないのに……この150年の間に何が起こったというのー?」  精霊が少し怒ったような顔をしていった。  だがそれを言われても、答えを出せる人などここにはいない。テオですら知らぬ歴史があるというのか。 「…………じゃあ、今までの勇者が宝剣の居場所を知っていたのは、最初から目の前にいたから」 「ですが、国王はレインズ様にそのようなこと一度も仰ったことはありません。そんな重要なことを黙っているはずは……」 「だからおかしいのよ。私たち精霊は勇者が召喚されるまで眠りにつく。だからその間に何が起きたのかは知らないわよー」  つまり本来勇者やその代の王子に伝えられなきゃいけない伝承が受け継がれていないということ。  水の精霊も不思議なことを言っていたのを思い出す。ダナンエディアの王子が温厚な性格であることに驚き、優しい子に育ててどうするつもりなのかと。  今までの王子は勇者の剣になるために育てられた。きっと余計な感情を持たぬようにしていたのかもしれない。だからレインズを見て不思議がっていた。 「でも、君はまだ剣として目覚めていない。その鍵となる勇者の意志が貴方の中にない」 「鍵? 僕が?」 「……ちょっと喋りすぎたかしら。まぁいいわ。どうにも歴史がおかしいことになっているようだし、これくらいは許される範疇ということにしましょう」  精霊は肩をすくめ、一呼吸おいてから話を続けた。 「光の力を持つ子の本来の力を引き出すためには、勇者の意志が鍵になる。それは守るための剣。その心が宝剣を目覚めさせる。君自身が宝剣を起こす鍵なの」 「僕の、心……」 「王子様は既にその片鱗を見せている。あとは貴方の心次第よ」  確かに、レインズ自身がすでに光の剣を扱っている。何も知らないながらも、その答えを無意識に導いていた。  あとは勇者であるナイの心が彼を武器として認め、本来の力を引き出せるかどうか。 「ま、私に言えるのはここまでよー。これでも出血大サービスしてるんだからね? あとは勇者である貴方が何を思うか。どう答えを出すかよ。あとは、これを渡しておこうかしら」  精霊は指をくるんと回した。  するとレインズの前に赤く光る宝石が現れた。 「私の力が込められた宝玉よ。貴方が力に目覚めた時、私の加護が働くわ。勇者の武器たる貴方が持つのに相応しいでしょう」 「…………わかりました。責任もって私がお預かりします」  レインズはその宝玉を掴み、精霊の目を真っ直ぐ見つめてそう言った。  彼はこの事実を受け止めた様子だった。というよりも、ナイの力になれるのであればどんな形でもいいと思っている。  今までレインズは王に無理を言って旅に同行していた。次期国王である王子に何かあったらどうするのだと、何度も言われてきた。だかレインズは世界を、国を守るのはこの世界の人間である自分たちの役目だと言って無理を通してきた。  しかし、これでナイと共に戦う理由が出来た。魔王との戦いに自分も付いていける。宝剣として行かねばならない。 「この身が、世界を救う力になるのなら……」

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