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~淫らなゲームは終わらない・15=最終話-前編=~*

笠井はひとしきり泣くと、まだ媚薬が躯体を巡ってはいるが、野島と会話ができる程度までには落ち着いた。 「……邦彦」 野島は、笠井の頭の下に左腕を差入れ腕枕をし、抱き締めながら名前を呼ぶと深くキスをし舌を絡めた。そうされると、笠井の躯体は今までのようなものではない……愛を求める刺激を欲しがり、肉茎はピクンと反応する。 笠井の心は、もう野島の手中にある。 何年も探し続けた家庭教師から性を教えられた少年は、時を経て大人になっている。しかし、外見は美しさを失わず、細い手足はまだまだ瑞々しく、野島を興奮させる容姿であることは間違いなかった。 また、笠井にとっても野島は、長年引き裂かれていた家庭教師との縁を繋ぐような気持ちにさせてくれる人間であることは間違いない。 「本当に……、突然捨てたりしないですか……?」 笠井は恐る恐る聞く。しかし、ここでいい答えが返ってきても、それが本当であるとは限らない。それは、笠井が最も恐れることであるのだが、聞かずにはいられなかった。 「捨てる事はない。だが、私の調教癖は治らないだろうね……」 野島はくつくつと笑いながらそう答えた。 「これからも少年を……?」 笠井は伏し目がちに聞き返した。 「邦彦は嫉妬してしまうかな?」 野島は笠井の質問に答えず、またくつくつと笑いながら質問に質問で返し、言葉を続けた。 「しかし……、私はまず邦彦を調教してあげなくてはいけないと思っている。何故ならば、邦彦は今まで発注者にたくさんの愛撫を受けてきただろう? まず、そのお仕置きが必要だと私は考えている」 「調教師をやめると……、無収入になってしまいます……」 「そんなことは百も承知だ。それに、私の財力は邦彦が一番よく知っているのではないかね?」 そう言われ、笠井は口を閉じた。 暫くの沈黙は流れたが、笠井は野島に抱き締められ、その沈黙さえも温かく感じていた。 笠井の心は、幼少期に捨てられ傷付き凍てついたまま大人になり、今やっと溶け始めている。しかし、どうしても笠井の心はまた捨てられるのではないか?という恐ろしさから逃れられずにいた。野島の声は笠井の心の深奥に届き、その恐ろしさを軽減させつつはあるが、どうしても幼少期の記憶が邪魔をしてしまう。 「愛が怖いのかね?」 野島は笠井の心を見透かすように聞く。 「いえ……、ただ…………」 笠井は、おずおずと野島の問いかけに応える。 「言ってごらん?」 「私は……、…………」 野島は笠井の頬をスルリと撫で、言葉が出てこない唇を指でつつ、となぞる。その指に呼応するかのように、笠井は言葉を吐いた。 「わ……、私は……いつまでもは……若くない……」 笠井の不安が野島に伝わり、野島はそれを聞いてまた、くつくつと笑い出した。 「くっくっくっ、なんだ……そんなことで口を噤んでいたのかね……」 「私はどんどん老いてゆく……。だから、私はいつまでも必要とされることはないと思うんです……。身体が老いたら、きっとまた捨てら……」 言い切る直前、笠井の言葉は野島の唇で塞がれた。深いうねった熱いキスをされ、またピクンと肉茎が反応する。 「あぁ……、まぁ確かに私は若い男の子が好きだからね。これはもうどうしようもないことなんだ。ただね、私は自分で探すことは得意だが、その子を調教することはできないんだよ。……身も心も、犯されたいと思えるようには仕上げられないんだ……。だから、いつまでも私が邦彦を手放すことはない……」 笠井は、一気に話した野島の言葉に思わず呆気にとられ、目を丸くした。それは……愛ではないのではないか? 老いたらただの調教師として飼われ、愛はまた違う少年に捧げられるのではないか……? 笠井の心が大きく揺れ動き、その揺れる心は瞳を潤ませる。 ポロリと零れた涙に野島はキスをした。 「あぁ……、言い方が悪かったね。私にとっての少年という定義は、身体の外側だけのものだ。しかし、邦彦の心はずっと幼いままなんだ。いつでも愛がなくなることを恐れ、私がいなくなったらという恐怖を抱えた子供だ。他の少年とは訳が違うんだよ。与えられることを当たり前だと……きっと邦彦は、時間が経っても思わないだろう……。だが、他の少年は違う。与えればそれを享受して当たり前になり、もっと多くを望む……」 「……私も、……そうなってしまうかもしれないじゃないですか……」 笠井はまた、ポロリと涙を零しながら野島の胸にすがりついた。 「ああかもしれない、こうかもしれない……、そろそろこの問答に私は飽きてきた。邦彦……、私は少年の身体を嗜む少々おかしなヤツかもしれないが、……私は、お前を愛している……。ただ、それだけだ」 笠井の瞳からはポロポロと涙が零れては頬をつたい、野島の胸までを濡らす。野島はそんな笠井の頭を大きく撫でながら、さらに言葉を続けた。 「私はこれから健康に気を遣い、きっと長生きしてみせよう……。ただ、私は年齢から言えば、確かに邦彦よりも短命であろう。だが……、私が生きている限り私はお前と共にいる。……私からのお願いだ。ずっと側にいてくれないか……?邦彦……、愛しているよ……。」 野島の指先が涙している笠井の顎を持ち上げ、目と目が合うと、二人はどちらからでもなく自然にキスをした。そのキスは次第に深くなり、お互いを求め合うキスに変わっていく。野島が笠井に覆い被さり、深く深く唇を貪られると、笠井の呼吸は速くなり、心臓は早鐘のようで躯体は熱くなってゆく。 野島の舌先は、笠井の口内をゆっくり確かめるように愛撫しながら頬をつたい、耳を愛撫した。笠井の躯体は、感情で抑えられていた媚薬がまたゆっくりと侵食を始め、耳を舐められるだけでビリッとした快感が全身を駆け巡った。尿道にプラグを挿れられた肉茎の先端から、またポタリと欲情の蜜が零れ始める。 「さぁ、まずは邦彦におしおきをしないといけないね……」 この言葉だけで、笠井にゾクゾクとした期待が迸ってゆく。 「どのくらいの発注者に躯体を触らせてきたんだね……?」 笠井の耳元で野島の低い声が響く。 その言葉には含んだ笑みがあり、言葉と共に息が耳に触れた。 「あ……っ、の……野島さ……、み、み……」 「さぁ……、答えなさい」 野島は舌先の愛撫を止めて笠井の躯体から離れる素振りをする。もちろん野島は離れる気などさらさらないが、言葉次第では本当に離れる。野島はこの段階に至っても、サディスティックであることに変わりはなかった。 「じゅ……、18…………」 笠井は言葉を上手く紡げず、人数だけを答えた。 「ほう、案外多いんだな。では、そのうち何人に……、乳首を弄らせたんだね?」 「……わ、わからな…………」 「そうか、覚えていないほど多いんだな……」 野島はそう言うと、ベッドサイドに置かれた笠井の鞄から、カメラで見学して勝手知ったる媚薬入りのローションを取り出した。 「まずは、乳首を私の舌で完全に消毒する前に、下半身の準備をしてもらわないといけないね」 「え……」 笠井は何をすればいいのか分からずに、気持ちだけが焦ってゆく。ちゃんとした正解を出さなければいけないという、幼い頃から叩き込まれた精神状態になっていた。 「さぁ、自分の鞄から必要な道具を出しなさい」 笠井は野島に言われるがままに自分の鞄を手繰り寄せ、太くて短めなシリコン製のディルドと、さっき使われたステンレス製の尿道拡張器であるプラグの替えを取り出した。 「いい子だ……」 どうやら正解であったらしい。笠井がホッとするも束の間、野島は二つを笠井から取り上げ、たっぷりと媚薬入りローションをかけていく。次いで野島は更に、鞄からガラス製の針のない注射器も手に取った。 笠井の躯体は、それを見ると期待で小刻みに震え、これから起こることを想像して鈴口からとめどもなく蜜を溢れさせた。先ほど何度も男に貫かれドライでイった筈であるのに、まだ犯され足りないと言わんばかりに笠井の深奥が疼き始めた。固く反り勃った肉茎の根元にあるベルトがギチギチとした拘束感を上げ、笠井の欲情した表情は更に赤くなり、野島を深く欲している。 「何度もイっているのに……、まだ物欲しそうな顔だ……。邦彦は私の理想だよ……。」 野島の口角がニヤリと上がり、さらに言葉はエスカレートしてゆく。 「邦彦は、先ほどのように犯されながら私に愛された方が……、お好みかな?」 「の……じまさ……、ち……ちがっ……」 「そうか、では私に挿れられたいのかね?」 「……は、……い…………」 笠井は全身を上気させ、短く答えて恥ずかしそうに俯く。 「いい子だ……。では、尿道のプラグを自分で抜いてごらん」 野島に命令され、笠井は上半身を少し下にずらすと、プラグ先端のリングをゆっくりと引いた。 「……あ、ぁあ……ん……ぅ…………」 笠井は、ズルズルと少しづつ出て行くプラグを名残惜しそうな目で見つめながら抜いていく。 「邦彦……、何故調教中にお前はベルトをするんだね?」 野島はかねてから隠しカメラを見て疑問であったことを聞いた。 「ん…………、それ、は……私じし、ん……が……イってしま、う……と、欲求が無くなってしまうか、ら……です…………」 笠井はプラグを引き抜きながら、更に付け加えた。 「…………、わた、しは……、調教……師で、す……。だから……、発注され、て……欲情し、た……自分自身を……少年に、投影……するん、です……」 「ほう? では邦彦は、私に受けた愛撫を想像しながら少年を調教していたという訳か……」 「は、い……でも……、今回……は、自己投影……し過ぎまし、た……」 この瞬間、プラグがポトリとベッドに落ちた。プラグが排出された笠井の肉茎からは、大量の透明な蜜が溢れている。野島は笠井の肉茎に手をやり、根元から先端まで蜜を搾り取るように何度か扱いた。 「あ……、んあっ……!」 トロトロと溢れ出す蜜が、ベッドにまで糸を引いている。 「さて、……そろそろ、お仕置きの時間だよ……」 この言葉を聞き、笠井の鼓動が一段と早くなった。蜜を吐き出しながらも、笠井の肉茎は更に怒張し、根元のベルトはより一層食い込む。 野島はまず手に注射器を持ち、笠井特製の即効性の高い媚薬を吸い上げると、鈴口にその先端をツプリと差し込んだ。 「の……じまさ……ッ! それは、私でさえやらないことです……っ!!」 笠井が勢いよく言うも、野島はそのまま媚薬を尿道に注ぎ入れ、手早く取り替えた新しい尿道プラグで栓をした。 「あああああああああッ!!!」 笠井は全身が反り返り、うっすらと開いた瞳からは小さく涙が零れている。野島は、また注射器を持ち直して媚薬を吸い上げると、今度は後孔に惜しみなく注入していった。 「あああっ……!!」 笠井の焦った表情を見て……野島の心に欲望の灯が揺れる。後孔にもしっかりとディルドを嵌め込み、抜けないように太腿にレザーベルトを巻き付けた。 そして、ものの2分経過しないうちに、媚薬は恐ろしい効果を上げ始めていた。笠井の躯体はガクガクと震えはじめ、薄い唇からは熱い息を吐きながら、肉茎は今にもはちきれんばかりに怒張している。 「さぁ……、お仕置きの始まりだ……」 野島はニヤリと口角を上げながら、笠井の胸の双丘を指先で転がし始めた。 「あっ! ……ぁあっ!!」 摘まんでは離し、クリクリと捏ね、きゅっとまた摘まんでは引っ張っては離す。笠井は、触れられる度に仰け反り、怒張した肉茎から欲望の蜜を溢れさせた。 挿れて欲しい……、犯して欲しい……、イきたい……、笠井の脳内はもうこれしか考えられず、野島を欲している。 「のじ、まさ……ん……」 笠井の憂いを帯びた瞳が揺れ、両手が野島の首に絡みつく。 「少々刺激が強すぎたようだが、欲することは悪いことではない……。むしろ、いつでも私を欲していなさい。分かったかね? 邦彦……」 「は……い…………」 笠井は頷くと、野島にしがみついた。野島は笠井に覆い被さると、その左手をベッドに押し付けるようにしっかりと握ってやり、両乳首を満遍なくぬめった舌で愛撫してゆく。舌が触れる度に笠井は大きく震え、歓喜の声をあげた。 「あ……っ、ぁあ……っ、ん……っ」 「ここをたくさんの男に舐めさせたり……吸わせたり……揉ませたりしたんだね。邦彦は、なんてはしたない子なんだ……。もっとお仕置きが必要だね……」 「ご……めんな……さい……」 「邦彦……、色んな男に弄らせた乳首をもっと私の舌で綺麗にして欲しいなら、自分から私を誘ってみなさい」 「は……い……」 もう既に、笠井は子供のときと同じだった。野島の言いつけを守り、野島の為に生きようとする笠井がそこにいる。昔はそれが家庭教師だったが、それを失った末にやっと辿り着いた野島という存在。 笠井にとって、服従は愛の証であり、人生の全てだ。 「野島さ……、見て……」 笠井は、野島の目の前に膝立ちし、大きくなった肉茎をゆっくりと扱く。 「ん……っ、あっ……」 野島は、笠井の興奮した様子に更に欲望を抱く。まずは射精管理をしなければならないと考えながら、この日だけは笠井の誘いに乗り、肉茎に食い込むベルトを外した。 「ああああああああ……っ!! で……る…………ッ!!」 笠井はたったそれだけで、たっぷりと白濁した蜜をプラグの隙間からトロリと吐き出し、グッタリとベッドに倒れ込んだ。 はぁはぁと、全身で酸素を欲す笠井の躯体を野島はうっとりと眺める。 笠井を手に入れ、野島はこの日から再調教を始めることにした。 野島にとっては、笠井と少年という組み合わせは、目を愉しませるものだった。 男に深く挿入され、喘ぐ笠井の肉茎を弄ってやるのも愉しいものであった。 野島の再調教は、やっと始まったばかりだ。 ~最終回-後編につづく~

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