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~淫らなゲームは終わらない・16=最終話-後編=~*
―――数日後、笠井は野島の命によって、少年の最終調教をするために調教室にいた。
先日調教していた少年は、すっかり雌のような様相で調教椅子に座らされている。目隠しをされたまま大きく足を開き、手は頭の後ろで固定され背中が反った状態で、熱い息を零して欲していた。
椅子は180度寝かされた状態になっており、その姿は乳首と陰茎が強調される格好で、とても淫らだ。もちろん、すぐにイけないよう陰茎にはキツくベルトが食い込んでおり、鈴口から見えるカテーテルが生々しい。
「んっ……、はぁ、はぁ、ぁん……」
膀胱に到達しているカテーテルからは媚薬が流れ込み、少年は陰茎を天に向け、甘い吐息を零している。今回の野島のリクエストは、野島のボディガード達の性処理係として少年を調教することというものだった。
笠井の躯体は、数日前に尿道と後孔に直接媚薬を流し込まれた。媚薬で昂ぶった性欲は留まることを忘れ、何度も野島に突き上げられては達したが、それでもまだ躯体は仄かに欲が灯っている。
野島は今日、若くないという理由で笠井を抱くときは、ボディガードに最初は責めさせるということを告げた。しかし、笠井の中でイくことは許されていないボディガードが、その後の処理として何もないのは可哀想だからというのが、今回少年を調教する理由のようだった。
もちろん今も、野島はいつも通りカメラ越しに笠井の調教を見ている。
肌が透ける純白のガウンを着た笠井は、少年の椅子の前に立つと、少年の髪を撫でながら言葉をかけた。
「やっぱり君は、才能があったんだね……」
ふ、と笑みを零しながら、笠井は少年の胸から臍までをつつ、と指でなぞる。
「あっ……、やあっ……! お……お願い……イきたい……」
少年は笠井の存在に気付き懇願するが、笠井はその願いを簡単に聞き入れるような者ではない。たっぷりと性欲を高め、まずは少しの愛撫でもすぐに欲するようにしなければならない。
しかし、この少年は自ら手をかけずとも、既にそこまできているような気がした。どうしたらもっと野島の目を愉しませることができるのか、暫く考える。しかし、調教するとはいっても、既に欲しがっている少年に何を調教すればいいのか。
笠井はそのまま暫く考えると、自ら羽織っていた白のガウンを脱ぎ、足下に落とした。
パサッ……という音と共に、美しい躯体が露出する。
何も身に付けていない笠井の躯体は少年の色気にあてられて、ピンクに色付いている。笠井はそのまま暫く少年の様子を見ながら、少しだけ自身のモノを撫でると、形創った肉茎に同じようにベルトをしっかりと締めた。
「……んっ」
笠井の肉茎は、そうすると余計に大きくなり、笠井自身も少年のように性の渇望を覚えた。
野島に見られながらそうすることで、笠井の興奮は今まで以上になっている。もっと見て欲しい、もっといやらしく蔑んで見て欲しい、もっと視線で嬲って欲しい、もっと……、もっと……。興奮は留まることができない程になっていく。
その犯されたい気持ちが、笠井の手の動きに変わる。笠井は野島にゆっくりと自分が同じように弄ばれることを想像し、投影してゆく。少年に刺さるカテーテルをそっと抜くと、栓をするかのように尿道プラグを少しづつ奥まで挿れ、それをゆっくりと出し入れした。
「あっ!!……あっ……、あっ……あんっ」
「気持ちいい……?」
笠井が少年に尋ねると、少年は頭を何回も前に倒し、言葉に出来ずとも快感を得ているのが伝わった。
プラグをゆっくりとした動きで出し入れしてやると、少年はうぅ……という色香を放った呻き声で鳴く。その声は、笠井の心をもっと艶のあるものに変えていった。少年の陰茎からは透明な蜜が流れ、プラグが行き交いする度に蜜が溢れ出てきている。
「ゃ……っ、もっとはや……く、して…………」
少年は艶のある声で笠井を誘う。
「ズルズル、大好きになっちゃったね……」
「ズ……ルズル……、すき……」
笠井は、このキーワードで少年がもっと欲すると分かっている。人間は不思議なものだ。快感を与えられるときに、直接の刺激を与えると共にキーワードを与えてやれば、そのキーワードだけで欲するようになってしまう。それはまるで、パブロフの犬と同じだ。
笠井は眼を伏せ、少年のプラグを出し入れしながら、野島の手が同じように自分を弄ぶ姿を自己投影していく。
「あ……、ぁあ……」
野島の手に握られ、プラグをグチュグチュという水音を立てながら出し挿れされるのを想像すると、笠井の唇からも艶のある溜息と声が漏れる。
「はぁ……」
今にも自分自身にもプラグを挿れたい衝動に駆られるものの、これは調教なのだ。勝手なことはできない。しかし、肉茎はベルトだけではイってしまいそうな程に怒張して蜜を零している。ここで、笠井は自身の限界を感じた。
この数日セックス三昧をしていたからという理由もあるが、何よりも笠井は野島のものになり、今は調教をして自己投影するよりも、自身の性欲が勝ってしまっているのだ。
手の動きが止まり、躯体を少し屈めて暫くいると、野島の声がマイク越しで聞こえた。
「邦彦……、どうした。具合でも悪いのかね?」
「いいえ……、すみません……ただ……」
「言ってごらん」
「私がしてほしく……なってしまって……、す……すみませ……」
それを聞くと野島は、コロコロとした笑い声をあげ、笠井に声をかけた。
「はっはっはっ、そうかもしれないと思っていたよ。ではそうだな……今から私が言うことをしなさい」
「はい……」
「まずは、イってしまわないよう、先端にボールだけが付いたプラグを自分の尿道に挿れなさい」
「はい……」
野島に命令されて動く。それだけでもう、どうにもならない性欲が心を支配し満たしてゆく。笠井は器具が載っているトレイの前に行くと、引き出せなくならぬよう大きな銀色のボールが先端に付いたプラグを手に取った。
「さぁ、カメラの近くに寄って、それを沈めなさい」
笠井は数歩前に出ると、カメラの前に怒張した肉茎をアップで写し、ゆっくりと鈴口にプラグを沈め始めた。
「あぁ……ッ、の……野島……さ……」
プラグがゆっくりと奥へ進む度に蜜が零れ、笠井の手を伝って糸を引く。野島はニヤリと口角を上げてそれを愉しんでいるが、もっと笠井の性欲を上げるのが今回野島が考えている再調教だった。
少年を調教するという名目は建前で、笠井が今の段階で調教すれば、自ずと性欲でこうなることは分かり切っていることだった。少年は開花して喘いでいるが、今回は少年の身体を餌にして、笠井の性欲がどうにもならなくなるのを待つのが狙いなのだ。
「遅いな、もっと奥に挿れなさい」
「は……、はい……ッ」
笠井は言われた通りに、一気に奥までプラグを挿入した。
「あああああ……ッ!!」
野島の顔が更に緩む。愉しくて仕方が無いのだ。
ここから先は、完全に野島の再調教の始まりである。
「邦彦、今したいことを言ってごらん」
「の……野島さ……んに、プラグを出し挿れされた……い、です……」
「そうか、でもまだそれはお預けだ」
「は……い……」
笠井は項垂れながら、自身の肉茎を握りしめている。
「どうした、プラグを私に出し挿れされながら陰茎を扱いて欲しいのかね?」
「はい……、強く……握られたい……、そうして欲しいで……す……」
「はしたない子だ」
「すみ……ません……」
野島に追い詰められれば追い詰められるほど、笠井の眼がジワリと艶やかに潤み、性欲は昂ぶっていく。その姿は幼い頃とまるで同じく、お預けを食らって欲する姿は妖艶そのものだった。
「邦彦……、刺激が欲しければ、暫くその少年の後孔に挿れてごらん。以前お前は、調教が終わるとその具合を挿入して、誰よりも早く味見していたね。それを私に見せなさい」
「私が……挿入するの、ですか……」
「そうだ」
「……わ、……分かりました……」
笠井はそう言うと、暫く押し黙った。笠井が今猛烈に欲しているのは、野島にめちゃくちゃにされることだった。でも、野島は少年に挿入しろと言う。でも、これが野島の望む行為である以上、従うことしか選択肢がない。
「早くしなさい」
「はい……」
笠井はコクリと頷くと、言われるがままプラグが挿入ったままの肉茎を少年の後孔にあてがった。
「やあ……っ!」
少年はいきなり硬く大きな質量を後孔に感じ、咄嗟に嫌がった口調で声を上げる。しかし、次の瞬間、その声は快楽の声になった。
「ん……、ぁ……あああああああああああッ!!」
笠井は、そのまま奥まで一気に自身の肉茎を少年に埋め、そのまま野島の言いつけ通りに少年の後孔に締め付けられながら腰を振る。
「あっ、ぁあっ、あんっ、あんっ」
「はぁ……っ、ぁあ……っ」
ぱちゅっ、ぱちゅっという水音と、笠井の熱い溜息混じりの悦声と、少年の悦声が合わさり部屋に響く。
「いい子だ、邦彦……私は今とても興奮している。後でじっくり可愛がってあげよう」
「のじ……まさ……、欲し、い……っ」
笠井は、腰を振りながら野島を欲す。ベルトが食い込み、プラグが邪魔をして射精ができない。腰を動かす度に快感は感じるものの、それよりも今すぐ自分をこのまま野島に犯されたかった。しかし、段々と野島が満足してくれればもう何でもいいと……、そう強く思う笠井がそこにいた。
少年は、笠井の暴力的にまで怒張した肉茎で何度も何度も貫かれ、悦声を響かせている。
「ああっ!あぁっ!!あっ!ぁああっ!!あんっ!!ぁああっ!」
笠井も、腰を振る度に肉茎が締め付けられ、既に声を我慢することは困難だった。
「んっ、はぁ……っ、んっ、んっ……ぁあっ」
「あぁ……、二人ともとても悦い声を出しているな、私が興奮して我慢できなくなったらそこに行こう……。邦彦、それまでしっかりと私の目を愉しませるんだよ、分かったね?」
「はっ……ぁっ、……はい……」
笠井は少年の肉壁をかき分け、奥へ奥へとなるべく当たるように肉茎で嬲っている。イくことが許されない二人は、快楽を求めて何度も何度も求め合い、達することが出来ないままにまた求め合う。
野島は、笠井と少年が交わる映像に大きな悦びを感じていた。笠井の陰茎は、並ならぬ大きさであるのが野島が気に入っているひとつの理由でもあった。その大きな肉茎で犯された少年の後孔は、野島が挿れるときにはトロトロになっていることだろう。それを味わうことが楽しみでもある。
野島は身震いすると、更に笠井を追い詰めてゆく。
「邦彦、とてもいい表情だ……。二人が交わるその光景は、私が期待していた以上のものだった。私がそちらに行くのは15分後だ。それまでガードをそちらに行かせるから、そのままその子の調教をやめずに、後孔を準備して貰いなさい」
「は……、はい……、んっ……あっ……」
笠井は少年に腰を打ち付けながら、朦朧として全てを理解することはできないまでになっていた。もうすぐ来てくれる……、それだけが頭をループしている。
そのまま暫く快感に酔っていると、野島のボディガードが到着した。
「失礼します」
笠井は朦朧としながら、男に何をされるのか期待してしまう程になっていた。その期待からの欲望が肉茎への刺激と合わさり、少年の最奥を何度も突く。暴力的な快楽は少年を狂わせ、また少年は悦声を上げはじめた。
「あ……、ぁあ……っ、やあんっ……」
男は笠井の背後に立つと、おもむろに笠井の後孔にローションを流し込み、丁寧に解すよう指を差し入れた。
「あっ!! ……ぁあ……っ」
笠井は少年に挿れながら後孔を指で刺激され、快感に打ち震えた。この光景を野島が見ていると考えているだけで、何度もドライで達しそうになる。
「あぁ……、とてもいい締め付けで中も綺麗ですね……」
男はそう言うと指を抜き、すぐにスラックスを膝まで落とし、陰茎を露出させた。笠井の後孔にそのままそれを押し付け、圧をかける。
「んっ……ぁあ……っ」
ゆっくりと男の陰茎が笠井に侵入する。笠井の躯体にゾワリという快感が走り、肉茎から伝わる少年の締め付けと、後孔に挿入された快感で、頭の中がぐちゃぐちゃになっていった。
「あああ……、ぁあ……、あ……」
ゆっくりと、内部を確かめるように男の陰茎が笠井を突く。野島に挿れられる為の前戯とはいえ、躯体は与えられる刺激に敏感になり、男の陰茎を内部でしっかりと締め上げることしかできない笠井がいた。与えられる刺激から少年に突き入れることが疎かになってしまうほどには快感に打ち震えている。
男はそれを見て取ると、笠井の腰をしっかりと持って、少年にもしっかりピストンが行われるようにした。
「ぁあん……っ、やあぁっ、あんっ、あっ、あっ!!」
少年は、笠井の大きすぎる質量をまたしっかりと受け止めながら、悦声をあげた。笠井は自分の意思とは違うピストンを強いられて、少年が座る椅子に手を着き、熱い溜息を吐きながら甘い声を漏らす。
「んっ、はぁ……っ、ぁあ……っ」
そのまま暫くすると、ドアが開く音が聞こえ、ガウンを羽織った野島が部屋に入ってきた。
笠井は待ち焦がれた野島に哀願する。
「の……野島さ……、シてほし……」
途中まで言い終えることができないままに、笠井はまた意思に反して前後から責められる。
「んあっ、ぁあっ!!」
野島は暫く愉しそうにそれを眺めていたが、声をかけ始めた。
「私以外の男に突かれていても、邦彦はこんなに感じてしまうのか……、そしてこの子に挿れているココも、随分と気持ちよさそうじゃないか」
野島はそう言いながら、少年と繋がる笠井の肉茎を指先でスルリと撫でる。
「の……、野島さん……」
笠井は項垂れながらも、野島が触れた場所からゾクゾクとした興奮が全身を駆け抜け、野島に扱いてほしくて仕方が無かった。
「そろそろ限界のようだね」
野島はふっと笑うと、笠井の肉茎を少年から引き抜かせ、少年の座っている椅子の端に腰掛けた。
「まずは私の準備を……」
野島はそう声をかけると、ガウンの下には何も着ていないようで布を少しずらして自身の中心を露出させ、笠井にフェラをするよう指示する。
笠井はすぐに愛する野島の中心にむしゃぶりつくと、全部を口内に引き入れ、何度も何度も咥え直しながらも丁寧に舐め始めた。野島はそのまま男に突き上げるよう指示すると、笠井の頭を愛しそうに撫でながらも熱い吐息を漏らした。
「はぁ……、そうだ邦彦……、いいね……」
そうしている間にも、ぱちゅぱちゅという早い水音を響かせながら、男が笠井を貫く。男の手は、左手が笠井の腰を支え、右手で笠井の乳首を摘まんだり捻ったりを繰り返す。普段なら痛いと思うであろうことも、ジン……とした快感として今は笠井を興奮させた。
「んっ!! んんっ、……んぅっ!!」
「どうだ、愛する者に従いながら犯される気分は……」
野島は笠井の顔を上げさせ、両頬を手で優しく支えると、深くていやらしいキスを笠井に与えた。男に犯されながら愛する人とキスをし、笠井の瞳には僅かな涙が溜まる。
「野島さん……」
「どれ、調教の結果を少し堪能させてもらおうか」
野島はすぐさま少年の蕩けた後孔にモノを素早く沈めた。
「あっ!! やあっ……!!」
何度かピストンをし、野島が感想を述べる。
「実にいい。思っていたよりもこれは名器だろう」
野島はそう言うと、暫くゆっくりと挿入を繰り返して少年を愉しんだ。とてもゆっくりと、少年の内壁を品定めするかのように挿入を繰り返し、野島の目は欲望で揺らめき始める。
「うん……、素晴らしい。中は熟れた果実のように甘く吸い付いてくる……」
その間も、笠井は男に犯されていた。
調教椅子で捕まって、立っているのがやっとな程に奥まで突かれ、声が漏れる。
「あっ……、ぁあっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……」
少年も野島にゆっくり堪能され、甘い声を漏らしている。
「んゃっ……、ぁあんっ……、ああぁっ、んあっ……」
そこから10分ほどで野島は少年から自身を引き抜き、また笠井に優しくいやらしいキスをし、一言付け加えた。
「私以外の男に感じてしまっている罰を与えなければいけないね」
「はい……」
野島は男に笠井から抜くよう命ずると、既に歩ける状態ではない笠井を自室に運ぶよう命じた。笠井は足下に落とした薄いガウンを上からかけられ、男に抱きかかえられて調教室を後にした。
野島は男に笠井をベッドに寝かせるよう言うと、少年を好きなように抱いていいと告げて下がるよう命じる。
そして、笠井と野島の二人きりの時間が訪れた。
暫くはお互いに黙り、部屋で音がするものは時計の音と、笠井の少し荒くなった呼吸音だけという時間が流れている。野島はその時間を暫く笠井の全身を舐め上げるように見て愉しむと、静寂を割って笠井に声をかけた。
「邦彦……、お前は快感にとても弱い……」
「はい、す……すみません……」
「快感を欲することは別に悪くはない。しかし、前後を責めたのが忘れられなくなるんじゃないのか?」
「いいえ……、私は野島さんの与える刺激が一番の快感です……」
「それは私があとで来ると知っているからだろう?」
「…………」
野島は、自身が与えた淫靡な時間を今更ながらに少し後悔して、ジェラシーが湧いていた。
「もしあれが、ガードの一存であった場合には、邦彦は受け入れてしまうんじゃないのか?」
「…………そうかもしれません……、ただ、野島さんが命じたことや、野島さんが愉しめる行為であれば、私は受け入れます」
「ずいぶんと饒舌になったな」
野島はそう言いながら笠井の横に寝そべると、まだ天を仰ぎ反り勃つ笠井の肉茎をそっと握って、笠井の薄い唇を舌でこじ開けて舌を絡ませた。まだ男に入れられたローションが後孔から溢れ出ており、笠井の股間はすべてがヌルヌルとしている。
「んっ……ぅ……」
「まだこんなに硬くしている……、邦彦は本当にいやらしい子だ」
「……す、すみません……」
さっきまで少年の後孔に挿入っていた肉茎は、後孔から垂れるローションでぬるつき、少し扱かれるだけでクチュクチュとした淫靡な音がする。
「前と後孔、どちらが大きく疼いているんだね?」
「…………どちらも……、もう、どうにかなりそうです……」
「ふっ、正直でいいことだ……。では、ベッドヘッドに寄りかかって足を大きく広げてごらん」
「はい……」
笠井は弱々しい手足を動かして上にズリ上がると、野島に言われた通り足を左右に大きく広げた。上気した頬、耳、肌全体が淡いピンクの薔薇が咲いたように美しく、興奮して打ち震えているのが野島にも痛いほどに伝わる。
肉茎は、触れられるのを期待してピクッと波打つように何度も痙攣していた。
「綺麗だ……、邦彦は本当に私の宝物だよ……」
野島はそう言うと笠井に近寄り、ベルトで締め上げられた肉茎を握って愛撫し、小さく震える胸の双丘を交互に舌で舐め何度も吸い上げた。
「あっ、ぁあ……っ」
「本当はこうされながら、誰かに突き上げて欲しいのではないかね?」
イジワルな質問ではあったが、野島は嫉妬を隠すことなく笠井に聞く。
「…………」
笠井はなんと答えればいいのか少し黙ったが、野島の嫉妬を感じて、ありのままの本心をわざとぶつけた。
「はい……、こうされると……さっきまで挿れられていたので、疼きます……」
「そうか……」
野島は自分が仕掛けたことだとはいえ、少し残念そうな顔になった。笠井は両手を伸ばし、野島の首に腕を回して抱きしめると、耳元で囁いた。
「でも……、私が心から欲しているのは、野島さんだけです……。他の人に抱かせるのは、野島さんの性癖であるとも私は知っています。ですから、どんなに他の人に抱かれて感じてしまっても、私は貴方に抱きしめられることだけで心が愛で満たされるのを感じています……」
その言葉は、野島の凍てついた心を溶かすものだった。
少年愛という性癖を抱えながらも、それを隠して結婚をし子供も授かり、幸せを求めた男は……息子に逃げられ笠井をずっと追い求めた。しかし、実際に手に入れても性癖が先に出てしまい、うまく笠井を愛せなかったこの数日。野島はずっと悩んでいた。
やっと野島は、自分の全てを受け入れ、優しく抱きしめてくれる人生の伴侶を見つけたのだ。野島の瞳から、いつの間にか流れていた涙が頬を伝う。
「邦彦……」
「野島さん……、私は野島さんが考えているような調教は必要ありません。それは、私はいつも野島さんを欲し、断ることはないからです。例えそれが他の人に犯されることであっても、私は射精を我慢して、最後に野島さんにイかせて貰えればなんでもいいんです……」
笠井は野島をしっかりと抱きしめて、更に言う。
「心から愛しています……、野島さん……」
野島はそれを聞くと、力いっぱい笠井を抱きしめた。
「野島さん……、そんなにキツく抱きしめなくても、私は逃げません。そして、野島さんが言葉を紡げなくとも、私は愛されていると実感しています。私は確かにずっと私を調教した家庭教師を追い求めていました。しかし、野島さんはそれ以上に、愛をも私に与えてくれます……」
「邦彦……」
抱きしめた腕が緩み、今度は笠井が野島を抱きしめる力を更に大きくし、すがるように力を込めて抱きしめる。
「はは……、以外と力があるんだな……」
野島は少し潤んだ瞳をひと拭いしてクスッと笑うと、笠井にキスの雨を降らせた。笠井もそれに呼応するかのように野島の唇を貪り、それはいつしか激しく求め合う愛のキスに変わる。
「何度でも言いますが、私は野島さんを心から愛しています……」
「私も邦彦を愛しているよ……。お前は、私の心から無くなっていたパーツを持ってきてくれたのも同然だ。私は愛が分からないところがある。だから、何度も何度も試すような行為をやめられないのかもしれん。お前が私を求めたのは、最初はただの性欲だったのかもしれない。しかし、今確実に言えることは、お前の心を埋められるのは、私だけだ……」
「……はい」
ぽろぽろと美しい涙が笠井の頬を伝う。
「私たちはお互いが欠けたパーツ同士だ。……だからこそ、見つけたパーツを手放すことはできない。私はそれが世間一般で言う愛とは違っている気がする。それでも……いや、だからこそ、もう手放したくはない……。手放すことはできないと思っている。それを愛と呼ぶのは少々乱暴かもしれないが、私は敢えてそれを愛と呼ぼう……」
「野島さん……」
笠井は野島を抱きしめていた腕を緩め、野島の首に腕をかけた。笠井は溢れ出る涙で野島の肩をも濡らし、甘える仕草で野島の次の言葉を待った。
「世間が私たちをどう見ようとも、私はお前を大切にして生きてゆく……」
「……ふふ、プロポーズのようですね……」
笠井は、そう言いながらも嬉しくてまたポロリと涙を零した。野島もそう言われ、自分が言っていることが恥ずかしくなったのか、笠井の唇を甘いキスで封じる。
この日、野島は笠井のベルトやプラグを外し、初めて「普通」と呼ばれるようなセックスを何度も追い求めた。
求め合い、唇を重ね、何度も達し、ベッドに蕩けるように二人はそのまま眠っている。
世間一般の愛と、かけ離れていてもいい。
どんな形であれ、どんなに歳が離れていても、これが二人の愛なのだから、誰にも邪魔は出来ない。
――この日を境に、笠井は野島専属調教師になり、二人は共に暮らすことになった。
野島の性癖は変わらず、笠井は再調教を受けながら人生を歩み出すが……、それはまた別のお話。
野島と笠井は二人でひとつになる、絶対のパートナーになったことには変わりはしない。
―――――fin―――――
※作者より
数年に渡り、この物語をお読み頂きまして本当に有難うございました。
何度となく挫折しかけながらも、最後までお読み頂いた方々、お声がけ頂き応援してくださった方々に、この場を借りてお礼申し上げます。
最終話を迎え、感想などがございましたら是非お聞かせ下さい。
お読み頂き、有難うございました!!
2019年8月7日 あいだ啓壱
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