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~淫らなゲームは終わらない・02~*
笠井は交渉に取り掛かった。
ネクタイを少しだけずらし、シャツのボタンを2つだけゆっくりと外した。潤んだ瞳で笠井は挑発する。淫靡な首筋をわざと発注者に見せつけるように襟元を広げると、たまらないといった調子で発注者の喉元がゴクリと動く。
「確かにアレは手がかかったらしいな、、、だがとても従順な子になった。君の手腕には感謝しているし、今でも私のお気に入りだ。」
発注者はそう言うと、笠井にそっと近寄り、腰に手を掛け、耳元に唇が触れそうな距離で囁く。
「・・いくら欲しいんだ?」
そう言いながら発注者は、素早く笠井のジャケットに手を滑り込ませ、とても的確に笠井の左乳首を指先で摘み優しく愛撫し始めた。
「ふふ・・・っ・・またそうやって・・・すぐに触る、んですね・・野島さん・・・」
今回の発注者は笠井の上客で、名を「野島慶介 」という。
野島グループの一人息子であり、現会長。グループ会社全体のオーナーである。既に実父は亡くなっており、一人息子だった野島が全経営権を握っている。金はいくらでも持っており妻もいるが、残念なことに子宝には恵まれなかった。
そこで養子を迎え入れたが放蕩息子になってしまい、家出したまま戻ってこないという現実も抱えている。その息子に向けて少し抱いてしまった密かな感情が、今の野島を作り上げている。
歪んだ愛、屈折した愛------------。
笠井の客は皆、歪んだ愛や屈折した愛の形の中から、本物の愛を探している。
そんな歪な心の持ち主である野島の指先からもたらされる乳首への愛撫は、笠井にとってはこの状態だけで極上のご褒美であり、性行為そのものであると思っている。
そう、・・・笠井もまた、歪んでいるのだ。
笠井はこの交渉時、愛撫されている瞬間、心と体が喜びを感じる事を自覚している。この瞬間は笠井にとっては「疑似恋愛ゲーム」なのだ。笠井は、自分の肉体を欲しがる客から発注された少年たちを調教することさえ、仕事ではあるが趣味でもある。発注者から自分にされた愛撫を調教時、忠実に再現する事を最も得意としている。この再現された愛撫を繰り返し調教された少年たちは、発注者の元に送り返したとき・・調教された愛撫のリズムや癖を思い出し、歓びの声をあげる。
そして、少年たちは絶対に笠井の顔を見ることは叶わない。少年が調教されるうちに笠井に恋心を持ってしまっては困るからだ。調教が済むまでは、発注者でさえ少年に逢う事も許されない。少年たちは毎日、排せつ物が殆どないように高栄養のゼリーを食べ、寝る時間だけ静寂が訪れるだけだ。他の時間は全て調教される時間となる。目隠しをされ、身動きができないようにされるため、ゼリーを少年たちの口に運ぶ事も、笠井の仕事のひとつだ。
笠井が施す少年調教は、この発注者からの自身への愛撫がなければ始まらない。どんなリズムで、どんな舌遣いで愛撫するのかで、調教そのものが変わるのだ。そもそも、挿入は笠井の中ではクライマックスを迎える行為であると思っている。挿入してからずっと楽しめる者は少ないからだ。
笠井は、前戯・・愛撫こそがセックスそのものであるという認識であり、発注者がほぼ皆それに時間をかけ楽しむことを心得ている。発注者は皆好色であるが、いきなり挿入して勝手に果てるような子供っぽい行為をする輩は客として断っている。
笠井は野島の愛撫を心行くまで堪能して記憶している。その指先がまるで性器だと思えるほどに感じながら、脳裏に癖を焼き付ける。か細い淫靡な甘い声を洩らしながら乱れる吐息は熱い。この間はまるで恋人同士のようだ。
笠井はそれだけでは飽き足らない。この愛撫を受けながら値段を吊り上げる行為を「交渉ゲーム」とする事で更なる快感を得ている。「もっとお前が欲しい」などという無粋な言葉はいらず、その愛撫の仕方だけでその想いを感じ取り、吊り上げた価格を言い、従わせる事が快感だった。どんな地位も名誉を持った人間でも、笠井を抱きたいと思っている客は従ってしまう。この征服感が笠井の血潮をざわつかせる。
絶え間なくシャツ越しに乳首を少しリズミカルにコリコリと愛撫されながら、笠井は続ける。
「ふぅ・・・っ・・・そうですね、、、500上乗せ・・と言いたいとこ・・ろですが・・・私の身体を・・触っているのですから・・せ・・・千に・・し・・ましょう・・・」
笠井はこの交渉の仕方が好きだ。この征服感がある交渉術のせいで、発注者は笠井の虜になる者が大勢いる。もっと笠井に触れたい・・そう願うとついつい言い値で払ってしまう連中がいる。発注者はその熱い想いを指先や舌先にこめ、笠井の身体を愛撫する。
笠井は絶対に客に身体を許すことはない。征服されてしまっては交渉ゲームはおろか調教さえままならなくなってしまう。せいぜい客に10分~20分程度愛撫を続けさせ記憶し、火照る身体をくゆらせながら価格交渉を楽しむだけだ。
笠井の美貌や、興奮すると少しピンクに上気する頬、興奮すると固くなる乳首、すぐに形を帯びる肉茎、これらの存在が、笠井の肉体を堪能したい相手には「最後まで抱いてみたい」という欲求となる。また笠井に逢いたい一心から発注を繰り返してしまう・・というループになる。これこそが発注者の交渉時の弱みだ。
-----しかし、野島だけは少し例外であった。
過去に野島に発注された出張仕事の終わりに、今と同じように素早く乳首を愛撫されてしまい、1週間自慰もしないままに調教に明け暮れていた笠井は、性欲が昂ぶりすぎて気付けば野島の口淫で滾った中心を慰められ、溜まった濃い精液をすぐに吐き出してしまった。野島はそれを満面の笑みで飲み干した。
今まで調教後にそんなことをする客はいなかった。調教された少年を今すぐにでも抱きたいという客が圧倒的に多いからだ。それなのに野島は・・・調教が終わっても少年の元には直行せず、手練手管であった笠井の乳首を待ちかねたように素早く愛撫し始めたのである。予想に反した動きであったのと、何よりも調教後で笠井自身も性欲を燻らせていたことで、まんまと野島に征服されてしまったのだ。
この時、笠井は一度出してしまっただけにいつものように自身を制することができず、1週間分の昂ぶった性欲が解き放たれ、繰り返される野島の愛撫をそのまま受け入れていった。笠井の肉茎は一度果ててしまったにも関わらず、野島の熱い舌で愛撫され、すぐに大きさを取り戻した。野島はそこからすぐに肉茎の根元を精液が出せないよう細いベルトで固定し、ついさっきまで使われていた調教室に笠井を連れて行き、四肢を拘束した。
笠井は少し混乱していたが、仕事中にしていた調教を逆に自身に再現され抗えず、自制心は瞬く間に崩れ落ちていった。後孔さえ征服されるだろうと覚悟しながら・・ただ再現されていく調教に身を委ねた。野島はとてもとても長い時間をかけ・・耳、首筋、乳首、蜜が溢れる肉茎の先端、亀頭、カリを幾重にも責めた。全て笠井の弱い部分だった。不思議な事に野島は後孔には一切触れてこず、唇にキスをされることもなかった。
四肢を拘束された笠井は、背徳観を覚えながら身震いするほど興奮していた。唇や後孔が奪われることはないと察すると、拘束されている筈であるのに何故か言い知れぬ征服感が心に芽生え、「させてやっているのだ」というおよそ状況には似つかわしくない気持ちになった。少年に施した愛撫やイクことができない苦しみの部分だけを再現されるという、今まで味わった事のない性行為を受け、少年の調教が終わるのをじっと待っていた犬にご褒美をあげるような感覚だった。
野島は根元で塞き止められた笠井の肉茎を堪能し、亀頭やカリに舌を這わせ、時には指先でグリグリと責め立てた。笠井はその度に甘い声を洩らし、中心から更に透明な蜜を溢れさせた。その蜜は多く、拭わずにいればそのまま先端から糸を引いて零れ落ちるほどだった。
その日、イクことが許されない状態で笠井は何度もドライのまま達した。行き場を失った精液が睾丸に逆流し、ずっしりとした重さを持ち始める。野島はそれを確かめるように少し手で持ち上げては満足げな表情を浮かべた。
何時間も責められ、そろそろ笠井の体力が尽きる頃・・やっと根元のベルトが外された。外れた途端、勢いよく精液が解き放たれ、絶頂の更に上の快感を得た。笠井は何度も何度も痙攣しては肉茎の先端から透明な蜜と白い液が混ざったものを吐きだし続けた。それは止まる事がないようにも見えるほどに長い長い射精であった。
そんな事があってからというもの・・・、野島にだけは「後処理」と称してこの日と同じように「逆調教」されるのが恒例となっている。
出張仕事・・・それは野島からの発注に限ってだけは、最後には逆調教されることでもある。征服し、吊り上げた金をもらい仕事をする。そして仕事が終われば・・、野島の口淫などで己の溜まった欲望を吐き出す。だからこそ、野島に愛撫されながらの交渉段階は、長い長い性行為の始まりでもあった。
つづく
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