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第2話

 ……というのが、数時間前の話。  今は壁の三面が動物園の檻の様になった部屋に入れられている。さっきのパートナーと言われた背の高い男も一緒だ。ボサボサで長い髪はサッパリと整えられて、とてもじゃないが借金のカタにこんな所に連れて来られたとは思えない誠実そうな黒い瞳が覗く。背は高く俺が顔を見るためには見上げなきゃいけない。そして学ランを着せられている。  一方の俺は、いかにもヤンキーな色を抜いた汚い金髪はそのままで同じく学ランを着て、まさしく高校時代に戻ったような気さえする。  男同士ではあるが、背が高く誠実そうに見える男と、背は低めだが挨拶のように「芸能人かと思った」と言われる俺とならそれなりにお似合いだと思う。  部屋の中は、畳まれた体操のマットに、跳び箱、ボール入れ……どうやら、学校の体育用具室の設定のようだ。  今までされた準備とこの状況から仕事の趣旨はわかった。つまりはここでこいつとセックスしろってことか……。 「おい、お前、名前なんてーの? なんて呼べばいい?」 「あ、えっと、高栖……」 「おいおい、フルネーム言うなよ、こんなとこで。なんなら本名じゃなくていいって。俺はナツな。ま、こーなっちまったんだからさ、よろしく頼むよ」 「えっと……じゃあ、ウミで……お願いします。あの、何するんでしょう?」  ナツでウミかよ。と笑いたくて、でも思わず胸が痛んだ。よりにもよってウミなんてやめて欲しい。……だけどこのシチュエーション、なんか高校時代に戻ったみたいで、それも悪くないかなとすぐに諦める。 「何するかわかんねーの? ここで、ヤレってことだろ、俺とお前で」 「……ウミです。ナツさんと、何をするんですか?」  いちいち名前を呼べってか。 「何って、ナニだろ。セックスだよ、セックス」 「えっ……セッ……え?」 「何だよお前、童貞かよ。ついてねーなぁ」 「だってナツさん男だし……え?」 「本当に童貞か。しかもノンケかよ。めんどくせーな……」 「あの、本当に? だって……」 「ダイジョーブ。お前は勃たせておいてくれれば、後は何とかしてやるよ。……俺は、男とやったことあるから大丈夫だって。んな顔すんな」  心底心細そうで思わずそう言ってしまう。

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