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番外編 出会い3

 目が覚めると見慣れた保健室だった。また倒れたらしい。  ──誰かに助けられた気がするが思い出せない。身体が弱いわけではないが、熱さが酷くなって来てからは倒れる頻度が高くなっている気がする。校門をくぐった覚えはないから、誰かがここまで運んでくれたんだろう。  そう考えて、縋り付いた熱くて広い背中と、頭を優しく撫でる大きな手のひらをぼんやりと思い出す。  ……あれ、夢のような気がしたけど、もしかして夢じゃなくて現実か──。  かぁっと頭に血が登った。甘えるみたいに縋った気がする、頭を撫でられて慰められ眠りについた気がする。  ──一体誰に?  カサリという音に、枕元に置かれた買い物袋に気付いた。  中には総菜パンが3つ、それから汗をかいたカルピスウォーター。そしてそこにペタリと張り付いた、きれいな字で書かれたメモ。 『朝メシもちゃんと食え。軽すぎ! 1A 日野原旺実』  軽すぎって言われても、ね……。  でも、そろそろ食べるものは考えた方がいいかもしれない。食べないくらいで頻繁に倒れるのも面倒くさい。 「とりあえず、バイトか……。雇ってくれる所あるかな?」  とにかく、金が無い。コンビニで買われた総菜パン3つを、カルピスウォーターを、贅沢だと感じてしまう程度に……。 「まぁ、その前に礼くらい言わないとな」  濡れたメモをペットボトルからそっと剥がして、書かれた名前を確認する。同学年、だけどA組は特進クラスで同じ中学でもない限りは知らない奴ばかりだ。  きれいな字。きっと育ちが良くて真面目なやつなんだろう。きっと俺とは関わり合いにならないようなやつなんだろう。  でももう一度、顔が見てみたい。真面目そうな瞳に、自分の影を映してみたい。 「日野原……おうみ?」  メモに書かれた名前を呼んでみる。そして、縋り付いた背中の広さと、大きな手のひらを思い出してみる。  とたんに頬が熱くなり、動悸が激しくなった。 「うおっ、なんだこれ……」  自分で驚いて跳び起きる。緊張してるのか? 日野原旺実に会いたいと思ったから?  とりあえず、気を落ちつけようとぬるまったカルピスウォーターを一口飲んだ。

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