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フィナーレの後は新しき名前から始まる
青年は夜の道を人に見られないようにしながら少年を抱えて歩く。
「わたし……いや、俺は何者でもなくなってしまったみたいだ。名前をつけてくれるかい?
愛しの怪盗さん」
「そうだね。愛しの僕だけの紅玉よ。
そうだな、その誇り高き赤と祖国の果実にちなんで君に名をつけよう」
青年は少年の耳にささやく。
「柘榴というのはどうかな、ぼくの宝石」
「柘榴って……東方の?」
「そうだよ、僕の紅玉は賢くて美しいね。
柘榴はね、僕の出身の東の国では安産祈願と子宝祈願の象徴なんだよ。君との子なら何人でもほしいな」
その言葉にスカーレット……いや、柘榴はその言葉から象徴される行為を連想して顔を赤くする。
彼の回りは大分ただれていたが、彼は優秀で純粋培養な元公爵令息なので。
彼は話をそらすために出身の話に切り込む。
「あなたは東方の国の出身なのか?」
「ああ。僕の本名を伝えなければいけないね。銀月というんだ」
少年は言葉を失うほど驚く。
昔、月からおりたった人々が国を作ったと言われる神秘の帝国はその月からおりたったという人々の末裔がおさめている。
そして、末裔のしかも帝と帝位後継者にのみ月の名前が与えられるのだ。
「さて、はやく僕の愛しい人を連れて帰らないと、外国で何してるんだって民に怒られてしまうからね」
少年は愛しい人と言う言葉に笑みを浮かべる。
青年に身を委ねながら、王妃ではなく将来は帝妃になることになろうとは不思議なものだと思った。
東の帝国で遊学中の氷術使いの銀色の皇太子が外国から美しき紅玉の君をつれて帰国し婚約を発表された。
民が喜び、帝と妃もよい男をえらんだと褒め称えた。
その称賛に違わず紅玉の君はよく学び、帝国を支えるための知識を蓄えていった。東の帝国は皇太子が帝になるあたりからますます栄えていくことになる。
ちなみに、銀月帝は柘榴妃との間にたくさんの子をもうけ、後の世にまで語られる繁栄の象徴になるがこれは蛇足である。
怪盗白銀は最後の仕事として王家の醜聞を革命派に垂れ込んだ。
男爵令息が隣国から送り込まれたスパイで、国の重役と一通り夜を共にしているビッチだと。
それを革命派が利用してビッチ のせいでバラバラになった王族を追い込み、捕縛し、辺境の地へと労働者として送った。
メアリアは至上最悪のビッチ として処刑されたと言う。
王国は共和国となり、少し離れた東の帝国とも外交するようになった。
お互いに人の行き来が活発になり、帝国が栄える原因の一助になったと言う。
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